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召喚少女 ~犬探し奇譚~  作者: 神籠石
2/8

依頼主



 アレスタ島は東西南北によって四つのエリアに分けられている。

 広々とした砂浜を抱くサウスエリアは丘の上に立つザラスシュトラ魔術学院を有し、学生寮などの関連施設が数多く軒を連ねている。この街並みは隣のエリアまで広がり、イーストエリアのほぼ全域が一般住宅で占められていた。さらに隣のノースエリアからウエストエリアにかけては大部分が森林に覆われており、人の影は滅多に見られない。またウエストエリアの森林以外の土地は農地となっているためエリア人口は百人に満たなかった。

 以上がアレスタ島を構成する四つのエリアの概要である。


「あっ、ここかも」


 煉瓦造りのとある一軒家の前、盾を意識した黒の下向き五角形に白の六芒星が描かれたエンブレムをローブの左胸につけた少女がいた。表札を見て少女――ルーシー・ローレルが声を上げる。黒い玄関ドアの右側に取り付けられているのはスビサ家を示す白い陶器製の表札。

 ここはイーストエリアのゼブル地区。市場にほど近く、明るい色の煉瓦が街の景観を形成する住宅街である。

 スビサ家の窓の下には三つのタル型フラワーポットが置かれており、赤、紫、黄の色の花が咲いていた。それらを眺めていたお供のジュウベエが斜め前のルーシーに顔を向けた。


「それでは、ルーシー殿。依頼主に会って早速話を聞くでござる」


 ジュウベエの言葉にルーシーは黙ったままドアを見つめ、


「…………」


 ――見つめ続け、口元を引きつらせていた。


「ルーシー殿?」

「…………」


 微動だにしないルーシーを不思議に思ったのか、ジュウベエが声をかける。


「……ルーシー殿?」

「あ、うん……」


 返事をしながらもルーシーが動き出す気配はない。それどころか所在なさげに手遊びを始め、組み合わせた両の人差し指をくるくると回転させていた。目線はドアを見たり手を見たりと間断なく動いている。


「……まさか、今頃になって依頼主と会うのが怖くなったのでござるか?」

「…………」


 ルーシーは答えず、ジュウベエの方を向いて無言のままニコッと笑う。苦し紛れの言い訳にもならない笑みだった。

 ジュウベエは吐息し、一歩前に出る。


「……代わりに拙者が応対するでござる」

「そっそれは、ちょっと待ってほしいかなって」


 ドアの上部に取り付けられた呼び鈴を鳴らそうとするとするジュウベエを制し、ルーシーは視線を上下に遣りながら言った。


「大丈夫だから。ちゃんとできるから……」


 その宣言にジュウベエはわずかに思案したが、ルーシーの言葉を信じたのか一歩下がり、彼女を見守るように後ろに立つ。


「わかり申した。出過ぎた真似をして申し訳ないでござる」

「ううん、いいの。私がしっかりしていればいいだけの話なんだし……」


 眉の下がった笑みを浮かべ、ルーシーは再度玄関ドアと向き合う。

 木製の黒いドア。

 その色は何者にも交じらない拒絶の色のように見える。自分を拒んでいるような圧迫感。ルーシーには切り立った岩壁のように感じられた。 

 大丈夫。大丈夫。大丈夫。

 三度自分に言い聞かせ、後ろには頼りになる武士の人がいることを改めて認識する。

 上手く喋られなくても、一生懸命に伝えればいい。落ち着いてゆっくり話せばいい。それでも駄目なら、後はジュウベエがやってくれる。彼なら臆することなくこちらが言いたいことを伝えてくれるだろう。

 だからきっと上手くいく。

 ルーシーは大きく息を吸い、一気に吐き出す。

 呼び鈴の取っ手に手を伸ばし、来客を告げさせようとしたところで、


「はいはーい! どちらさまー?」


 ドアが開き、ルーシーの顔面に直撃した。


「ふごっ!」

「ルッルーシー殿おおっ!?」


 よろめくルーシーの肩を支え、ジュウベエは怪我がないかと彼女の顔を覗き込む。


「大丈夫でござるか?」

「うっうん、平気……」


 心配させないようにルーシーは微笑んでみせるが身体は正直らしい。鼻腔から一筋の赤いしずくが音も無く垂れていた。


「ルーシー殿、血が……」

「えっ?」


 ぽかんと呆けた表情になるルーシーをそばにジュウベエは懐から白い手ぬぐいを取り出すと彼女の鼻にそっと当てた。


「あらあら大変」 


 何が起きたのかと家人が顔を出す。中年の女性だった。額を出すオールバックの髪型からは自信を感じさせられる。


「とりあえずうちに入ってちょうだいな」


 二人の様子を見た女性は事態を把握したのか、二人に家の中に入るよう勧めると自身も室内に戻っていった。 


「それでは、失礼仕る」


 頭を下げるジュウベエに支えられながらもルーシーも同じように頭を下げて家の中に入り、女性の後に続いて玄関ホール奥の右の部屋に入室する。左の壁際にはかまどや流し場が設けられ、右手にはダイニングテーブルとイス四脚が置かれていた。


「座って」


 女性にうながされ、ルーシーはイスに腰を下ろした。

 ここがこの家の台所と食堂なのだろう。上流階級の家では台所と食堂が完全に分離した造りが一般的であるが、台所と食堂が一体化したこの造りはこの島の中産階級の家では平均的であった。


「はい、見せてごらん」


 ルーシーはおそるおそる手ぬぐいを離すが、出血量は微々たるものだったらしく出血はすでに止まっているようだった。


「あら、ちょっと鼻の頭を擦りむいてるわね」


 患部を確認して女性は部屋の隅にある戸棚から上蓋に『薬箱』と書かれてた白い箱を持ってくる。蓋を開けると中には数種類の錠剤や液体が入ったビン、包帯やコットンパフなどが入っていた。それらの中からコットンパフとビンを取り出してビンの中の薬液を浸す。


みるけどいい?」

「あっはい――!」


 ルーシーが応えるより先に女性は薬液を含んだパフをルーシーの鼻の擦りむいた部分に当てていた。その刺激に思わず顔をしかめるルーシー。眉の辺りに皺が寄り、肩が縮まっていた。


「これでよし。気になるならザラスで医療魔術をかけてもらってちょうだい。あなた達ならタダで受けさせてもらえるんでしょ? ――ねえ、魔術師さん?」


 小さな羨望が込められた声にルーシーはハッと顔を上げた。女性は楽しそうな表情で微笑むとビンなどを箱の中に仕舞い、元の位置に戻しに行く。

 どうして自分の正体がわかったのか不思議に思ってジュウベエに顔をやると、彼は首を左右に振るのみだった。


「しかも一年生ね?」

「えっ、あの、どうして……?」


 またも自分のことを言い当てられ、何も悪いことをしていないのにばつが悪い顔になる。そんな感情がはっきりと表情に出てるらしく、女性は台所に立ちながらルーシーを見て口元を軽く押さえながら小さく笑う。


「そのローブにある胸のエンブレムはザラスシュトラ魔術学院の学章でしょ? この島の住人なら一目でわかるからね」

「あ……」

「で、さっきの当てられた時のような初々しい反応は一年生に限られてるから」


 種を明かせば簡単なことだ。学章を付けているから学院の魔術師、驚いた反応をしたから一年生。種も仕掛けもあったものじゃない。それでも、女性が見せた『魔法』にルーシーは軽やかな笑みをこぼした。

 

「はい、ザラスシュトラ魔術学院から来ました。ルーシー・ローレルです」

「拙者はルーシー殿の護衛で、ただの武士でござる」


 自己紹介を終え、ルーシーは立ち上がりジュウベエとともに頭を下げる。折り目正しい二人の姿勢に女性はやや目を丸くしたが、すぐに三つのカップに白磁のポットに溜まった紅茶を注いでいく。


「ブシ? ブシってのは何をする人なの?」


 聞き慣れない単語に女性は首を傾げる。ジュウベエのこだわりか、こちらの言葉に置き換えられることなく伝わっているのだろう。

 女性の問いにジュウベエは鈍い光を放つ己の刀を見やり、


「武士とは刀を魂としながらも最も刀から遠い武の者のことでござる」


 彼の言葉に女性は「へえ」と曖昧に頷いた。理解しているのかそれを放棄したのか、おそらく後者だろう。ルーシーでさえもいまだにわかっていないのだ。それが初対面の人なら尚更である。

 女性は自分なりにジュウベエの存在に関してまとめたらしく一言、漏らすように呟いた。


「つまり騎士みたいなものかしら」

「ちっ違うでござる! 武士とは義と名誉を重んじ誇りある生き様を民を見せることによって民に慕われ民を導いていく存在であって――」

「おっ落ち着いてジュウベエくん!」


 騎士と同一視されたことが気に障ったらしい。ジュウベエが手をあくせく動かして武士とは何かを説明しようとするがルーシーに押し止められてしまい、かたわらで不満そうに「武士は騎士とは違うでござる……」とぼやいていた。そんな彼に苦笑し、話題を変えようとルーシーは女性に向き直る。


「失礼ですが、グラシア・スビサさんですか?」

「ええ、私ですが」

「飼い犬の捜索の件で参りました。詳しくお話を聞かせてもらえないでしょうか?」


 ふと気づいた。硬直して詰まることなく話せている。緊張はするがいつものように頭が真っ白になることはなくすらすらと話せていた。これもグラシアの魔法なのだろうか。だとしたら何て素敵な魔法なのだろう。もしかしたら彼が言っていた『徳』というものなのかもしれない。

 

「ええ、何でも聞いて」


 だが、そこで初めて女性は悲しそうな表情を見せた。


「あっはい、では――」

「ちょっとその前に」


 ルーシーの言葉をさえぎり、グラシアはお盆にカップを載せてルーシーとジュウベエの前に置く。そして二人にイスに座るように促し、自身もルーシーの正面に腰を下ろした。 


「失礼します」

「有り難く」


 礼を述べ、二人はイスに座る。バッグは膝の上に。カップから沸き立つ紅茶の匂いにルーシーはカップに口をつける。甘みのある茶葉だ。横目でジュウベエを盗み見ると取っ手付きのカップに慣れていないのか、小指が立って自己主張をしていた。


「…………」


 どうしよう。

 声をかけて指摘するべきだろうか。

 きょろきょろと視線に左右に動かして迷っているとグラシアも気づいたらしく一度ジュウベエの手に視線が固定され、それから意識的にずらしていた。


「結構なお手前で」


 カップをテーブルに戻し、ジュウベエが感想を述べる。多少大げさな言い回しのような気がしたが彼流の賛辞ということでルーシーもそれに追従した。


「美味しいです」

「それはよかった」


 二人の言葉にグラシアが嬉しそうに頬を緩める。

 お互いの気持ちもほぐれたところで、本題に入ろうとルーシーは正面の依頼主を見据えた。

 何を聞くかはここに来る前にすでに決めてある。


「では、まずはいなくなった状況について確認させてください」


 ショルダーバッグから受付時にもらった書類とメモ帳、鉛筆を取り出し、書類に書かれた文章を指でなぞりながらルーシーは問う。


「いなくなったのは十日前。朝方、中庭からいなくなっているのを確認されたとのことですが」

「ええ、裏の中庭で飼ってるのよ。柵があるからリードを付けずに放し飼いしてたの。いつも赤い首輪をしてるわ」


 台所の壁に設けられた窓は開け放たれており、そこから緑の芝生を見ることができた。成人の膝の高さぐらいのブロック塀を基礎に先の尖った白い柵が中庭を囲っており、片開きの門扉が一つ設けられていた。


「犬小屋も外にあるわ。夜もそこで寝てるの」

「ちょっと見せてもらっていいですか?」

「どうぞ」


 席を立ち、書類を持ったままルーシーは台所の窓際に寄り、顔を出して中庭を確認する。木でできた青い屋根の犬小屋が家の壁際に置いてあった。


「来客に対してよく吠える子だから、知らない人が庭に入り込めば吠えていたはずなんだけど」


 後ろから届く飼い主の言葉に、誘拐の可能性を指摘しているのだろうとルーシーは頭を巡らせる。

 誘拐。

 人によっては我が子のようにかわいいというペット。ルーシー自身は犬も猫も飼ったことはないが、グラシアの言葉の端々からとても可愛がっていることが窺え、そのことがルーシーの胸を痛めさせた。それほど可愛がっているのなら、もし身代金などの要求があった場合グラシアはそれに応じてしまうことだろう。街中で張り紙をせずに学院に依頼を出したのも報酬を出すほど可愛がってることを知らせないためで、誘拐に発展する心配があったからなのかもしれない。


「自分から出るのも無理だと思うのよ」


 グラシアはそう言って立ち上がるとダイニングに入るときに通ったドアまで歩き、手招きで二人を呼ぶ。


「ちょっと中庭に出てみましょうか?」

「あっはい」


 ドアを通過して廊下へ出るとすぐ右手に中庭へ通じるドアがあった。


「ここから中庭に出られるわ」


 グラシアはドアを開き、外に出る。太陽の位置からこちらは東向きになるらしい。窓から覗いたときのように糞一つ落ちていない芝生は青々と茂り、家主のいない犬小屋が左側の壁際にぽつんと置かれていた。

 空になった水飲み用と餌用の白い皿が犬小屋の出入り口に見える。また、遊び道具であろう黄色の布製のボールが犬小屋の傍に転がっていた。


「かなり跳躍しないと柵を越えるのは無理そうでござるな」


 今まで黙っていたジュウベエが柵に手をかけて高さを確かめる。柵の高さは彼の腰、ルーシーのお腹の辺りである。


「そうでしょ? あの子は特に訓練しているわけじゃないからジャンプして外に出るのは難しいはずよ」


 グラシアの補足にルーシーは書類を見てとある数値を確認する。飼い犬の体長は約110センチメートル。犬の生態や能力に関して詳しいわけではないが、跳躍して柵を越えることは不可能と考えていいだろう。


「中庭から外に出るにはこの門を開けるしかないんだけど、あの子にできるかしら……」


 グラシアの目線の先、ジュウベエの近くにある門扉はドアの正面にあり片開きである。これを開けるには下ろされている取っ手を約90度の水平になるように上げなければならない。柵と門扉の向こうは細い石敷きの通路になっており、住宅の並びに合わせて左右にまっすぐに続いている。通路の向こうには針葉樹で囲われた小さな公園が見えた。


「鼻で押し上げたり、噛んで上げたりすればできないことはない、のかな……」


 ルーシーは門扉に近づき、取っ手を上げたり下げたりして脳内でシミュレートを試みる。犬に芸を仕込む人は一定数いるが、取っ手を上げて門扉を開く芸を教えたところで何のメリットもないような気がする。ただ脱走するだけである。

 では飼い主以外が仕込んだ場合はどうだろうか。飼い主のグラシアの話によれば、知らない人に向かってよく吠える犬らしい。教える間もなく退散させられることになるだろう。


「ジュウベエくんはどう思う?」


 どうやって出たのか見当もつかないため、ルーシーはジュウベエに意見に求めた。彼なら――自分たちとは違う見方を持つ彼ならルーシーたちには気付かなかったことにも気付くかもしくれない。


「そうでござるな……見ただけでは何もわからないでござるな」


 そう言って彼は犬小屋に近づき、しゃがんで中を覗き込んで言葉を続ける。


「どうやって出たかは置いといて、今はどこにいるのかを考えたほうがよさそうでござる」


 彼の言葉に確かに……とルーシーは頷きを得る。

 どうやって出たのかも重要ではあるが、脱出方法がわかってもそれが居場所の特定につながらなければ意味がない。

 まずは何より飼い犬の行方を追うこと。


「あの、もしよろしければ普段の散歩コースなどを描いて頂けないでしょうか?」

 

 ジュウベエからグラシアへ視線を移すと、グラシアは嫌そうな表情をすることなく「いいわよ」と了承して家の中に戻っていく。二人もこれ以上は見るものもないと判断し、家人の後に続いてダイニングへ戻ることにした。


「はい、こんな感じかな」


 簡易的な地図とコースを描いて破いた二枚のメモ用紙をグラシアからルーシーは受け取る。一枚の紙につき、矢印で示したコースは二本ほど。これがよく行く散歩コースなのだろう。


「まず家を出て右に行くか左に行くかの二パターンね。そこからさらに左右どちらかに行くかで二パターン。全部で四パターンあるけど天候の影響はほとんどないわ。発情期になると特定の女の子のところに行くようになるけど、今はその時期じゃないからやはりその四パターンね。あ、それと散歩で他のエリアに行ったことは一度もないわ」


 散歩に関する詳しい情報を自分のメモ帳に書き込みながらルーシーはグラシアの説明を反芻する。

 まずは散歩コースを中心に探してみるべきだろうか。善は急げ、ではないが早ければ早いにこしたことはないだろう。


「ジュウベエくん」

「わかったでござる」


 名前を呼んだだけでこちらが言いたいことを理解してくれたことに満足感を得る。

 二人は立ち上がり、グラシアに向けて頭を下げた。


「ありがとうございます。早速行ってみようと思います」

「いえいえ、こちらこそ」


 不意に、返礼として頭を下げ返したグラシアが思いつめた表情を見せた。今までは単に気丈に振る舞っていただけで、これがこの人の現在の本当の顔なんだろうとルーシーは瞬間的に悟ってしまった。


「べスのこと、よろしくお願いしますね。あの子は、子供のいない私達にとっては実の子のような存在なんです……」


 今まで気付かなかったが、言われてみれば確かにこの家には子供の気配がない。男性用の服が干してあったのは確認できたが子供用のものは一切なかった。おそらく夫婦だけの世帯なのだろう。

 ゆえに、実の子のような存在。

 飼い犬ではなく我が子。

 そこまで思考が至った途端、ルーシーは罪悪感を覚えた。

 自分は犬扱いしすぎたのではないかと。 

 たかが犬だと思ってたのではないかと。

 だからすぐに頷くことができなかった。自信を持って応えることができなかった。

 依頼の内容の重さに気付いたから。これはただの探しものではないのだと。自分の他にも依頼を受けた人はいるのだからとどこかで高をくくっていたのかもしれない。

 絶対に見つかるなんて、誰が保証できるというのだろう。

 襲い来る無力感に血の気が引いていく。強張る心身。詰まる声。

 ――とそこへ、肩に確かな刺激があった。

 手が置かれている。磨きこまれた手。ジュウベエの手だ。


「拙者たちに任せるでござる」


 躊躇いを見せたルーシーとは逆にジュウベエが迷い無く答える。

 ルーシーが思わず彼の方に振り向くと頷きとともに微笑が送られた。それは穏やかだがどこか力強さを感じさせる笑みだ。まるで朝焼けの太陽のようで、照らされることで冷えた心が温もりを取り戻していくようだった。

 だけど――


「はい、がんばります……」


 ジュウベエの言葉に、ルーシーは力無く頷くことしかできなかった。




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