ななしのよる 22
無意識のうちに出た言葉は、僕に、どうしようもないほどの申し訳ない気持ちでいっぱいにした。
だけれど、それが何なのかがわからない。
先生って、何の先生なのだろう。
僕の先生なんだろうか。
よく知っている人のはずなのに、思い出せない。
僕はそれ以上、その中年の女性を見ていることがいたたまれなくなり、この列車から顔をそむけた。
慣れた闇には、駅にいた女の人が、列車からもれる光に照らされて、浮かんでいた。
女の人は隣の扉の前に立っていた。
列車に乗るでもなく、ただ立っていた。
女の人の前には、この列車の乗客であろう背の高い人が、女の人と向かい合って立っている。
扉一枚分の距離を隔てて、二人はただ立っていた。
向かいの人は男性だろうか。
僕には若い男の人に見えていた。
その人が女の人に、ひとこと、ふたこと、何か言っているのが口の動きでわかった。
それに対して女の人も、ひとことかふたこと、口を動かした。
何を言っているのか、僕の耳には届いてこない。
二人が何を話しているのかは僕にはわからなかったけれど、女の人の瞳に浮かぶものは、目に映っていた。
それは間を置かずして、光に反射しながら軌跡を描いた。




