第2話オンリーユウ
主人公の食事の根本的な考えを読んで頂けたら幸いです。
毎日の朝食。それはあってもなくても同じもの。
毎日の昼食。それはなくてはならないもの。
毎日の夕食。
それはつまらない日常から抜け出すためのエネルギーを蓄える時。
食事の時間はしっかり決めて食べた方がいいとテレビで聞いた。
今のテレビって健康番組が多いから、ケッコウ自分の体に気を使おうかな、なんて思わせる。
でも実際はそんなこと気にしない。
食べたいものを食べ、嫌いなものは食べない。
なんてストレートな食べ方。人に対してもこうありたいぐらいだ。
私が好きな食べ物は特にない。
母は料理が苦手、私も料理が苦手、だから料理をしない。
母はストレートな生き方を選んでいる。家族のため、という行動はしない。
常に自分のために行動を起こすのだ。
私は別にそんな母にダメ出しなんかしない。だって私も自分のためだけに行動を起こすから。
そんな人生もいい…今まではそう思っていた。
私の誕生日が近付いた、3月2日に友達のマリが告白。そしてマリに彼氏が誕生。こうして3月2日はマリとユウのカップル誕生日になったわけだ。
マリは私によく彼氏の話題を持ちかけた。ユウの話だ。
「ユウってさ、BoAが好きなんだって。私も好きになろうかなぁ。」
「じゃあ髪伸ばしたら?BoAって髪長いじゃん。それにマリに似合いそうだよ。」
「そう?じゃっ伸ばすー!!」
マリは笑顔一杯、夢一杯の女の笑顔で、私の元を離れて行った。
彼氏がいない友達と話をすると、大体が、
「彼氏できるとさーぁ付き合い悪くない?」と言ってくる。
私は別に気にしない。
マリの事も気にしない。
でもユウの事は気になった。
なぜなら幼なじみだったからだ。
小学生の頃、一番遊んでいたのはユウだった。
私はたまらずユウに電話をかけた。
「はい。もしもし、桜本ですが。」
「高柳です。ユウ君いますか?」
「あぁ、リカちゃんね。元気そうね。ちょっと待ってね。」
電話の遠くでユウの声がした。
「もしもしリカ?」
「うん。」
「どうした?」
「別に何もないけど、あのさ、マリとうまくいってる?」
「まあね。」
「マリさースッゴク女の子!って感じでカワイイでしょ?私マリのこと好きなんだ。」
「だね。カワイイよな。特にあのクルクルパーマがカワイイよな。ふわふあしてさ。お前とんなよ。」
「どうしよっかなぁ…あれ?BoAが好きなんだって聞いたけど…」
「BoAも好きだよ。でも今のマリがもっと好き。」
私は胸が苦しくなった。これって裏切りだろうか?
私の誕生日が明日に迫った日。
マリから休日だというのにデートのお誘いが来た。
「リカ、今からあーそぼっ☆」
「今日?5時からバイトだから、それまでだったらいいよ。」
「全然オッケイ!じゃあ今から駅に待ち合わせで。」
「はいさ。10分位で着くよ。」
「うん。じゃ後で。」
駅に着くとマリがチョコンと私を探して辺りを見回していた。
「マリー!」
私は少し遠くから大きな声でマリを呼んだ。
マリは子犬のような瞳で私を見付けると、チョコチョコと向かってきた。
「ありがとう!」
「いいえ、いいえ。」
そうして私達は落ち合い、近くの喫茶店で話をした。
ミルクティーとブレンドコーヒーがテーブルに並ぶ。
マリはいつもと変わらず人なつっこく私に話しかける。
私はマリの話に頷き、一言二言話す。
「リカは私のお母さんみたいだね。」と、子どもっぽい笑顔で私に言った。
その瞬間、胸が苦しくてユウを思い出す。
リカに悟られると思って必死でユウを消す。
「リカってさぁ、チョコレート好きでしょ。」
「そう?」
「だってよくコンビに行くと買ってるじゃん?」
マリの前でユウを思うことが苦しくて、いつの間にか話が上の空になっていた。
「チョコレート好きじゃないの?」
「えっ?うーん。別に気になった事ないから分かんない。」
「えー、それおかしいよ。好きか嫌いかも分かんないの?」
「うん。」
マリは私とユウの関係を知らない。多分、ユウは言っていない。
マリの顔、ユウの顔、私の頭ん中はぐちゃぐちゃだ。
私は4時30分になるマリと別れ、バイトに直行した。
バイトに向かう途中、私はマリから言われた言葉を反芻した。
「お母さんみたいだね。」
「チョコレート好きでしょ?」
「好きか嫌いかも分かんないの?」
分からない。
チョコレート好きか嫌いか分かんないよ。
マリも好きか嫌いかも分かんない。ユウを好きか嫌いかも分かんないよ。
マリ、お母さんの気持ち知ってるの?私とユウは小さい頃仲が良かったんだよ。知ってる?
そんなことを頭の中のマリに向かって、質問してみる。
答えは帰ってこなかった。
この後は主人公が食事から生き方を考える?