アクア死亡?
「階段、どこにあるんだろうな」
とりあえず、3階近くには階段は無いだろうと、離れるようにして探しているが、どこまで行っても砂ばかりで、どこへ向かっているのか、どこから来たのかすら分からなくなってきた
「あそこに湖がある!」
「陽炎だろ?」
アクアが指さした方向に、ゆらゆらゆれる水たまりの様なものが見えるが、ノロイが言うように、暑さによる陽炎だと思う
「行ってみる!」
アクアは走り出すが、いつまで経っても追いつけないようで、そのうち砂に足を取られて倒れた
「うぅ、追いつけない」
「だから言ったんだ」
それからしばらく歩き続けると、ビルが声を上げた
「あれは、湖ですか?」
「それは陽炎って言うのよ!」
アクアはさっき知った事を自慢げに胸を張って言う
「本物っぽいわね」
ミレが目を凝らすと、その湖はゆれていない
「行ってみる!」
アクアは今度もダッシュしていくと、湖は本物だったようで飛び込んだ
「ぷはっ、階段があるわ!」
アクアが湖から顔を出すと、指さす。見ると、透明度の高い湖の中心に階段があった
「お手柄じゃないか、ビル」
ビルは照れたように頭をかく。アクアが階段に向かって泳いでいくと、急に動きを止めた
「あぁぁぁ・・・」
アクアの皮膚が見る間に緑色に染まる
「毒・・か?」
ノロイが冷静に判断する。すると、アクアの背中に小さなサソリが乗っていることに気づいた
「気を付けろ、敵だ!」
「ウィンド・スピア」
我はアクアの背に乗っているサソリを風で弾き飛ばす。装甲が固いのか、ダメージは無いようだ
ミレがアクアを掴んで岸に連れてくる。アクアは刺されたらしい背中の部分が紫色に変色してきている。激痛が走るのか、アクアは時々ビクッと体を硬直させる
「死ぬことは無いだろ、後回しだ!」
ノロイが叫ぶ。見ると、サソリがわらわらと近づいてくる
「ライトニング・サークル」
我達を中心に、ライカが雷の範囲魔法を唱えるが、効果は薄いようだ。直撃した何匹かだけピクピクしているが、それを踏み潰すようにどんどんサソリが近づいてくる
「アイス・ピラー」
我は氷で物理的に閉じ込めると、数十匹のサソリは動きを止めたが、時間稼ぎにもならない
「あ、エビの味がする」
エリザはいつの間に食ったのか、もぐもぐとサソリを食べている。毒は平気なようだ
「これは、ポイズンスコーピオンね」
アクアの様子を見ていたミレがそう判断した
「ダンジョン以外でも見られる普通のモンスターよ。刺されると、毒で1時間もしないうちに死ぬわ」
1匹当たりの毒の量は大したことが無いので、すぐには死なないようだが、複数回刺されると、それだけで死ぬらしい
「ウィンド・サークル。治療方法はあるのか?」
我は近づいてきたサソリを吹き飛ばす
「町に行けば毒消し薬もあるけど・・・。ちなみに、下手に回復魔法を使うと、毒が活性化して逆に悪化するわ」
ふむ、アンチ・ポイズンもダメなのか? とりあえず、毒にヒールはダメらしいな
すると、どこに居たのか、サソリはアクアを刺した
「ぎえぇぇ!」
アクアは絞められたニワトリの様な声を上げて苦しむ
刺された場所がまるでマンジュウの様に赤くふくれる
「あ、おいしそう」
エリザがパクリとアクアに噛みつく。エリザは人魚になったが、すぐに犬に戻る。アクアも物理的な欠損はすぐに治り、そこだけ肌色になるが、またすぐに緑になった
「とりあえず、後は任せた」
ノロイは棺桶に入る。ビルは近くの木の上に逃げている。ライカはちまちまとライトニングで撃退しているが、だんだんと包囲網は狭まってきている
ミレは我に提案した
「あの爆発魔法を使っちゃって!」
「グラビティ・ボムの事か?」
「そう、それ! それしかないわ!」
我は「グラビティ・ボム」を唱えると、サソリは圧縮され、その後爆散する
「あ、もったいない」
エリザはもぐもぐとサソリを食い続けているようだ
「その調子でがんばって!」
ミレは自分にタフネス・ヒールを使いながら、サソリから逃げ続ける
「ウィンド・サークル」
我は吹き飛ばすのと逆に、内側に向かって吹く風魔法を唱えると、サソリを集めて爆散させた
「やったわね!」
ミレがそう言って親指を立ててくる
「これどうするの?」
ライカが指さしたのは、アクアの死体だ
「死んでないわよ!」
がばりとアクアは起き上がる。まだ生きていたようだ
「抗体ができてきたみたい。何とか動けるわ」
確かに、アクアの緑の肌が薄まってきている気がする。アクアの回復を待ってから我達は5階へ向かった
 




