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第51話「プロポーズ大作戦、です?」

秋、冬と過ぎていき、時は満開の桜が咲き誇る春となっていた。


様々なことに苦難したことが少し前に起きたとは思えないほど、穏やかな日々だった。


職場は相変わらずだが、皆それぞれ日々を、一生懸命に送っている。


ただ一つ、以前と大きく変わったのが、工藤の行方が不明になったことだ。


死期が目に見えていることからか、おそらく最期の時までを、穏やかに過ごしたかったのだろう。


誰も工藤の行方を問うことはなかった。



陸斗と鈴華の関係は変わらず恋人同士。


何も変わることのない平穏な毎日が続くことに、だいぶ慣れてしまった。


少しだけ陸斗は未来に前向きになり、将来を考えだす。


ひたすらに働いていた工事現場での経験から、建築の方面を学んでいきたいと意気込んでいた。


いつか自分のデザイン・設計した家やマンションを家族が暮らす場所にしたい。


笑顔あふれる空間を作ってみたいと考えていた。


それにはまだまだ勉強することが多い。


独学ではあるが空いた時間を勉強に当てるようになり、仕事では一つ一つの建材などに目を向けるようになっていた。


仕事が終わるといつものように鈴華と合流し、短いデートをする。

出会った時の夏の装いとは随分と変わり、今はパステルカラー等のやさしい春色の服を着ることが増えていた。



「陸斗。来週から新しい現場なんですってね。監督さんが教えてくれましたわ」


「あー、そうだった。まだ場所聞いてねーんだよ。先に鈴華に教えるとか……監督め」


何気ない会話をする時間がいとおしい。


繋がれた手から伝わってくる小さな温もりに、陸斗は微笑む。


あれから時間が過ぎたことで、陸斗たち家族にも変化が訪れていた。


一つは千里のこと。


千里は少しずつ元気になっていき、今では数日の外泊が出来るまで回復していた。


未来は相当うれしいようで、子どもらしくべったりと母に甘えていた。


これから家族の時間を大切にしたい。


金銭面で多少の余裕が出来たことで、陸斗は自分のために時間を使うようにした。


未来の成長を見守りたいと願い出て、祖父母のもとで未来と一緒に暮らすようになった。


もちろん、祖父母に鈴華を紹介済みだ。


二人はすっかり鈴華を気に入ったようで、嬉しく思った鈴華も頻繁に顔を出してくれた。


家族に恋人を紹介できるのは気恥ずかしくも幸せだと、陸斗はのろけて鼻の穴を膨らませた。


そして祖父母宅の近くまで歩いてくると、途中で足を止めて鈴華に振り返る。


「少し、公園に寄っていかないか?」


「? いいですわよ?」


櫻井の迎えが来るまではもう少し時間がある。


陸斗の誘いに鈴華は首を傾げながらも、素直についていき、ブランコに座って夜空を見上げた。


まん丸の月を眺めていると、前に陸斗が立ち、影になって隠してしまう。


「陸斗……?」


不思議に思っていると、陸斗がブランコに腰かける鈴華の前に片膝をつく。


そして小さな白い手を取ると、きらりと月明かりに光る指輪を薬指にはめさせた。



「り、陸斗。これは……!」


「本当はちゃんとしたところで渡したかったんだけど。ごめん」


「いや、ですからこれは……」


「誕生日おめでとう、鈴華」


華奢な指先に、シルバーリングが光る。


その輝きは鈴華がこれまで見てきたたくさんの宝石たちよりも美しかった。


指輪の収まった左手を見て、鈴華が感極まって涙する。


左手を夜空にかざし、月と星の輝きにも負けない一等星だと微笑んだ。



「こんな素敵なプレゼント……私、嬉しくて……」


「いつかちゃんとしたのを用意する。今はこれで……」


「これがいいんです! 私はこれがいい!」



鈴華の興奮した様子に、陸斗は立ち上がり、そのままブランコに座る鈴華を抱きよせる。


「……ずっと考えていたんだ。鈴華との繋がりを証明する何かが欲しかった」


心から喜んでくれる姿があんまりにも愛らしいものだから、陸斗は照れ隠しに鈴華の肩に顔を埋めた。


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