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病まない雨に傘を刺す

作者: Mary*Crown

落書きです。

僕と君は、環境の悪い寂れた孤児院で、出会った。

親の顔なんて知らない。

知りたいとも思わない。

汚い虹色の世界が、君のお陰で綺麗なモノクロに変わったんだ。

性別は違うけれど、一人称は同じ。性格もそっくり。

そして僕は、僕達は、お互いに恋をしたんだ。

だけど、やがて僕達は知らない人に引き取られて、離れ離れになった。

僕は組織の中で訓練を強制的にやらされ、殺し屋として育てられた。

綺麗なモノクロは、ただ、汚くなっていった。

殺し屋になって、何度も任務をこなしていく。

何度も手を汚していく。

見えるものがモノクロなら、血なんてただの墨だ。

何も辛い事なんて無い。苦しい事なんて無い。

なのに何で、頬が濡れているんだろう。

土砂降りのせい?

返り血?

それとも、泣いてる?

返り血は雨と混ざってどんどん色が薄くなっていっている。

あんな絶望的な汚い虹色の世界が見られれば、原因も分かるのに。

同じモノクロであれば、綺麗な方が良かった。

汚くなったのは、この世界なのか、それとも、自身なのか、もう、分からない。

風の噂で聞いた。

…君も、僕と同じなんだね。

同じように手を汚して、同じようにこの汚れていくモノクロの世界を見てる。

同じ道だけど、違う道。

あの頃の様に、また、手を繋いで歩きたい。

まぁ、それは叶わないけれど。

今回の任務で、最後だと言われた。

終われば、好きにしていいらしい。

これで自由になれる。

君に会いに行ける!

少し喜々としてターゲットの封筒を開ける。


君の写真だった。


今はもう廃墟となった孤児院に君はいた。

懐かしい。嬉しい。お互いの恋の感情も残っていた。今まで汚れてきたモノクロの世界が、だんだん綺麗になっていくのを感じる。

僕達はこのまま、一緒に住む事になった。

幸せな生活だったけれど、


任務を、遂行しなければ。


一緒に逃げる事も考えた。

けれど、あの組織の事だ。必ず見つかる。

僕が断れば、他の、慈悲など皆無な奴が遂行する。

なら、これしかない。


君を殺して、僕も死のう。


君が居なくなってしまっては、自由も何も無い。

モノクロもなくなる。目玉が無いようなものだ。

けれど、この生活も続けていたい。

なら、病気に見せかけて、毒を少しずつ食事に入れていこう。

幸い、期限は与えられていないから。


全ての食事に毒を少しずつ入れていく。

君はそれを食べる。

それを初めて1週間。

ゲホ ゲホ

最近咳が出るな。風邪を引いたのかもしれない。

君も咳が出てる。毒の効果だ。

お互い風邪を引いたって事で誤魔化せるから丁度いい。

また1週間。

お互い熱っぽいねと話す。

お互いに風邪薬を買って来た。

やっぱり昔と変わらない。

また1週間。

熱も出て、症状は悪化していく。

それもそうだ。まだ毒を入れ続けているから。

また1週間。

遂に吐血を始めた。

ここ迄くるともう末期だ。

心配そうに駆け寄る。毒を盛った張本人だけど、本当に心配だ。

ゲホッ…

あれ?

何で僕まで……。

そうか。

やっぱり僕達は似てる。


君も、僕に同じ毒を盛っていたんだね。


遂に僕達は歩く事さえ辛くなった。

これで良かったんだ。

最後まで君を看病出来なかったのは少し悔いるけど、それ以上に今は幸せだ。

お互い、同じ気持ちなんだろう。

もう、何も言わなくても分かる。

あいにくの雨だけれど、一緒に傘をさして外に出る。

微笑みあった。

この瞬間、今までモノクロだった世界が一気に色付いていく。

昔の汚い虹色じゃない。

手に届かなくて、雨上がりの空に輝く様な、綺麗な虹。

雨でぐしょぐしょになった芝生の上に寝転がる。

今も雨は振り続ける。

けれど、今僕の頬を濡らしているのは涙だって分かる。

今まで、僕は病んでいたんだ。

雨はやまない。

だけど傘をさす必要はない。

凶器を刺す必要もない。

僕達はゆっくり目を閉じる。

今までに見たこともないくらいまぶしい虹が出ていた事に僕達は気づかない。

それよりも、僕達はお互いを見ていたかったんだ。

お目汚し失礼しました。

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