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第53話「マイファミリー マイディアレスト」


***



もう何度この暑さを体感したのだろうか。


じわじわとくる暑さに汗をにじませると、陸斗は身体を起こしてまだ重たい瞼をこする。


隣を見ると、一緒に眠っていたはずの鈴華の姿はなかった。


陸斗はのろのろとした足取りで部屋を出て、リビングへと向かっていく。


リビングの扉を開くとおいしそうな香りが鼻を刺激した。



「あ、お兄ちゃん。おはよう」


「未来か。おはよう」



何度も季節が過ぎていき、いつのまにか未来は小学校に通う少女になっていた。



未来は定位置に座ると、にこにことしながらお腹を撫で、食事にありつけるのを待っていた。


そんな未来の隣には以前よりも肉付きの良くなった母の姿があった。



「陸斗ってば、いつまで寝ているのよ。仕事が休みだからって寝てばかりはダメよ」


「はいはーい。すみませーん」



母の注意をかわし、陸斗は席に着く。


すると陸斗の目の前には、焼き立ての玉子焼きとご飯と味噌汁が出された。


それを運んできた綺麗な細い指先に触れ、陸斗は顔を上げて愛しい奥さんの頬にキスをした。



「おはよう、鈴華」


「おはようございます、陸斗」


料理は鈴華が担当し、陸斗は休みの日に洗濯や掃除といった家事に奮闘している。


おませな時期とはいえ、未来はまだまだ小さいので家族で外に遊びに出たりと大忙し。


それぞれの生き方はあれど、食事は一緒にとっていこうと全員でテーブルを囲んだ。


「さぁ、食べましょう!」


「「いただきます」」



おいしそうな見た目に、匂いに、五感が刺激される。


陸斗の好物である玉子焼きも今ではすっかり綺麗な出来栄えだ。


はじめて食べた黒い玉子焼きと比べると、同じ人が作ったとは思えない。



「そういえば、陸斗がデザインした家が採用されたんですよね。お祝いしたいですわ」


「え、お祝いだなんておおげさな」


「大げさではないですわ! 私もそうですが、お母様も未来ちゃんも喜んでいるんですよ!」



その言葉に二人は頷く。


陸斗は今、六条家の建設・建築を行う企業で働いている。


陸斗は建築に関して学びたいと思うようになったが、これまで歩んできた建設に関しても知識を身に着けたいと考え、両方学びながら働いていた。


そして今回、陸斗は社内の住宅デザインコンテストにチャレンジし、見事採用されることに。


陸斗が思い描いた家が現実となって、形作られるのだ。


その現場の一員として陸斗も立ちたい。


決してあの現場で学んだことを無駄にする気はなかった。


むしろ建物がどう作られるかを目で見て知っていたからこそ、デザインもスムーズに描くことができた。


陸斗の進む道は希望で満ちていると、毎日を楽しく生きていた。



「お袋、今日は調子はどうだ?」


「大丈夫よー。今日は未来と外出してくるわ」



母は病院から出た後、今まで失っていたものを取り返すかのように元気になっていった。


これまで未来に味わせた悲しい思いの分、母は未来との時間を大切にしていた。


未来は小学生という年頃になったということもあり、少しだけ陸斗に冷たくなった。


少し早い反抗期なのか、難しいものがあるのだろう。


それでも陸斗も未来も、家族の時間を大切にして日々を過ごしていた。


こんなにも何気ない一日がいとおしくて、幸せだと感じるとは思わなかった。


そこに空席はあるけれども、それでも今ある幸せを大切にしたいと考えていた。




朝食を食べ終えると、母と未来は二人で出かけていく。


陸斗と鈴華もまた、二人で外出し、家の近くの公園を散歩していた。


夏の暑い日差しが照り付ける。


肌がじわじわと焼き付いていく感覚がした。



木陰に設置されたベンチに座ると、陸斗は繋いだ手を撫でながら公園を見渡す。


広々とした緑の多い公園で、老若男女問わず気持ちよさそうに公園で時間を過ごしていた。


陸斗は公園のデザインも楽しそうだなと、余談ながら考えたりもした。


「陸斗」


「ん」



指を絡ませ、鈴華は陸斗の肩に体重を乗せる。


絡まった指には二人お揃いのシルバーリングがはめられていた。


鈴華は大学を卒業して、今はその美貌を生かしてファッション雑誌のモデルをやっていた。


仕事は不定期であるが、生活のためにがんばろうと鈴華は思っていた。


自分だけが何も出来ないのは嫌だった。陸斗の力になりたかった。


そんな鈴華が考えた結果、大学のミスコンでグランプリを取ったことをきっかけに芸能の仕事に興味を持つようになった。

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