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ななしのよる 18
どうしてこんなものをくわえているのか、僕にはわからなかった。
ここに落ちていたものを拾ったのだろうか。
子犬はただ黙って愛くるしい顔でそれをくわえている。
僕は子犬のくわえている切符を手に取ってみたのだけれど、それはぼんやりとかすんでいて、何が書いてあるのか僕には読めなかった。
「それはその子の切符だから返してあげてね」
女の人がそう言った。 だけど、僕には何を言っているのかわからなかった。
女の人は少し困ったような笑みを見せながらも続けてくれた。
「切符がないと列車には乗れないの。
その切符は初めから持っているものだから、列車の中で買ったりすることもできないのよ」
僕は切符なんか持っていない。
いや、もしかして持っているかもと思い、ポケットの中を探してみた。
だけれど、いくつかの小銭が入っていただけで、切符は持っていなかった。
――どうして……?
子犬の方を見ても、そんな僕をただ黙って見つめているだけだった。
そして僕は、だんだんと、この意味に気づき始めていた。




