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第13話「とんでもねー女」

(XX病院……。ここに陸斗が?)


白い外観が清潔さを象徴し、緑に囲まれた庭園が入院患者たちの心を癒す。


病院なんてめったに来ることはないため、鈴華は病院に入ると受付口を探してさまよった。


「すみません」


「はい」


いざ受付口にたどり着いたものの、あちこちから老人に声をかけられ忙しそうだ。


鈴華が声をかけると不機嫌な声色が返ってきて肩がすくむ。


「少しお尋ねしたいのですが……この病院に高山陸斗という方が検査などに訪れたりはしていませんか?」


「申し訳ございません。患者様の情報をお伝えすることは致しかねます」


「こっ……ここに来ているはずなんです!」


「一度、ご本人様と連絡をとりご確認ください」


個人情報の漏洩にピリピリする世の中だ。


総合病院ともなれば、簡単には口を開くはずもない。


困り果てた鈴華は受付の女性に頭を下げると、行き場所を失ったかのように病院を歩き回る。


焦る気持ちばかりが先行し、最後まで秀一の話を聞かなかったことを今さらながらに後悔した。


そもそも陸斗がどんな理由で病院に訪れているかも知らない。


検査のためか、定期的な通院なのか、誰かのお見舞いなのか。


途方に暮れた鈴華は、込み上がる悔しさに涙をにじませた。



(もう! 泣いてもなーんにも変わりませんわ!)


弱音を吐くくらいなら陸斗に連絡を取る勇気を持て。


押しかけては迷惑と考えられない常識のなさを恥じろ。


鈴華は両頬を叩くと、スマートフォンを握りしめて病院の地図を探しに立ちあがる。




「……陸斗?」


地図を求めて歩いていると、エレベーターホールに既視感ある後ろ姿を発見する。


エレベーターが到着すると、その人は上に昇ろうと入り、中で振り返った。


ほんの一瞬ではあったが、間違いなく陸斗だったと確信する。


鈴華は心逸るままに走りだし、閉じてしまったエレベーターの前で階数表示を確認した。



(五階……! 入院患者専用階ですわね!)


幸いにも入院患者専用フロアのため、そこまで迷うことはないだろう。


今すぐ手を伸ばして、その逞しい身体に抱きつきたい。


その一心に鈴華は他のエレベーターを待っていられないと、隣接する階段を駆けのぼる選択をした。


階段を昇りきると、ナースステーションをのぞき込む。


看護師は全員出払っているのか、周りを確認する余裕もなく鈴華は病室エリアに足を踏み入れる。


一つ一つ当たっていくしかないと、鈴華は意気込んで入院患者の名前の書かれたプレートを確認していった。


そして一つの名前を発見する。



「高山千里……」


陸斗と同じ苗字。


いや、高山なんてどこにでもいる苗字だ。


だがここにいると鈴華の直感が訴えており、期待と不安を抱きながら個室の扉に手をかける。




「鈴華?」


閉まっていた病室の扉が先に開き、ちょうど病室から出ようとした陸斗と鉢合わせた。


「り、陸斗……」


「お前なんでここに……」


「そ、それは……」


せめて連絡してから来るべきだったと反省し、スマートフォンを握りしめたままうつむいた。


回答につまずく鈴華を見て陸斗はなんとなく察したのか、深くため息をついて額を抑え込んだ。


「いつからだ?」


「そのっ……病院内を歩いていたら陸斗を見かけて」


「……そっか」


いつになく陸斗の声は低かった。


プライベートにまで関与して、一線を越えるような真似をしたことに腹を立てているのであろうか。


さすがに勝手が過ぎたと、鈴華は陸斗から目をそらす。


どうしてもう少し配慮ができないのか。


いくらなんでも非常識だったと、鈴華は自分を恥じて陸斗の目を見られなくなった。



「ここまでするとはな」


「申し訳ございません……」


愛しているからこそ、一つ一つのことで不安になる。


陸斗を知りたいと願うのに、空回りばかりしてしまう自分が情けなかった。


それでも陸斗の傍にいたいと思ってしまうのだから、この気持ちはどうしようもない。


まずは誠意をもって謝り、どうしてここに来るに至ったかを話そう。


その後は陸斗が決めることだ。



意を決し、鈴華が顔をあげると――。


「……はは! お前……よくやるよな!」


「はぇ……?」


突如、陸斗が腹を抱えて笑い出す。


思わず拍子抜けした声が漏れ、あれほど不安に満ちていた心情が迷いだした。


(こ、これはどういう反応でしょう……?)


「秀一にでも聞いた? 俺がここにいること……」


「すっ……すみません!」


「謝ってほしいんじゃない。まぁ、秀一が余計な世話を焼いたんだろうな」


あからさまにため息を吐き、後頭部をかく。


怒っているというよりは呆れているのだろう。


陸斗はそこまで怒っていないとわかり、ようやく鈴華は緊張から解放されてどっと汗を流した。

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