異世界コインはポケットにある
土川つくしは小学校の教員。29歳で独身の女性。
大きな丸い眼鏡が彼女を実年齢よりも若く見せる。
毎日出勤の2時間前に起きて、身支度や掃除を欠かさない
几帳面な性格である。
この日もせっせと部屋の掃除をしているところへ、これも日課であるテレビニュースの朝の占いを見る。
つくしはA型、TVアナウンサーが言うには
「今日のA型さんは外で活動すれば新しい自分と出会えます」らしい。
ちょうど今日は課外授業で写生大会があるんだ。
何かあるかもしれない?
つくしは3年生の受け持ちでクラスの生徒たちを連れて
学校近くの大きな広場までやってきた。
生徒たちは画材を持ってみんな思い思いの場所で、花や樹木
建物などを描いている。
そこへ一人の男子生徒がつくしに近づいてきた。
「先生!さっきそこでお金見つけたよ?」
と言って一枚のコインをつくしに手渡す。
「お金?見せてみて」
そのコインは金色で見たこともない文字が書かれている。
5百円玉くらいの大きさで、素材は触った感じではプラスチックでも金属でもないようだ。
見たところ日本のお金ではない。おもちゃか何かだろうか
それにしてはよくできている気もする。
「ありがとう。これはお金じゃないけれど先生が預かっておくね」
その日の夕方ごろ近所の行きつけのコンビニへ行くつくし。
もう何年も通っているために店員のおばちゃんとは顔見知りである。
「おいでやす~」
コンビニなのに「おいでやす」といういつものおばちゃん店員。
紅茶とドーナツをかごに入れてレジまでもっていく。
「おばちゃん、なんか変なコインを拾ったんだけれど
何かわからないかな?これ外国のお金かな?」
「変なコインやて?見せてみな」
まじまじとつくしから渡されたコインを見るおばちゃん店員。そしてピカリと両目が光った。
「う~む、これは・・・。もしかしたら異世界のコインかもしれへんで?」
「異世界のコイン!?どういうこと?」
にやりと笑うおばちゃん店員。
「この世界は何処かで異世界と繋がっていて、ひょんなことから異世界からこのコインが転がってきた。
そして異世界といえば剣と魔法、モンスターの世界や。このコインには魔法が宿っていて使うと大魔法が炸裂する!!
もしくは異世界のコインなんかこっちの世界では何千万、何億の価値があるかもしれへん。凄いものを拾ったで、アンタ!!」
「!!!、ほ・・ほんとに?」
「なあんてな!冗談や、冗談。あはは、おそらくどこかのゲーセンのコインちゃうかいな?」
「剣と魔法の世界!!大魔法が使えるコイン!!」
コインを見つめながらフラフラとした足取りで店を出ていくつくし。
「あれ?つくしちゃん、本気にしたらあかんよ?ちょっと聞いてるのん?」
この異世界コインはどうやって使うのだろう?
コインであるからには何かしらの商品と交換ができるはず。
しかし普通に店では使えないだろう。
つくしは家の近くで自動販売機を見かけた。何の変哲もないジュースの自動販売機。
まさか・・・、
とは思いながらもその自動販売機に異世界コインを投入してみた。
「!!!!!!!!」
自動販売機がとたんに神々しい光を放ち、ジュースのネームのところがすべて書き換わった。
そのネームのところをよく見てみると
古代戦士の大剣、マジシャンの杖、炎属性魔法強化ポーション、ドラゴン召喚、ケルベロス使役、巨大ゴーレム3体などなど
目の前の光景に脳汁があふれ出すつくし
異世界コインはマジだった!?
どれにしよう?
コインは一枚だけだからこの中から一つしか選べないであろう。
つくしには剣を振るう趣味はないし、令和の世の中にドラゴンなんか放ったら大変なことになる。ましてやケルベロスなんか家で飼えるわけない。学校をゴーレムに守らせようか?
「魔法使いのホウキ」
とある。
これだな、と思い勇気を振り絞ってポチっとボタンを押す。
するとつくしの目の前にパッと1本の古びたホウキが
現れた。魔女が使っていそうな年季の入ったホウキ。
なんかふわふわと浮いている。
これは夢だろうか?
三十路手前にして魔法使い・・・。
中二病はとっくに卒業したんだけどな。
ええい、夢でもなんでもいいや!
「今日から私は魔法使いのつくしだ!」
つくしはホウキにまたがると空高く舞い上がっていった。
この日本も恐らくどこかの異世界に繋がっているかもしれない。
今年初の投稿となります。
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