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風に乗って

作者: らこ

 森の木々たちの声を聴きながら

 今日ものんびり花たちの世話をする


 虫たちが懐かしいメロディーを演奏しだしたから

 ボクは作業を中断して、曲が聴こえる場所へ向かった


 森のみんなも集まってきて、いつのまにかお祭り騒ぎ

 みんなで踊っていると、キタカゼさんがやってきた


 ふんわりとボクたちの後ろに座り

 虫たちの奏でる音色にうっとりしていた


 演奏が終わるとキタカゼさんは「ブラボー! ブラボー!」と小さな拍手をして

 やわらかい風を作り、花びらをみんなの頭上にほわほわと飛ばした


 キタカゼさんは、今の演奏を次に行く場所の

 その森に住むみんなにも聞かせたいんだと

 ボクの袖をつかんできた


 ボクはボクが見たもの、聴いたものを記憶して

 見せたり聴かせたりできる「記憶の妖精」だから


 それを知っているキタカゼさんは

 ウルウルした瞳でぼくを見つめては「一緒に来て?」と何度も何度も誘ってくる


 この場所以外知らないボクには、初めての旅になる

 引きこもりで、引っ込み思案で、口下手で、不愛想なボクは

 別な場所でやっていけるのか心配になった


 そんなボクを見かねたドリアードがテレパスで話しかけてきた


「ナニモ、シンパイナイ、ソトノ、セカイハ、スバラシイ、キセキデ、デキテイル」


 その言葉でボクは決意した


 広い世界を知って、もっといろんな記憶を残していこうと


 そうさ、ボクは記憶の妖精


 この広い世界のまだ知らない全てを

 ボクのスピリットにしっかりと刻み込もう


 決心したボクの表情を見たキタカゼさんは

 バラの様に頬を赤らめて、にっこり微笑み

 ボクを抱きかかえて空へと飛んだ


 みんなが手を振る姿があっという間に見えなくなって

 この森の一番高い木を通り越して見た景色は、とても美しいものだった


 とっても大きな水たまりがボクの瞳に映る


「大きな水たまりって思ったでしょ? これはね、海って名前なんだって」


 くすくす笑いながらキタカゼさんが教えてくれた


 まだまだ見たことのない場所や

 知らないもの、聴いたことのない音が

 たくさんあると思うと

 ワクワクして胸が躍る

 

 まずはここから

 記憶を刻み込んでいこう


 キタカゼさんという

 風に乗って

 





風に乗ってどこまでも行くことができるのであれば

奇跡のようなその景色たちをこの目で見たいと思った


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