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この世界でもう一度。  作者: にらニラ炒め
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第一話 『必ず私を』



『──では、必ず私を──』


             ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「──へぁ?」

 突如、眼の前で起こった異常すぎる事態に、思わず変な声が漏れてしまう。だが、そんな些細なことは頭の片隅にすら入らないほど、事は常軌を逸していた。

 視界に映るのは、こちらの存在を意に介さず行き交う人々に、宙を我が物顔で占領しながら世界を照らす太陽。

 ……先ほどまで、その位置には月があったはずだ。人だって、数えるほどしか見当たらなかった。

 異常事態はそれだけでは終わらない。

 人々の髪が、服が、明らかに現代の日本で見られるような代物ではなかった。

 髪にはありとあらゆる色が着いていて、中には動物の耳が生えているものさえある。

 もちろん。現代の日本でも、髪を染めてカラフルにしている人も多い。しかし、それをしている人間の比率がおかしい。むしろ黒髪の人間が見えない。

 服だって、何やら衛兵のような、変な格好をしている人間までいる。

「何が起こって…」

 人攫いか、はたまた一般人へのドッキリか何かなのか、と脳内でこの状況を引き起こした原因を挙げていく。

 だが、人攫いにしては手足の自由が効き過ぎているし、どれだけ待っても「ドッキリ大成功!!」のプラカードは出てこない。

 原因が挙がっては消え、挙がっては消えを繰り返し、もはや残り一つしかなくなってしまった。

 だが、それが起こりうる可能性は限りなく低く、……というか現実的に考えれば、それが起こることなどありえない。

 そんな突拍子もなく、考えるのも馬鹿馬鹿しくなるような、そんな可能性の一つ。

 しかしそれは、今自分に起こっている状況に会いすぎているし、否定のしようもなかった。

 ──それは、昨今の創作物において使い古された、多くの人が一度は「自分にも」と、想像してやまないファンタジーの代表。

「……異世、転移って…やつなのか…?」

 と、信じられない「原因」を特定したのだった。

 

             ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


 ここで一つ、とある少年を話をしよう。

 その少年は地球という惑星の、日本という国に産まれた、中肉中背という言葉が合う現在17になる高校生で、名を岸花創斗(キシバナ ソウト)という。この物語の主人公である。

 そんな華々しき主人公は、今…

「どうすればいいんだよ…これ…」

 日の当たらない路地裏で、頭を抱えていた。

 事を異世界転移と特定してから、ソウトは情報収集に励んだ。

 道を通る人に話しかけ、街を見て回って…。わかった事といえば、言葉は通じる。だが、文字が読み解けない。街並みは典型的な中世ヨーロッパ風とういことくらい。

 そこでソウトの異世界ライフは頓挫していた。

 理由は単純。何をすればいいのかがわからないからだ。

 こういう話にありがちな、召喚者などはいないし、女神様に「魔王を倒してくれ」などとも言われていない。唐突に起こりすぎて、明確な目標がないのだ。

 こんな時に寄り添ってくれる仲間も用意されてない。

 早速、異世界という異邦の地がソウトに牙を向いていた。

「ってか、大体なんで俺なんだ?俺なんか悪いことしたか?」

 異世界転移への興奮さえ、既に現実の不条理への悪罵へと変わってしまっていた。

「クソ…うだうだ言っててもしょうがないか。ひとまずこの世界の第一目標でも決めよう」

 せっかくの異世界なのだ。何かそれらしいことをしたい。

 異世界と言えばなんだろう。─やはり、魔法に剣。仲間との冒険、友情、そして恋。ドラゴンなんかとの壮絶なバトル──。

「よし!決めた!キシバナソウトの異世界ライフ。その第一目標は──冒険者になること。に決定!!」

 そうして、ソウトはようやく、異世界での第一歩を踏み出した。

 高らかに宣言してしまったので、周りからの痛い視線を受けながら。

誤字、脱字の指摘はどんどんお願いいたします。

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