事情説明
戦闘でのグロ表現を結構頻繁に書くかもしれません。
5月20日 晴れ 深夜 とあるボロアパートの一室が燃えていた。
俺の部屋だ。何故かアパートの真上の空に俺は浮かんでいる。手を上にかざすと月が手のひらをすかして見える。
もくもくと黒い煙を上げる自分の部屋を見下ろし、思いついた事を言葉にした。
「もしかして、俺死んだ?」
「はい、黒こげになって死にました。今も死体がジュージュー音を立てています」
自分以外の声がしたので周りを見回すと、真後ろに若い女性が居た。
彼女はOLのようにスーツをびしっときこなした20代前半の美女だった。
俺と同じ死んだ人?と一瞬思ったが彼女は透けていない。
てことは・・・
「あー、もしかしてお迎え?」
そう聞いた俺をちょっと不思議そうな目で見ながらうなずく。
「その通りです。貴方は死亡しました。今から天界に同行して貰います。
未練があっても、神に面会してからどうするか決めてもらいます。よろしいですね」
最後の言葉が同意を求めるものではなく、決定事項を告げるものだった。
「はあ。別にかまいませんけど。未練なんて無いし。さっさと行きますか」
「・・・ここまで自分の死をあっさり受け入れる人は初めてです。かなり冷静ですし。
まあ私は早く終わるので助かりますが。では私の手に掴まってください」
そう言って手を差し伸べてきた。素直にその手を掴む。ひんやりとして気持ちいいなあ、などと思った
瞬間、目が眩むような強烈な白い光が彼女の後ろから発せられる。
俺は眩しくて顔を横に背けた。
「謁見の間に直に飛びます。一瞬ですので。では、行きます」
なにか呪文のようなものを彼女がつぶやくと、光りが一層強くなり、体がフワッと軽くなった気がした。
光りが収まり、俺はゆっくり目を開ける。すると、先ほどのアパート上空ではなく教会のような場所に
移動していた。教会といってもあの長い机や椅子が一つもなく、がらんとしていた。
床や柱が真っ白な大理石で出来ており、鏡のようにピカピカだ。
広さは学校の体育館ほどの面積はあるだろう。天井は低い。3メートルくらいか。
キョロキョロと見渡しているとある事に気付いた。先ほどの女性が居ない。
代わりに目の前にスゥーっと金髪のおっさんが出現した。170cmの自分よりもさらに5~60cm
高いムキムキマッチョなおっさんっだった。
そんなおっさんがリクルートスーツを着ていた。もうパッツンパッツンだ。今にもボタンが飛んできそ
うな位に。滅茶苦茶似合っていない。しかし、神と聞いているので失礼な事を言わないようにする。
だだっ広い空間の真ん中で無言で見つめ合う大男と俺。こほん、と大男が咳払いするとこう言った。
「私が神だ。今から君の魂の行方を決める者だ。君は咲陽一≪さきよういち≫だな。通常は私が直に
説明する事はないのだが、今回は特殊な例ゆえに私が直接出向いた。ここまでで何か質問は?」
いきなり聞かれたので少し慌てたが、せっかくなので確認をしておきたい。
「じゃあ、俺は死んだんですよね」
「うむ。お前たちの時間でいうと5分ほど前に死んだ」
「原因はなんですか?火事なのは分かるんですけど、火元に心当りが全く・・・」
「火事ではなく、落雷による感電死だ」
「うわ、運悪すぎ・・・特殊な例とは?」
今まで即答していた神が言い淀んだ。
「うむ、どこから説明しようか。」
どこから出したのか、両手に椅子を出現させ、一つを俺に手渡して、自分はさっさとそれに座ってしまった。俺もそれに習い、少し重めの木製のシンプルな椅子を降ろし、おっかなびっくり腰かける。
「我の部下に、下界、すなわちお前たちの住む星の天候を操る神が居るのだが、そ奴から報告があった
。他の世界から無理矢理、門を開き、渡ってきた者が居ると。この門というのは、本来交わるはずの
ない平行世界と別の世界を繋げてしまうトンネルのようなものなのだ。門は神々しか使えないはずなのだが、禁忌とされる魔術を使い、この地球に来てしまった。しかし、本来居るはずのない人物が突如入り
込むと、世界は拒絶する。排除しようと国一つ潰れかねない自然現象が発生したりもする。
それを避けるため、私は異世界から来た者に天罰を与えた。しかし少々てこずった。人の身でありながら門を開いたのだ。神に近き力を持っていた。しかし所詮人の身。幾度も神の雷を受け、消滅した。
しかし、最後に放った天罰の余波が勢い余って下界にも降り注いでしまった。それが運悪く、君の居る
場所に落ちた、と言うわけなのだ。理解できたか?」
俺は口をポカーンとさせて、絶句していた。異世界からどうのこうのはすぐには理解できないが、
なんとなく分かった。しかし、神の放った天罰が全く関係ない俺に偶然落ちた。そして死亡。
さっきまであきらめて、達観して、来世とかあんのかなあとか、あるとしたらもうちょっと楽しい人生
がいいなあとか思ってた自分がどこかにいった。
「なんじゃそりゃああああああああああああああああああああああああああ!!」