ななしのよる 11
その子は帰らない。
いつまでもここで、自分の世界の中で、遊んでいる。
遊んで・・・・?
遊んでいるんだろうか?
顔は笑っているけれど、その笑顔は僕の心の底を寒くした。
なんだろう、この孤独感は。
体がどんどん冷たくなっていく。
体の芯が冷え切って、背中のあたりから波紋のように悪寒が広がっていく。
あの子を見ていると、心が孤独でいっぱいになる。
そう、僕は気づいていたんだ。
ただ、知らないふりをしていただけ。
僕はあの子を知っている。
とたんに体が震え出した。
それが寒さから来るものなのか、それとも違う震えなのか、わからなかった。
僕は、あの子が誰なのか知っていた。
そして、あの子がこれから歩む道も、あの子が大人になった姿も、知っていた。
僕は急にこわくなって、足元でくっついている子犬に触れた。
やわらかい毛並みをたしかめると、震えるひざを曲げ、子犬を抱き寄せた。
こわくて、もうあの子供を見ることはできなかった。
「行こう!」
僕は子犬をうながして走り出す。
少しでも早く、この場所から離れたかった。
少しでも遠く、ここから離れたかった。




