プロローグ
「レベルアップ、っと。疲れた〜」
俺の名前は黒井健人。パソコンとテレビが置いてある俺の部屋で、ゲームのレベリング中だ。時刻は夜の8時。学校から帰ってすぐさまゲームに飛びつき、この時間までぶっ続けでプレイしている。友達に誘われてこのゲームを始めたのだが、タイトルは初めて聞く名前だった。しかし、最高に面白い。もっと早くから始めていればよかった。
このゲームの注目する点は、新システムの我流技というのだ。ゲーム自体は少し前から配信されていたらしいが、最近になって、新たにその我流技が追加された。ゲームを進めていくと、途中でイベントが発生する。それをクリアすると、習得できるらしい。だが、そう簡単にはいかない。決められたレベルに到達してないと、イベントが発生しない。友達はもうすでに、そのレベルに到達している。なので、俺も遅れを取り戻さないといけない。と、燃えているところだ。
「もっと強くならなきゃ……もう1回だ!」
「お兄ちゃん、ご飯だよ。さっき呼びにいってから10分も経ってる。ご飯完全に冷めちゃったよ」
「あ〜い、今行く〜」
今からやろうとしていた時、俺の妹、優からの呼び出しがあった。実は10分前にも声をかけられていたが、いつしかそれを忘れ、ゲームに没頭していた。今度は、忘れないうちにさっさと食べよう。そう思い、ダイニングへ向かう。
テーブルの上に上がっていたのは、ご飯と味噌汁、そして――
「……魚か」
「お兄ちゃんはDHCが足りない。好き嫌いしないで食べなさい」
「魚は嫌いじゃない、骨を取るのが嫌なんだ」
「それ何回も聞いた。いいから食べなさい」
「……はい」
そう言って、魚に手を伸ばす。
魚自体は嫌いじゃない、むしろ美味しいと思う。だが、幼稚園の頃、魚の骨が喉に刺さり、嘔吐しまくった記憶がある。それ以降、魚が嫌いになった。決して、不味いとかではない。
俺は慎重に骨を取り除き、夕食を食べ終えた。
「さ、またやるか」
「ほどほどにね」
「おう」
「あ、ねぇ、お兄ちゃん」
「どうした?」
何かと思い尋ねると、優は真剣な顔つきになった。
「LINKって知ってる?」
「聞いたことないな。それがどうかしたのか?」
「いや、何でもない。気にしないで」
「そうか」
俺はそのまま、自分の部屋へと向かった。
「よし、続けるか……ん?」
ゲームをやろうとマウスを握った時、隣に置いてあるスマホが光っていた。
「メールか、誰からだろう」
確認してみる。すると送信者は、今プレイしているゲームの会社からだった。
「また広告かな」
ゲーム会社からくるメールは、広告がほとんどだ。そう分かっていても、一応確認してみる。
「えーと、クローズドベータテストへのご案内。以下のURLより、ダウンロードしてください。……あれ? ベータテストなんかに応募したっけ? まぁいっか。でも、クリアしてないゲームがいっぱいあるんだよな〜。全部終わったらやってみるか」
そう思い、メールを閉じようとした。しかし、俺の目が気になる文字で止まった。
「ゲーム名……LINK」
どこかで聞き覚えのある名前――
「あ! そういえばさっき……」
俺は部屋を出て、優に聞きに行った。
「なぁ、さっきLINKって言ってたよな」
「え? ああ、うん。言ったよ」
「その、LINKっていうゲーム。特別なゲームなのか?」
「もしかして、お兄ちゃんにも届いたの?」
「ああ」
「……そっか」
優はソファに座る。そして、そのゲームについて話してくれた。
「最近さ、学校を休む人が増えてるの。先生は、風邪をひいて休みだ、って言ってるけど……実は違うの。」
「……どうして?」
「休み初めて、もう1ヶ月以上経つの。風邪ならもうとっくに治ってるはずでしょ? だから、何かおかしい。そう思って先生に問い詰めたの。そしたら……」
「そしたら?」
「休んでいる生徒は、みんな眠ったままになっているらしい」
「え?」
それを聞き、俺は自分のクラスのことを思い返す。
「そういえば、俺らのクラスも休んでる人がいたな。先生も風邪だ、とか言ってたけど……長い間その人の顔を見てない気がするな」
「お兄ちゃんのクラスもか……」
「それで、何か解決する方法があるのか?」
「それは分からない。でも、全員に共通する事があったの」
「共通する事?」
「うん。それはね、LINKをプレイしていた。という事」
「……」
「まぁ、考え過ぎかもしれないけどね」
「それは分からない。俺も明日先生に聞いて、情報を集めて見る」
「了解」
「それじゃ、風呂入って寝るか」
こうして俺は風呂に入り、自分の部屋ヘ行く。時刻は21時半になろうとしている。今日はいつもより寝る時間が早い。さっきのこともあり、少し考えてから寝ることにした。だが、疲れていたせいか、ベットに入るなり眠ってしまった――