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檻の中の君  作者: 二井星子
第2章 檻の中
34/47

34 生き残り④

 まるで挑みかかるかのように、ダグラスがアリアを見つめ返す。


 しばらくの間無言で見つめ合うと、ダグラスが急にふっと息を吐き、小さく笑った。


「大したものだ。その通りだよ」

「エントウィッスル侯爵家の秘密をご存知でしたか」


 取ってつけたようにフィリベルトが言う。


 口元に浮かぶその笑みを見ていると、フィリベルトにとってアリアの発言が予定調和のうちだったことがうかがえる。全く動揺していない。


「エントウィッスル侯爵家の血筋が元々のエントウィッスル侯爵家ではなく、本物の『結界の魔法』を受け継ぐエグルストン伯爵家の生き残りが成り代わる形で今に至っていることは知っている」

「ああ、それも知っているのか。結界の魔法は比較的発現しやすくてな。我々は隠し通すことに多大な労力を割いた」


 ふっと小さく息を吐いて、ダグラスがわずかに笑う。諦めと感心が入り混じった笑みだ。


「君は『エントウィッスル侯爵家のあれ』が起きた当時、ここにいた。父に代わり結界を張るためにグリニオン監獄を訪れていた最中、『エントウィッスル侯爵家のあれ』が起きた。そして君は、何らかの理由で自らを死んだことにして、今日に至るまでグリニオン監獄で囚人のふりをしながら暮らしている。フィリベルトはそのことをあらかじめ知っていた」

「その通りだ」

「ええ、その通りです」


 改めて目の前に座るダグラスと、その斜め後ろに控えるフィリベルトを見る。


 これでわかった——フィリベルトは、『エントウィッスル侯爵家のあれ』を巻き起こした犯人ではない。


 事件に無関係なのかまでは不明だが、少なくとも二百二十人を手にかけてはいない。何らかの理由で、大罪人を装っている。


 さもなければ、大切な妻子を殺害した男を、ダグラスが何の怒りも憎しみも向けずに放置するわけがない。


 『エントウィッスル侯爵家のあれ』で殺害された二百二十人の中には、ダグラスの二人の息子、兄のロニー・エントウィッスルと弟のバート・エントウィッスル、妻のアンソニア・エントウィッスルが含まれている。


 ダグラスが自らの子を大切に思っていたことは、ロニーの誕生を祝したお茶会を開催したことからもうかがえるし、社交界でもエントウィッスル侯爵の子煩悩ぶりと夫婦仲の良さは有名な話だったと聞き及んでいる。そんな男が、妻子を殺した男に負の感情を向けないなどあり得ない。


 事件当時はグリニオン監獄にいたから知らなかった、ということは確実にない。なぜなら、アリアはつい先日、囚人たちとの顔合わせの場でフィリベルトの罪状を——何をしてグリニオン監獄に来たのかについて話したからだ。


 それを聞いてなお、ダグラスはフィリベルトを気にかけ、守るような行動を取った。一度たりとも怒りや憎しみの感情を向けることはなかった。


 アリアが見る限り、ダグラスは感情が表に出やすいわけでもないが、かといって内心を隠すことに長けているわけでもない。フィリベルトの鉄壁の表情管理と演技には到底及ばない。

 そのダグラスが、フィリベルトに対して怒りも憎しみも向けないことが何よりの答えに思えた。


 ダグラスは恐らく、事件当時グリニオン監獄にいたが、『エントウィッスル侯爵家のあれ』の全容を理解している。


 そして——フィリベルトは、『エントウィッスル侯爵家のあれ』の犯人ではない。


 アリアは無意識に安堵の息を吐く。


(良かった。——良かった(・・・・)?)


 湧き上がる感情に戸惑い、目を剥きそうになる。一度静かに深呼吸して心を落ち着け、それから開口する。


「なぜ、死んだふりを?」

「その問いにはお答えすることができません」


 あっけらかんとした様子で、なぜかフィリベルトが即答した。


「君には聞いていない」

「失礼しました」


 悪びれた様子は一切なく、謝る気もなさそうな様子でフィリベルトが言う。


「フォーマルハウト。なぜ死んだふりをした?」


 ダグラスはゆっくりと首を横に振った。それから開口する。


「フィリベルトの言う通りだ。答えられない」

「なぜ?」


 アリアが食い下がってみても、ダグラスは首を横に振るだけでそれ以上は何も言わない。二、三度問いかけ方を変えてみても反応は同じだった。


 アリアは内心でため息をついて、それから言う。


「話す気がないなら別の話をしよう。エントウィッスル侯爵家とダールマイアー伯爵家の関係について、私には元々不思議に思っていたことがある。これを見てくれ」


 アリアはパチンと指を鳴らし、テーブルの上にある物を出現させた。


 目の前に現れたのは、折り畳まれた大判の紙と、年季の入った分厚い本。どちらも書庫に保管されていた物だ。


「これは?」

「ダールマイアー伯爵家の家系図と、その来歴について記された本だ」


 ダグラスの問いに即答し、アリアは大判の紙を広げる。


 現れた家系図に、ダグラスとフィリベルトが目を落とす。


「ダールマイアーの婚姻がどういったものか知っているか?」

「いや」

「いいえ、知りません」


「ダールマイアーが婚姻を結ぶ相手は基本的に、軽度の罪を犯した者や、罪を犯したわけではないが何らかの問題を起こし社交界に出られなくなった貴族と罰則的な婚姻を結ぶか、金策に困った貴族がダールマイアーに娘や息子を売ったり、邪魔になった庶子を売り付けるか、素行や性格に過度に問題があるせいで貴族間で婚姻を結ぶに至らなかった者、あとはひどく金銭に困っている平民などだ。あらゆる悪評が飛び交っているせいでダールマイアーと婚姻を結びたがる者はいない。だが、国としてはダールマイアーの血筋を絶やすわけにもいかず、自然とこうなった」


 ダグラスとフィリベルトの反応はない。静かにアリアの話に聞き入っているようだった。アリアはそのまま話を続行する。


「ダールマイアーとの婚姻は特殊でな。ダールマイアーに娘や息子を差し出した家には国から補助金が入る。ほぼほぼ罰則的な婚姻や、金銭目的の身売りに近い婚姻だ。だから、私たちダールマイアーの者は婚約者を持たない。……いや、婚約者を持つことができないからこのような形になった、というのが正しいな。しかし、例外が存在する」


 アリアは家系図に書かれた名前を何箇所か指差す。


「彼らには共通点がある。何だかわかるか?」

「いや」

「わかりません」


 ダグラスとフィリベルトの返答を聞き、アリアはダールマイアー伯爵家の来歴が記された本を開いた。それから、今しがた指で示した名前の人物たちが載っているページを順々に開く。


「彼らは皆、エントウィッスル侯爵家からダールマイアー伯爵家に嫁いできた者たちだ。それも、元々婚約者の立場にあった。そして、彼らと婚姻を結んだダールマイアーの者は、皆看守としてグリニオン監獄に入っている」


 ダグラスが来歴が記された本を手に取り、内容を確認し始めた。


 アリアはその様子をただ黙って見る。ややあって、話を続けた。


「エントウィッスル侯爵家とダールマイアー伯爵家には、表向き頻繁な交流はない。あくまでもエントウィッスル領を治める領主と、エントウィッスル領に属する貴族としての付き合いだけで、それ以上でも以下でもない。エントウィッスル侯爵家は公明正大な家門であり、後ろ暗いことなど全くない。ダールマイアー伯爵家と婚姻を結ぶ利点も理由も何一つないにもかかわらず、過去に何度も婚姻を結んでいる。それがどうも奇妙に思えて、ずっと心に引っかかっていた。だが……この婚姻が、当代の看守の後継に黒紋を持つ者が現れず、本当の『結界の魔法』の使い手であるエントウィッスル侯爵家の者に代わりを務めてもらうための婚姻だとすれば納得がいく。グリニオン監獄に結界を張るための婚姻だ」

「なるほど」


 ダグラスが来歴の本を閉じ、アリアに渡す。アリアは来歴の本を受け取ると、指を鳴らして家系図と共にこの場から消して書庫に戻す。


「すると次の疑問が浮き上がってくる。そもそもエントウィッスル侯爵家との婚姻は、エントウィッスル侯爵家が本当の『結界の魔法』を受け継ぐ家系であることを知っていることが前提だ。先ほどの「隠し通すことに多大な労力を割いた」という発言に加えて、この国が把握していないことからしても、本当の『結界の魔法』は秘匿しなければならない魔法だということになる。その秘匿しなければならない魔法を持つことを、はたして何の信頼関係もない相手に教えるだろうか?」


 ダグラスとフィリベルトは何も言わない。アリアの言葉をじっと待っている。


 アリアはたっぷり間を置いてから、再度開口した。


「秘密を漏らさない相手だと確信を持てるまで——信用に足る相手だと判断できるまでは教えないはずだ。ダールマイアー伯爵家とエントウィッスル侯爵家の関係性は、表向きには一領地の領主とその領に所属する貴族だが、それだけではない。私は知らなかったが、恐らく遥か昔から秘密裏に交流して深い信頼関係を築いてきたんだろう」


 本物の結界の魔法を持つエグルストン伯爵家の血筋がエントウィッスル侯爵家に成り代わっていることをダグラスが肯定したことから、オーレリアが調べてくれた史実はある程度真実だと言ってもいいだろう。


 ただ、ダールマイアーの『支配の魔法』を『結界の魔法』とするためにエグルストン伯爵家を意図的に絶やしたという点に関しては、アリアの予測と異なっているのかもしれない。

 そうでなければ、エグルストン伯爵家の血筋が成り代わっているエントウィッスル侯爵家と、エグルストン伯爵家の処刑を行ったとされるダールマイアー伯爵家が深い信頼関係にあるわけがない。

 いずれにせよ、いくら考えようとも確かめようがないことだ。


「だから、父と君が友人であったこともなんら不思議なことではない。魔法が発現しなかったダールマイアーの看守の後継者とエントウィッスル侯爵家の結界の魔法の使い手の性別が違えば婚姻を結び、同じであれば友人として交流する。そして、のちに監獄に入ったダールマイアーの看守の代わりに、エントウィッスル侯爵家の者が結界を張る」

「ええ、その通りです」


 フィリベルトが静かに肯定する。


「エントウィッスル侯爵家とダールマイアー伯爵家は、遥か昔から友好的な関係を築いてきました。エントウィッスル侯爵家の者たちは、あなたたちダールマイアー伯爵家の者たちが噂されているような恐ろしい方々ではないことを知っています。エントウィッスル侯爵家の秘密を守るためにあなた方を表立って庇うことは最後まで出来ませんでしたが……」


 ふっとフィリベルトが笑みを濃くする。


「しかし、今お話いただいた内容だけでは義父上が魔法を持たないと断定できないのではないでしょうか」

「それはそうだ。私の話はまだ終わっていないからな。父がダールマイアーの魔法を持たないのだと判断した理由は、父が定期的に大量の黒染草を購入していたからだ」

「黒染草……」


 フィリベルトがぽつりと呟き、あごに手をやる。

 何かを考え込んでいるような仕草だが、アリアが何を言いたいのかすでに理解したか、そうでなくともまもなく理解するだろう。


「君のことだ、黒染草は知っているだろう?」

「ええ。黒色の染料になる植物です。ガルデモス帝国南部の一部地域のみに自生する多年草で、茎から絞り出した汁が染料となります。しかし、糸や布、紙などを始めとするどのような素材にも定着せず、人体にしか定着しない。また、人体には定着するものの、定着する期間が短いため二月ほどしか持ちません。少し触れただけで即座に定着し、一度定着すると二月経って自然と色が落ちるまで色を落とす術がない。さらに、専用の搾汁機を使用しても一本の黒染草から取れる搾り汁はせいぜい数滴程度。人体にしか定着しないために一度は髪染めとして使用しようとしましたが、誤って肌につくと取れないことや、髪を染めることができるくらいの量を採取するのが非常に手間であることから、黒染草の髪染めは流通しませんでした」

「そう、その黒染草だ」


 やはり知っていたかと内心で独りごちながら、アリアは頷く。想像以上の答えが返ってきた。


「記録によると、父は二ヶ月に一度の頻度で大量の黒染め草を購入していたようだった。毎回決まった量だ。執務室兼書斎にある絵画に描かれた姿を見る限り、父は毛量が多い。いくら大量に購入するとはいえ、その量はとてもではないが父の髪を染め切るには至らない量だった。人体にしか定着しない染料で染めていたのが髪ではないのなら、何を染めていたのか?」

「手ですね」


 答えが秒で返ってくる。フィリベルトの口元は緩く弧を描いたままだ。


「そう、その通りだ。父は歴代最弱のダールマイアーだと言われていた。父の黒紋は指の第一関節までしかない。そして、父が購入していた黒染草の量は、刷毛や筆を使って第一関節まで塗る程度なら十分な量だ」


 さもなければ、黒染草を購入する意味がない。

 用途が限定される植物を、二ヶ月に一度大量に購入しておきながら何にも使わないなどあり得ない。

 購入していたからには使用していたはずだ。人体にしか定着しない黒色の染料であるから、人工的に黒紋を作っていたとしか思えない。


 恐らく父は、幼い頃からそうやってこれまで生きてきたのだ。


 グリニオン監獄以外でダールマイアーの者が魔法を使う機会はない。手を黒く染めるだけで誤魔化すことは十分可能だったのだろう。


 思えば、執務室兼書斎に飾ってあった絵画は父だけが満面の笑みを浮かべていた。父だけが笑っているのは、支配の魔法を持たず魔力作用の影響を受けていないことを示唆していたのではないか。作者の意図は不明だが、そう思わずにはいられない。


「だから、義父上は魔法を持たないと?」

「ああ」

「なるほど」


 それきりフィリベルトは口を閉ざした。納得したのかそうではないのかまでは読み取れない。


 何かを言い出すかと待ってみたが、フィリベルトもダグラスも一向に口を開く気配はない。


 沈黙が落ちる。先に痺れを切らしたのはアリアだった。


「フォーマルハウト、聞きたいことがある」


 アリアが話題を振ると、ダグラスが「ああ」と小さく応じる。アリアが何を切り出そうとしているのか、おおよその話題を察したらしい。真剣な瞳がアリアを見つめる。


「君が、父を殺したのか?」

「殺していない」


 即答だ。ダグラスの眉間にわずかに皺が寄り、その声には怒りが滲む。


「ヴィリバルトを殺したのは、断じて私ではない」

「その場にはいたのか?」

「ああ」


 ダグラスは頷く。さらに眉間に皺が寄る。


「君ではない第三者が殺した?」

「そうだ」

「では、誰がやった?」


 アリアが問いかけた瞬間、ダグラスは苦虫を噛み潰したような顔をした。それきり黙り込む。固く閉ざされた唇が動く気配はない。


「父と、君と、あとは誰がいた?」


 質問を変えるも、ダグラスの反応は変わらない。心底不快そうな顔で、固く口を閉ざしたままだ。


「なぜ答えない。無実を証明したいのなら私に状況を説明するべきではないのか?」


 それでもダグラスは答えない。


 そうして長々と黙ったかと思えば、おもむろに右手をテーブルの上に置いて中指でテーブルを叩き始めた。


 人差し指の方が動かしやすいだろうに。変わった癖だな、とアリアはダグラスの手元をちらりと見る——整えられた爪と、中指の付け根にほくろが一つあるのが見えた。


「で?」

「……答えることはできない」

「答えたくないと?」

「答えられない」


 まるで、本当は質問に答えたいのだとでも言いたげに、ダグラスは一つ一つの言葉を強調して言う。表情や声音から、本意ではないことが伝わってくる。


 何かがある。


 第三者が——父を殺したであろう誰かが、ダグラスに圧力をかけたのだろうか。


 この場にはアリアとフィリベルトとダグラスの三人しかいない。加えて、外部に会話が漏れないようアリアが魔法を施した。それにもかかわらずダグラスが口を割らないのは、アリアを信用していないか、父を殺した『誰か』をダグラスがよほど恐れているか、あるいは制約の魔法を使われた等の理由で物理的に答えられないかだろう。


「一つだけ答えられるとすれば、あの場には私とヴィリバルトの他に二人いた。それだけだ」

「二人」


 わかったようでいて、実質何もわからないに等しい答えだ。


「それはこの監獄の囚人か?」


 ダグラスは無言でアリアを見つめる。アリアは、ダグラスの鋭い目線を真正面から受け止めた。


 ——肯定(・・)だ。


 何も言わないが、ダグラスが肯定しているのだと悟る。


「差し当たり、君がこの監獄の中において最優先で手綱を握らなければならない者がいる。君が奴を抑え込めるかどうかによって、君を含め我々の生死が決まると言っても過言ではないだろう」


 突然の話題の転換に、アリアは内心で首を傾げる。わざとだろうか。それとも、話が繋がっているのか。


「……? どういうことだ」

「君は、この監獄が大罪人を収監するだけの監獄ではないことに気付いているな」

「ああ」

「むしろ、本当の意味での大罪人を収監することの方が少ないと知っている」

「ああ」


 大罪人と呼ぶほどの凶悪犯は頻繁には現れず、意思一つで相手を大罪人にできるダールマイアーの前では、実際に何をしたのかはあまり問題にはならない。


 さして罪のない者や無実の者を大罪人として収監したこともあるだろうし、他の貴族が政敵の排除にダールマイアーを利用していた過去もあるだろう。ヴィリバルトは誰でも大罪人にできることを逆手に取り、身元を隠す必要がある者を匿うことに協力していた。


「だが、今この監獄には本物の大罪人がいる」

「フィリベルト以外に?」


 『エントウィッスル侯爵家のあれ』がフィリベルトの手によるものではないとアリアが気付いたことは、フィリベルトが大罪人を装う理由がわからない以上、まだ開示しないほうがいい。


 皇帝陛下に買収されたフィリベルトが魔力染みによる遅効性の毒でアリアを殺そうとしているにしろ、それはフィリベルトが大罪人のふりをする理由にはならない。


 皇帝陛下とフィリベルトが接触したのはフィリベルトが投獄された後のことだからだ。フィリベルトが大罪人のふりをして投獄された理由は、別に存在する。


 そう、フィリベルトがアリアにとって敵なのか味方なのかは、まだ判断できない。むしろ、皇帝陛下の買収に応じたのなら敵寄りだ。


 アリアの問いに、ダグラスの眉がぴくりと動く。フィリベルト側へとわずかに体が動くも、すぐに動きを止めてアリアを見つめた。


「そうだ」


 ダグラスは緊張した面持ちで言葉を続ける。


「わかっているだけでも監獄外で三十人の人間を殺害した大罪人であり、最も古株の囚人」

「誰だ」


 テーブルに乗せられたダグラスの右手中指が、一際強く机を叩く。


「アルコルの爺さんだ。奴の本名はアラステア・ケメーニュ・ノイラート。正真正銘の大罪人、頭のいかれた凶悪犯だ」

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