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魔王の名前はマオ
我は改めてノロイを見る。黒い服に黒いコートを着ている。左手には包帯らしきものを巻いているが、怪我をしている様子はない。顔は美形だが、陰鬱そうな気配が漏れている。
「簡単に言うと、今の魔王嫌い、最強の魔王を使って世界征服目指す」
我はこんな頭の悪そうな男に逆らえないのか。
「そういうわけで、しばらく棺桶で寝ていろ」
ノロイがそういうと、我は眠くなって意識が途切れた。
目を覚ますと、どこかの村の酒場だった。
「お前、踊れ」
ノロイが命令すると、我の意思に関わらず、ダンスを踊る。
まるで、人形劇の様なダンスに酒場に笑いが生まれる。
数人の泥酔客が、ノロイにおひねりを投げたようだ。
「よし、これで宿に泊まれるぞ!まお・・・。うん、お前の名前はマオだ」
我にはもっと立派な名前があるが……。
自分の意思とは関係なく踊り続ける自分が情けなくなった。