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第49話「ピュアハートですのよ」

猛暑、残暑と過ぎて、秋の気配が感じられるようになった頃。


昼休憩に顔を出せなくなると落ち込む鈴華に、陸斗ははじめて鈴華が現役の女子大生であることを知った。


毎日陸斗に会いに行けたのは大学の夏季休暇の期間だったため。


夏季休暇も終わり、鈴華は平日の日中に大学に通うようになった。


(俺は女子大生に手を出したのか……)


とはいっても、陸斗も年齢で換算すれば大学卒業したての若者だ。


まったく法的にも世間的にも問題のない、お似合いの年齢だが、妙にバツが悪かった。


昼間に会えなくなった分、陸斗と鈴華は夜に会って二人の時間を過ごすようになる。


今日は大学の講義が休みとなったらしく、鈴華がお弁当を作って陸斗に会いに来ていた。


いつもの公園で弁当を食べていると、近くを通りかかった志緒利がやってくる。


まだ志緒利への警戒心が解けずにいる鈴華だったが、志緒利はその反応をも楽しんでいる。


「きゃっ! し、志緒利さん!?」


「細っ! 何この羨ましい体型は! 出てるところはちゃっかり出てるし!」


志緒利は鈴華の身体を凝視していたが、ついに我慢できないと手を伸ばして鈴華を抱きしめる。


整った体格を遠慮なくペタペタと触り、胸のふくらみに鼻の下を長くする。


「本当……陸斗ったら幸せ者ね! こんなかわいい彼女がいて。抱き放題じゃない!」


「抱き放題だなんて……志緒利さんだって今私を抱いてるじゃないですか」


「そうじゃなくって、セックスのことよ! あたしが男だったら毎日鈴華ちゃんを抱いちゃうわ」


サラッと言いきった志緒利の言葉に鈴華は紅潮してしまう。


さすがに言葉の意味はわかるので、羞恥心に襲われて首を大きく横に振った。


あまりにもオーバーに恥ずかしがるものだから、志緒利は察してしまう。


「まさかあなたたち……何にもシてないの!?」


「当たり前じゃないですかぁ。そういう行為は結婚をした後にするものなのですよ。いくら結婚をする約束をしたからと言ってもまだ駄目ですわ」


ウットリしながら語る鈴華に、志緒利は大きすぎるほどのため息をつき、頭を抱えた。


考えが古いというのかなんというか。


さすがにこれでは陸斗がかわいそうだと哀れみ、、志緒利は鈴華の手を取ると、陸斗と引き離す。


そしてお姉さんの顔になって鈴華に向き合った。



「いい? 鈴華ちゃん。その考え方は古いわ。捨てなさい」


「あ、はい……」


「女はね、男を受け止めてあげなきゃいけないの。セックスはその受け止めることの一つでもあるのよ」



「嫌なときもあるし、それだけではないから毎回受け止める必要はないけれど」と、志緒利は補足して話を続ける。



「男は女を守るもの。愛してるからこそ守りたいと思うし触れたいと思うんじゃないかな。女は女なりに男を受け止めてあげたいじゃない?」



志緒利の言葉を聞きながら鈴華は自分なりに考えていた。


もしかしたら陸斗をこのことで悩ませていたかもしれない。


本来ならばそのことも全部受け止めてあげなければいけない立場なのに、今の現状に満足してまったく考えてもいなかった。



陸斗を愛しているし、支え受け止めてあげたいと思うのだが、行為はまだまだ先と考えていた。


嫌ではない。


むしろ陸斗と触れあうのは心地よい。


志緒利は鈴華が恥ずかしがると思っているのだろう。


女性としての恥じらいは当然ある。


だが愛の示し方が一つ増えるだけだと、鈴華はポジティブに捉えていた。


もちろん、愛のない行為は虚しさが生まれるだけだ。


無理やりはもってのほかだが、愛があるならば抱きしめられるだけで幸せな気持ちになれる。


結婚を考えているのならば尚更に互いを知り、どんなことでも受け止められるようにならなくてはならない。


陸斗と鈴華の場合、まだ歩み始めたばかり。


互いを受け止められるほどに成長したいと、鈴華は未来に夢を見る。


心も身体も、陸斗を支えていきたいと――。


「大変だろうけどねぇ。男は欲に正直だからね。女みたいにロマンティックなことは考えていないわよ」


「私は陸斗を受け止めたいですわ。でも、男の方が欲に正直なら私には何も感じないということですわよね。陸斗に迫られたことなんて……ありませんもの」



キス以上のことは望んでこない陸斗に鈴華は不安を感じた。


触れたいと望んでいないから迫ってこないのかもしれない。


鈴華から迫るには少々勇気が必要だ。


やはり鈴華に触れたいと思えるだけの魅力がないんだと、涙目に落ち込んだ。


そんなわかりやすい反応に、志緒利は口元に手を当てて愉快そうに笑い出す。


こちらは真剣に悩んでいるというのに……!


キッと志緒利を睨みつけると、志緒利は柔らかい微笑みで鈴華の頬を撫でる。

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