最高の郵便局
エッセイを好んで読まれる方々。お懐かしゅうございます。ハイファンタジー生まれのエッセイ育ち。異世界金融毎日更新(宣伝)! 皆様のあなたの街の暮伊豆が数ヶ月ぶりにふるさとエッセイ界へと舞い戻って参りました。
エッセイ界を駄文で埋め尽くそうぜプロジェクトは依然として進行中。数人が参加してくれているのは歓喜中。
さて、今日の話題は?
『最高の郵便局』なのです。
人によっては炎上案件でもあり、私をモンスターだと糾弾してもおかしくないでしょう。
でも、他に方法が思いつかなかったのです。
平日、午前九時。私は車を運転していた。
信号待ちでふと携帯を見ると着信があるではないか。
父親からだった。こんな時間に珍しい。
コンビニに車を停めてかけなおす。出ない。
しかしまたかかってきた。
「もしもーし!」
やつは耳が遠いので大声で話さなければならない。しかし、雑音しか聴こえない。
やつは耳が遠いのでテレビを大音量で視聴する。それかと思った。しかし、やつの声は聴こえない。いったん電話を切る。かけなおす。今度は出た。
「もしもーし! なにぃ?」
「もしもーし! 聴こえるう?」
「どうした!? 大丈夫なんか!?」
私が一方的に喋るだけで返事はない。嫌な予感が満ちていく。倒れるか何かして、力を振り絞って私に電話をかけてきたのではないか? と。
「おい! 大丈夫なんかっちゃ! やばけりゃ救急車呼べえ!」
この男、怪我が多い野郎である。
屋根から落ちること2回。トラクターを棚田から落とすこと1回。釣りの帰りに高所から岩場に落下すること1回。いずれも入院している。
しかしこの男。指を数本失うほどの大怪我をしているくせに自分で車を運転して病院に行く野郎である。手足だって折れてるのに。バカである。
そんな男が声も出せないほどやばい状況で私に電話をかけてきた。嫌な予感がノンストップなのも当然だろう?
「大丈夫なんかっちゃ! やばいんか!?」
やはり返事はない。だから再び電話を切った。
ところで、その時の私は十時に約束があるため高速に乗る直前だった。そう、ハイウェイに乗る前に、だ。
しかし、そんな状態で高速になど乗れるはずがない。
一件電話をかけてみる。相手は実家の隣の家だ。真隣ではないが。
『おかけになった電話は現在使われておりません』
ば、ばかな! 携帯ではなく家の電話なのに!
通称『先生』と呼ばれるその隣人は高齢……そのせいか家を増築して息子夫婦が引っ越してきた、はずなのになぜ!?
詰んだ……
実家周辺では友人を除くとその先生しか電話番号を知らないのだ……午前のその時間、友人は仕事のため近所にいるはずがない。
詰んだ……
こうなったら約束をすっぽかして行くしかない。数時間かかるから手遅れかも知れないが……そう考えた時だった、妙案が浮かんだのは。
それは……郵便局に電話することだ。
『◯◯郵便局です』
『棚津の暮井です。大変申し訳ありません! お願いがありまして!』
『何でしょう?』
『実はですね……◯◯◯◯というわけでして、様子を見に行ってはもらえないでしょうか……ほんっとごめんなさい!』
『ああ、いいですよ。後で行ってみましょう』
コンビニにコーヒーを買いに行くより気安くOKしてくれた……
なお、郵便局から実家まではおよそ三百メートル。
しかもだ。この郵便局員さんは『後で』と言ったにもかかわらず、五分とかからず私の携帯に電話がかかってきた。
『来たんですけど玄関に鍵がかかってるんですよね。でもテレビの音は聴こえます』
「じゃあそこら辺から適当に入ってみてください」
玄関に鍵がかかっているのが珍しい土地柄なのだ。そして普通に台所側から入る郵便局員さん。勝手口ですらない、サッシのところ。
『あ、いました! テレビ見てます!』
『おはようございます。ちょっと今息子さんから電話もらって様子見に来たんですよ』
父親と話し込む郵便局員さん。そして電話を代わった。
『おーい、何かあ?」
「電話があったけど何も言わんからやべぇかと思ったんちゃ! 携帯どうした?」
『携帯? 触っとらんどお?』
原因を追求しても無駄ということが分かった……触った記憶がないのか、何かの下敷きにでもなっているのか……
『まあええわ。代わって』
『おう、ありがとのお』
心配したことは伝わったらしい。
『いやあよかったですね』
「ほんっとにありがとうございます! めちゃくちゃ助かりました! ありがとうございます!」
『いえいえ、また何かあったら言うてくださいね』
「本当にありがとうございます!」
終わった。
安心した。
あんなモンスターみたいなこと言ったのに、快く引き受けてくれて、しかも行動が早い。
こんなに頼りになる郵便局員さんいる!?
こりゃもう簡保入るしかないだろ!(もう入ってる)
ちなみにこの郵便局員さん。私が何回かツイッターやスペースで言及した、私のことをイケボと言ってくれたあの人なのだ。歌を聴いたわけでもないのに! 嬉しいじゃないですか。ありがたいじゃないですか。
こんな郵便局員さんのいる郵便局。最高じゃないですか!?
この恩は忘れません。
もちろん後日、菓子折り持って挨拶にいきました。