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依頼達成  悪夢の前振り

 結局、全員昼過ぎまで寝てしまい、湖で酔いを醒ますために水浴びをしたり、かなり遅い朝食を

取ったりでオズマンに着くのは夕方になりそうだった。漁師たちは一度オズマンで一泊し、(全員オズマン住民)、盗みを働いた男を伴い、盗みをさせていた村まで行って問いただす。

 しらを切るようなら、小川をせき止めた所にある卵と、村の蔵に隠した塩漬け中の湖魚(全部狩人がしゃべった)の事をいえば観念するだろう。村も漁師たちを口封じしようなどとは思わないはずだ。

せっかく内々に処理してくれるといっているのにリスクがでかすぎる。漁師たちも村が貧窮している

のは分かっているので悪いようにはしない。俺の出番は終わった。今狩人の男は拘束を解かれ、

漁師たちに囲まれて街道を進んでいる。彼の表情はまるで憑きものでも落ちたかのようにすっきりと

していた。やはり盗みは気のすすまない事だったのだろう。ニコニコと笑いながら、周りの漁師たちに

なんの毛皮で防寒着を作るか相談していた。彼は魚を盗んだ罰として漁師たち全員分の防寒着を

作る事になっていた。

 そんな彼を、列の最後尾から眺めていてふと思い出した。昨日聞こうと思っていたが酒を飲んで

すっかり忘れていた。後ろから声をかけ、聞いてみる事にした。


「ちょっと聞きたい事があるんですがいいですか?」


 すると狩人は照れ臭そうに笑い、ボリボリと頭をかきながら言った


「旦那ぁ、盗みを働いた俺に丁寧な言い方しなくていいいんでさあ。照れ臭くてかないませんぜ」


 すると周りもしきりにうなずき、もっと俺たちにも気さくにしゃべってほしいと言われた。

こっちでは敬語変なのかと聞いてみると、まるで貴族のようだと言われた。というか、

俺を道楽で冒険者をしている貴族の次男坊あたりだと思っていたらしい。

 エスクじいさんには何も言われなかったので気にしなかった。ちょっとこれから気をつけよう。


「おっと、それで旦那は俺に何を聞きたいんで?」


「あ、ああ。別に大したことじゃないんで・・・ないんだけど、魚を捕まえてるにしては妙に水音

が聞こえなかったけど、どうやって獲ったのかなあと。樽の中の魚は生きていたし」


「それは、雷結晶を使って一瞬だけ気絶させるんでさあ」


「雷結晶?」


「あ!もちろん、気絶させるだけなんで、小指の爪ほどしかないやつしか使ってませんぜ。

周りの魚には全く影響はありやせんぜ」


 雷結晶か。


「そこらの石で簡単に割れますんで、細かく砕くとバチバチっとなるんで、それをちょっとだけ

水に入れると、中の魚は気絶して、上に浮かんで来るんで、その中のメスだけ選んで獲ってたっつう

わけです」


むむ、電撃を放つ石か。魔法が苦手な俺にはいいかも知れない。もっとも、どこで手に入るのかも

値段も分からないので調べる必要がありそうだ。

 狩人に聞いたが、村長から渡されたので詳しいことは分からないらしい。

漁師たちにも聞いたが、かなり高価な物だという事以外は分からなかった。

 実物を見たかったが、村長は雷結晶を一度に一回分しか寄こさないため手元にはないという。

まあいいか。どうせ道具屋一品にはあるのではなかろうか。あの店の商品のラインナップ的に

無かったらおかしいとまで思う。あそこは店の雰囲気も、道具も怪しい。明日にでも行ってみよう。


 

 皆慣れたもので、休憩を挟まずに歩いて夕方にはオズマンに着いた。

オズマン住民の漁師たちは門を顔パスで通り、狩人の人頭税は漁長が出した。そのまま漁長宅で

一晩過ごすらしい。門の前で俺たちは別れを告げた。依頼書には、昨日の晩には漁長の依頼達成を認めるサインを書いて貰っているため、それをギルドに提出すれば終わり。

 住宅街に向かう漁師たちを見送っていると、漁長だけが走って戻ってきた。


「どうしたんですか?」


「いや、渡したい物があってな。今回は本当にありがとう。まさかこんな依頼に、魔法が使えて、

頭の切れる冒険者が来てくれると思ってなかったんだ。結構名の売れてきてる冒険者だったりする

んじゃないか?」


「いえ。俺はこの依頼が初めてなんです」


「・・・おいおい。冗談きついぜ。俺は駆け出し冒険者何人か雇った事があるが、あんたみたいなのは

初めてだ。名前、聞かせてくれるか?初めてでこれならすぐに有名になる。聞いておいて損はない」




「ヨウイチです。ヨウイチ・サキです」


「覚えておくよ。そんな将来有望な冒険者に、送り物だ」


そう言って、小さな革袋を投げて寄こす。中身はお金だった。黄貨が二枚に青貨が30枚ほど。


「ギルドでもちゃんと30エスを受け取ってくれよ。渡した金は俺たちの気持ちだ」


 手元の革袋から、住宅街へとつづく道の方へ視線を向けると、漁師の皆が遠くから手を振っていた。


「お前が酒で潰れた後に皆で話したんだ。ここまでやってもらって30エスはないだろうってな。

だから各自出し合ったんだ。少ないが、受け取ってくれ」


 俺は鼻の奥がツンとするのを感じながら頭を下げた。互いに手を挙げて別れを告げた。

遠くにいる漁師たちにも手を振りかえし、意気揚々とギルドに入って行った。


「初の依頼はどうでしたか?ヨウイチさん」


 空いている受付に行くと依頼を受けた時のおっさんだった。手を黒い紙に置き、名前を告げる。


「ヨウイチ・サキ   成功しましたよ、これ以上は無いくらいに」


「それはよかったですね。では依頼書の提出をお願いします。うん、ちゃんとサインしてありますね

、初めてにしてはなかな・・・依頼主評価10・・・すごいですね。初依頼で評価10点満点は

滅多にないんですよ」



なんと気持ちのいいことか。漁師たちには感謝され、報酬もだいぶ多めにもらった。ギルドの

評判も上々。俺はやっぱり運がいいのだ。今まで疑ってごめんなさい神様!!

 そのスーツいきなりはじけ飛んで周りから白い目で見られろとか思ってすいませんでした!!

俺はスキップをしたい衝動を我慢し、山羊亭に向かう。夕食を食べたらどこか飲みに行こうと

決めた。金はあるんだ。飲んじゃうよー。




そして俺は、この時の自分を殺したい位に後悔する事になる。



次回は仲間が増える、かも知れません。

戦闘描写が増えるため、二分割するかも

今日、明日には投稿します

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