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ななしのよる 16

 長く伸ばした髪と小柄な姿で、その人が女の人だということは僕にもわかった。


 着ている洋服から見て、若い人なんだろう。


 顔は、その伸ばされた髪の向こう側に隠れていて、わからなかった。


 電灯のたよりない光で、その人の足元には、じんわりと影が水溜りのように広がっていた。


 子犬がその人の隣で丸くなってしまって、それで僕はどうしていいのかわからず少しの間立っていたのだけれど、子犬はそこから動かないし僕も足が疲れてしまっていたので、結局長椅子に座った。


 女の人とは子犬をはさんだ程度の隔たりなのに、その人は最初に見た時と変わらない姿勢で、僕のことも、子犬のことも、見ることはなかった。


 僕はしばらく風の音や川の流れる音を聞いていたのだけど、それも退屈になってきて、「この駅からはどこに行けるんですか?」と、女の人に訊いた。


 女の人は少しだけ頭を動かしたみたいで、髪が揺れた。


 ちょっと顔がのぞいたのだけれど、あまりジロジロ見るのもいやらしいので、僕は子犬の方へと目を落とした。


「あら」


 と、その人の方から聞こえた。 女の人の声だ。


「人がいたのね」


 声は、その言葉とは裏腹に、無色透明に澄んでいた。

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