ベル
「さて、どうしたものか」
我はスイカが居た湖面を見ながらそう呟く
「止めをさしてくる?」
アクアは負けた腹いせをしようとしているのだろうか
「そもそも、魚も戻っていないしねぇ」
ミレも困ったように手を頬に当てている
「じゃあ、交渉してくる!」
アクアはそう言うと、湖に飛び込む
「ちょっと、人間のままよ!」
ライカが注意するがもう遅い。途中で息が続かなくて戻ってくるだろう
「はぁっ、我が行ってくる」
我はエア・ボールで顔を覆うとスイカの城へ向かった
途中でアクアとすれ違い、我は城へ入っていく
「何をしに来たのじゃ!」
「そう殺気立つ必要はないぞ。話をしに来ただけだ」
しばらく疑わし気に見ていたが、我が何もしないで待っていると、少しは信用したのか奥へ通してくれた
「粗茶ですがどうぞ」
魚の顔をした侍女がコップを置いて行くが、水の中でどうやって飲めばいいというのだろうか
「それで、話というのはなんじゃ?」
「魚を街へ融通して欲しい」
「なんじゃ、そんな事か」
スイカは侍女に目配せすると、侍女は奥へ引っ込み、ベルを持ってくる
「それをおぬしにやろう。ならせば、魚が寄ってくる。好きなだけ捕まえるがよかろう」
我はベルを受け取ると、立ち去ろうとした
「待つのじゃ、本当にそれだけなのか?」
我はこくりと頷く
「そうか・・・」
スイカは安心したような顔をする
我は城を出て皆の所へ戻る
「ベルを鳴らせば魚が来るそうだ」
我はそれをミレに渡す。ミレは試しに振ってみるが、音が鳴らなかった
「騙されたんじゃないの?」
ミレがそういうと、ライカが興味を持ったのか、ベルを手に取る
「これは、マジックアイテムね。おそらく、水中で使うのよ」
ライカはそう言うと、ベルを湖に入れてから振る。すると、山ほどの魚が寄ってきた
「魚が食べ放題ね!」
アクアがさっそく湖に手を入れてシュパッとクマのように魚を獲る。そろそろいいだろうと、ライカがもう一度ベルを振ると、魚は離れていった
その魚をもって街へ戻り、ベルを村人へ渡す
「私がもらっても困ります! こういうのは、領主様にお願いします!」
「めんどくさい」
ノロイはそう言うと、ベルを無理やり村人に渡して逃げた




