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第9話「女性下着問題勃発」

「うまっ」


口当たりの良い、やさしい味。


具として使われるハムとレタスは新鮮で、お互いに素材の良さを引き出している。


また手を伸ばし違う具のサンドウィッチを口に入れる。


今度はカツサンドだった。


これも手作りなのだろう。


絶妙な揚げ具合のカツはサクッという音を当て、パンのやわらかさとマッチする。


一つ一つがちゃんと手作り感があり、たった十日ほどでよくここまで上達したと感心を抱く。


おそらく鈴華のことだから、必死になって何度も何度も練習したに違いない。


本当に、信じられないくらい純粋で、猪突猛進なお嬢様であった。



「うまい。あんた、すげぇ練習しただろ」


「あ、当たり前ですわ! 私、陸斗に喜んでいただけるなら努力は惜しみませんわ!」


意地になったように顔を赤らめ、自分で作ってきたサンドウィッチを口に詰め込む。


リスのように膨らんだ頬が愛らしく、赤かったので林檎そのもののよう。


そうしてたまに会話を交えながら食べていると、突然鈴華が手を止める。


どうしたのだろうかと思い目を向けると、鈴華が急にすくっと立ち上がった。


向かった先にある物を拾い上げ、顔を真っ赤にして陸斗に振り返る。



「陸斗、これは一体なんですの!」


「え、あぁ、これは……」


「私という存在がありながら……浮気ですか!? こんな……女の子の下着があるなんて!」



浮気とは付き合っている者同士が使える言葉だったかのように思える。


付き合ってもいないのに浮気だと言われるのは心外だ。


いや、本題はそこではない。


鈴華の手に持たれている下着の正体は何だという話であった。



「いや、彼女とかそういうものではないだろう」


「じゃあこれは何だと言うのですか!?」


「だから、変な言い方するなって」



鈴華の言動には心底困らされる。


まともな回答が何一つ出来ず、これでは陸斗がただの変態のような扱いだ。


そもそも鈴華が怒るのも、論点がずれている。


何をどう曲解したら、”それ”を手にして恋人というものに行き着くのか……。


頭が痛いと、陸斗は鈴華の手から問題となった”その女の子用の下着”を奪い取った。



「俺に彼女がいたとしてもだ! こんな下着、誰が履くか!?」


「うっ……確かに履きませんが……」


「だろ? こんなちょ……」




言葉は続かなかった。


まるでこの雰囲気を消すかのように室内に扉を叩く音が響く。


来客に来たようだ。


陸斗はその女の子用の下着をベッドの上に置くと、鈴華の横を通過し玄関へ向かう。


「はいはい……」


何度も叩かれる扉にため息をつきながら扉を開く。


下を見ると無邪気な笑顔を浮かべる女の子が陸斗の足に抱きついてきた。



「おー。未来(みく)か」


「お兄ちゃん!」


ギューと抱きついてくる女の子の名前は未来。


陸斗と血の繋がった正真正銘の妹だ。


だが今日は未来が来る約束の日ではないはず……。


「じいちゃんたちは?」


「下にいる~。お兄ちゃんがいたらそのまま遊んでこいって」


「そっか」


嬉しそうに笑う未来の頭を撫でまわし、靴を脱がせると小さな身体を抱っこする。


無邪気な笑い声をあげる未来を連れて部屋に戻ると、畳のうえで正座をする鈴華と目が合った。


「その子は……」


「お兄ちゃんの彼女さん!?」


「うおっ!? おい、未来!」


未来は陸斗の抱き上げている腕から飛び降り、鈴華の元に駆けていく。


思い切り鈴華に突進をし、ギューッと抱きついて目を輝かせていた。



「お姉ちゃん、お兄ちゃんの彼女さん?」


「かかか、彼女……。そ、そう言っていただけるとうれしいですわ」


ポッと頬を染めながら喜ぶ鈴華。


質問の答えになってないのにはあまり突っ込まないようにしておくことにした。


「彼女じゃないだろ……。未来、変なことを聞いたりするんじゃない」


「ぶぅ~」


頬を膨らませてぶぅぶぅ言う未来。


いくら幼稚園で年長さんだからといってもまだまだ子供だ。


「陸斗。この……未来ちゃんとは一体……」


「俺の妹」


「高山未来、五歳です!」


明るく元気に挙手をしながらハキハキと自己紹介をする。


それに合わせて鈴華も未来に自己紹介を返していた。


陸斗の彼女になる予定、と未来に吹き込んでいたのには何も言えなかった。



「陸斗に妹なんていたのですね」


「まぁ……別々に暮らしているからたまにしか会わないけどな」


「そうなんですのね」


鈴華は大して追及せず、今は未来と戯れることに専念する。


未来は早速鈴華に懐いたようで、キャッキャッと楽しそうに笑っていた。


そんな妹の姿をかわいいと思ってしまうのだから、重度なシスコンと頭を悩ませる。


離れて暮らす分、余計に妹に会うとデレデレしてしまう顔が重い手に出た。



「あ! 未来のパンツ!」


未来は鈴華から離れるとベッドによじ登り、先ほど陸斗が鈴華から取り上げた下着を手に取った。


これが揉めていた原因の”女の子用の下着”である。


こんなのを履いている大人の女性がいるなら、ただの変態でしかない。


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