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ななしのよる 4
わけのわからない苦しみにあえぎながら、その場から逃れるように走るのだけれど、足がもつれてうまくいかない。
ここから逃げたいわけじゃない。
僕の記憶のどこかにある、消えようのない痛み。
不快感。
それがあの子達の歌と溶け合い、僕を追ってくる。
――嫌・・・・。 お願いだから、やめて・・・・!
悲しみ、苦しみ、痛み。
そういった感情が、僕の体の中を埋め尽くしていく。
僕は必死で耳を押さえながら、叫んだ。
張り裂けんばかりに、叫び声を上げた。
気が付くと路地裏の、狭く、暗い場所にうずくまっていた。
耳から手を離すと、もうあの歌は聞こえてこない。
かたく食いしばった歯の隙間から、自然に声がもれた。
かたく閉じていた目の両端からは、涙があふれてくる。
止めることができない。
口を開いて息を吐き出すと、声がむせび、それも止まらなかった。
僕は頭を壁に押し当て、誰もいないこの暗い場所で、しばらく泣いた。




