ななしのよる 28
その街は、建物の中から投げ出されてくる黄色い光であふれていた。
様々な匂いが混じり、それが一つとなり、おかしなことになっていた。
街の光で黄色くにじむ夜の空は、灰色の煙で何かを描いていた。
煙は乱立する煙突から、排気管から、もしくは家の中から直接流れ出ていた。
いったい何がどうなって、あんなにたくさんの煙になるのか、僕にはわからなかった。
この街は煙を空に送る街のように思えた。
黄色い光の中を歩いていると、匂いと共に、様々な音が耳に入り込んでくる。
音というより騒音に近い。
人の声もとどいてくる。
これも、怒声といった方がいいかもしれなかった。
これらの音や匂い、煙や光といったものは、すべて、街の中にある大きな建物から飛び出してきていた。
ほとんどの建物は開放されていて、そこから人や、鉄でできた大きな機械やらがはみ出している。
その前を通ると、金属が放つ独特の、体の奥にまで響いてくるような空気の波や、機械油の持つ、熱を感じられるあたたかな匂いが、僕のこわばった体をほぐしてくれた。
僕は、機械の無機ゆえのぬくもり、その純粋さに、救われる気がした。




