いや、時代についていけないとかじゃないよ。
「歳とったなオレたち。時代はどこまで進むのかね。」
男は何故、働くのか。女房のため、子供のため。やりがい? オレは仕事にやりがいを感じたことなどない。食って行くため、仕方なく毎日汗をかく。
「おい、できたか?」
この野太い声の主はパートナーとでも言うのか、まあ仕事はできる奴だ。
「いや、まだだ」
「早く頼むよ、今日は応援部隊もいるんだから。ほら、そろそろ来る頃だ。」
「でも、いるかコレ? 昔はこんなものに頼らなかったがな。」
「安全策だよ。こいつが出来てから、効率が良くなったからな。」
「オレはこんなもん使わなくたって、やってみせるがね。」
すると野太い声の主はクスリと笑った。
「みんな、お前みたいに野性的じゃないの。」
おいおい、人をジャングルの王者みたいに言うなよ、そう思ったが口ばかり動かしても仕方がないので手を動かすことにした。
「お、いいね。じゃ、頼むよ。」
「あいよ。」
しばらくして応援部隊が辿り着く頃、オレは準備を終えていた。
応援部隊に何人か若いのがいる。今回は恐らく出来る奴が集まってるはず、若くてもやり手なんだろう。
その中の一人がオレに近付いてきた。
「お噂はかねがね・・・」
「噂? なんの?」
「語り種ですよ、あなたの活躍は。僕だってあなたの野性的なところに憧れて今日は志願してやってきたんです。」
「おいおい、人をジャングルの王者みたいに言うなよ。」
おっと、ついに言っちまった。
「なんです? ジャングルの王者って?」
さらにジェネレーション・ギャップか。説明が面倒だ。
「みんな、そろそろ出るぞ。ひとつずつ持ってくれ。」
助かった。
「おれはいいよ。弓ってヤツはなんだか合わねえ。石オノで十分だ。もちろん便利な道具で、良さも分かってる。便利な世の中になったもんさ。こういうもんは若い奴らのほうが得意だろうしな。」
「まあ、お前なら大丈夫だな。期待してるよ、ジャングルの王者。」
「若い奴、ソレ知らねーよ。」
「え? そうなの?」
「歳とったなオレたち。時代はどこまで進むのかね。」
女房のためか、子供のためか、今日もオレたちはマンモスを追い掛ける。
新しくて便利な道具には、疎くなってきたけど。