ななしのよる 13
息がはずむ。
どこまで行けばいいんだろう。
どこまで走れば、僕の居られる場所があるんだろう。
悲鳴のような音を出している僕の咽は、懸命に空気を求める。
そうして空気を吸うたびに、何かですり切られる胸は、いつパンクしてもおかしくない状態だった。
だけれど、足を止めることができない。
周りは暗くてよくわからなかったけれど、いつの間にか田舎道のような、はずれた所を走っていた。
ふらつく僕の足元を、子犬がはしゃぐように駆けている。
かけっこでもして、遊んでいると思っているんだろうか。
僕はなんだか可笑しくなって、アハハと笑ったのだけれど、呼吸を乱したそれは笑いにはならず、逆に涙が出てきて、僕は転んだ。
勢いよく転んだ僕は、その場でゴロンとなって、大の字を描いた。
痛くないのは、僕の下に、何かが敷かれていたからだ。
はじめは草か何かだと思ったのだけれど、それは花だとわかった。
仰向けとなった僕の目の中に、たくさんの星と、一つの月と、それを囲む赤い花が飛び込んできたからだ。
子犬の冷たい鼻面が顔に押し当てられ、僕を見つめている。
息をはずませながらも、今度こそ僕はウフフと笑った。
風の運んでくる音にまじり、どこか遠くで、ガタン ゴトン という列車の声が聞こえた気がした。




