スライム退治と封印解除
我はシヴァの拘束を解いた
「シヴァの魔力はどれくらいだ?」
「分からねぇ、ほとんど力が出せないことだけは確かだ」
シヴァは右手に魔力を集めて確かめるが、それがどれくらいなのか測りかねているようだ
「記述によると、初代の呪い人形は99%の魔力を封印するらしいな」
全力の1%か。それなら同じ1%の我がシヴァに勝てる理由が分かる
「1%だと……。その封印とやらは解けるのか?」
「俺が契約した人形じゃないから封印を壊すか、逆に人形を核として封印するかの2択だ」
「封印はやめてくれ!」
シヴァは再度お願いした
「その額の目ってなーに?」
アクアがシヴァのおでこを指さす
「これか? これは魔法を無詠唱にできる魔眼だ」
シヴァは自慢げに話す
「その目が弱点にもなっている。潰せば弱くなるぞ」
「貴様がそれを言うのか! 貴様のせいで、そうだ、貴様のせいでこんな姿になったのだ!」
「目をつぶされて負けて地上に帰ってどうどうと寝ていたお前が悪い」
「ぐぅっ、だがっ!」
「お前が悪い」
シヴァはがくりと崩れ落ちた
「それで、どうするんだ?」
ノロイはキールに聞く
「封印は止めてくれ!」
シヴァはがばっと顔をあげると、再度頼み込む
「危険は無いのか?」
「さっきの実力なら、青いオーガと大して変わらんと思うぞ」
我がそう言うと、青いオーガを危険と取るかどうか迷っているようだ
「判断に困る。動けないようにしてから殿様の所に連れて行きたいんだが、いいか?」
「50%で死刑?」
アクアが適当なことを言うが、それを聞いてシヴァは逃げ出そうとした
「アイス・バインド・ダブル」
体と足に氷のツタを絡ませて動きを止める
「やめろ! 離せ!」
シヴァはじたばたする
「暴れるな。暴れるとひたいの目をつぶすぞ」
我がそう脅しをかけると、観念したのか大人しくなった
馬車に乗らないので、他の魔物と同様に馬車につなぐ「おいっ」とか「こらっ」とか聞こえるが無視だ
城に着くと、どろだらけになっていたので、クリーンで綺麗にする
我が担いで殿様のところまで連れて行った
「ふむ、これが封印されていた魔物か」
「魔物じゃねぇけど、封印されていたのは俺様だ」
殿様に、いままでのなりゆきをキールが話す
「で、どうしたらいいか分からないので連れてきました」
「最後の封印された魔物を退治してもらうのはどうだ?」
「倒したら解放してくれるのか?」
「倒せたら、な」
「だったらやるぜ!」
「じゃあ、今回は俺は留守番でいいか」
ノロイのやる気のない声がした
「シヴァが倒せないかもしれないぞ?」
少なくとも、同等の強さを持つ魔物が封印されているはずだ
「任せる」
どっちにしろ馬車には全員が乗れないので、ノロイが留守番する事になった
「ここが最後の封印の地か」
まるで湿地の様にどろどろしている
「私、馬車に居るわ」
「私も」
ライカとミレは降りたくないようだ
「私は平気よ!」
アクアは汚れを気にしないらしい。キールは嫌々ながら、草履をぬいて裸足になった。我とシヴァは足を魔力でコーティングしている
キールは沼の前にある祠から鏡を取り出すと、札をはがした
すると、巨大なスライムが現れた
「たかがスライムか、燃やして終わりだな」
そう言うと、シヴァは無詠唱でフレイム・ピラーを使い、攻撃した
しかし、スライムは沼に逃げて火を消した
「ちっ場所が悪いな」
スライムが、体を触手の様に伸ばして取り込もうとしてきた
キールと我とシヴァはサッと躱し、アクアは捕まった
スライムの体内に捕らわれたアクアは、だんだんと溶かされていく
あっという間に骨とネックレスとトライデントだけになった
「おい! 一人やられたぞ! いいのか!」
シヴァはアクアを助けなかった我達に問いかけた
消化しきれないと判断したスライムは、沼のほとりにペッとそれらを吐いた
「大丈夫だ」
我がそう言うと、骨に神経が絡まり、血管が再生し、筋肉が復元していく。皮膚まで再生すると、元通りになった
「お前、人魚だったのか」
上半身裸で、下半身が魚のアクアを見てシヴァは呟いた
「私は不死身よ!」
アクアはトライデントとネックレスを拾うと、ネックレスを首にかけた
「馬鹿者! 代わりの服は無いぞ」
素っ裸のアクアは、その辺の葉っぱを拾うと、胸と股間にペタリとつけた
「お前がいいならそれでいい」
さて、スライムの方はどうするか。スライムは、餌が再生したことを喜んでアクアをもう一度取り込もうとする
「アイス・コールド」
我はスライムを固めることにした
伸ばされた触手がこおり、体も段々と凍っていく
「俺様が倒す!」
シヴァは巨大な岩を空中に浮かせると、スライムにぶつけて粉々にした
「これで目標達成だな」
我達は馬車にもどろうとすると、足元にバラバラになったスライムが集まってきた
我は「ウィンド・フライ」を使って飛びあがって回避するが、シヴァが捕まった
「ぐああぁ!」
シヴァの足が溶かされていく。体は人形なので、人間みたいにすぐに溶かされる事は無いが、完全に溶かされたらどうなるのだろうか?
「飛べ! シヴァ!」
シヴァは無詠唱でウィンド・フライを使うと、スライムはブチッと千切れて落ちていく
「ミドル・ヒール」
我がシヴァを回復させると、きちんと治った
「悪いな、油断した」
完全消滅させるには、グラビディ・ボムあたりを使うしかないが、今の我では魔力を溜めるのに時間がかかる
「ちぃ、俺には無理だな」
再生しつつあるスライムを刀で斬っていたキールは、スライムにダメージが無いうえに刀が少し腐食したので離れた
「シヴァ、アクア、時間を稼いでくれ」
「分かったわ!」
アクアはトライデントをスライムに突き刺すと、もう一度粉々に飛び散らせた
「危ねぇ! こっちに飛ばすな!」
キールは文句を言いつつさらに離れる。シヴァは、細かくなったスライムをアイス・フリーズで固めていく
うねうね動くスライムを見つけては凍らせて、集める
「よし、魔力が溜まった。グラビティ・ボム」
集められたスライムは、一か所に超圧縮されると、爆散した。さすがのスライムもここまで細かくなると再生できないようだ
「そういえば、キールからどうやって封印したのか聞いてないわ!」
「そう言えば言ってなかったな。でも、封印した時も同じように凍らせて封印しただけみたいだぞ。砕いても倒せなかったみたいだからな」
「なーんだ」
帰る途中にアクアの服を買ってから城に戻った
城の前に、アヤメが待っていた
「ごくろうであった。おかげで、封印が解けたわ!」
そう言うと、アヤメから9つの尻尾が生えてくる
「お主の正体はキツネだったのか」




