ななしのよる 25
列車はもう、あの橋を渡って行ってしまったのだろうか。
まぶしいほどに僕を包んだあの光は、もうどこにも見えない。
追いかけて行きたい。
そう思った僕の心を見透かしたのだろうか。
「この線路をたどって行っても、人の足では向こうへ行くことはできないわ。
今まであの橋までたどり着いた人は、一人もいないの」
女の人は僕の方を見ずに、そう言った。
きっと多くの人がそうしたに違いない。
この人だって、そうできればと考えたはずだ。
「この夜に捕らえられた人達は、ここから逃れるすべを持たないわ。
王は私達を放してはくれない。
それを望もうと、望むまいと……」
僕は、どうして自分がここにいるのかわからない。
この人はどうなんだろう。
僕と同じなのだろうか。
でも僕は、ここにはいられない。
何かをしなければ、動いていなければ、じっとしていたら僕は恐怖に消されてしまう。
引き裂かれて、何も残らず消えていなくなって、誰にも聞こえない声だけが叫び続けることになる。
だから……
「僕は行きます」
だけれど、どこに行くというのだろう。
目的も理由も、なぜという問いかけすら、僕にはありはしないというのに。




