レイス?
トロールは、ライカの電撃の壁がまるで無いかの様に進んできた。痛覚が無いのか、皮膚が焦げているが、見る見るうちに治っていく
「すごい再生力だな」
「トロールはたとえ手足を切られたとしても再生するわ!」
ミレはモンスターの説明をしてくれる
「ライトニング・スピアー・ダブル」
ライカは両手から雷の槍をトロールの足に打ち込んだ
トロールの足に穴が空いたが、少しバランスを崩しただけで、すぐに再生する
「何か弱点は無いのか?」
「再生力以上にダメージを与え続けるか、一撃で首を落とすか、かしらね?」
「私の攻撃力じゃ無理そうね」
ライカが諦める
「アイス・フリーズ」
我はとりあえず足を凍らせて時間稼ぎをする
トロールは最初は困惑したように、ぎくしゃくしていたが、足を砕いて再生さえて動けるようにした。本当に痛覚が無いらしい
「見ているこっちの方が痛いわね」
「エリザ、あれも食べるか?」
我がトロールを指さして犬状態のエリザに聞く
「えー、まずそうだからパス」
「仕方ない、ウィンド・カッター」
我はトロールの首を落とした。しかし、トロールは首を拾うとくっつけた
「おい、首を落としても死なないぞ」
「……なんでかしらね?トロールじゃないのかしら?」
段々とあてにならなくなってきたな。トロールは近くに落ちていた石の破片を拾うと、投げつけてくる
「きゃぁ、危ないじゃない!」
防げなかったミレが文句を言う。我とライカは魔法で防いだ
「よし、マップの作成が終わったぞ」
「その前に、トロールをどうにかしないと」
「倒せばいいだろ?」
「再生能力が高すぎて、首を落としても死なぬ」
「マジか、じゃあ、俺がやるか」
ノロイは人形を出すと、トロールがさっき砕いた足のかけらをサッと拾うと人形に入れた。そして、首を180度回すと、ゴキリとトロールの首が捻じれた
「これでよし」
しかし、トロールは首が180度捻じれた状態でもこっちに向かってくる
「こいつ、不死なのか?」
さすがに首が捻じれた状態で動くと気持ちが悪いな
「動きを止めるから、心臓を貫いてみてくれ」
「わかった。ストーン・ニードル」
ノロイがトロールを万歳状態で動きを固定し、我が心臓を石の針で貫いた
「ふむ、普通に再生したな」
「おし、無視しよう。凍らせとけ」
「アイス・ディープ・スリープ」
我はトロールを完全に閉じ込めた
「もしかしたら、罠にかかって死なないための対策だったりしてな」
我達はダンジョンの適当さに唖然とした
トロールを無視し、ノロイが作った地図で最短ルートを進む
「レイスか?」
青白い人型の煙みたいなものが宙に浮いている
「冒険者か?」
「しゃべった!!」
「声帯も無いのにどうやってしゃべっているのだ?」
「そこじゃない! なんで霊なのにしゃべるの!?」
「え? 霊でもしゃべるだろ?」
「あんたたちには、常識が無いからもういいわ」
ミレは呆れたように手をシッシと振る
「冒険者なら、この形見を妻に渡してほしい」
段々と霊の輪郭が人に近づくにつて、男性の冒険者に見えるようになった
「俺はバットって言うB級冒険者だ。この探索が終わったら、引退するつもりだったんだ」
「うむ、フラグを回収したのだな」
「フラグ……? よくわからないが、妻に子供もできたから、危険なことは止めてと言われ、この探索が終わったら一緒に暮らそうと言っただけだが」
「見事なフラグ回収ね!」
「……、体はすでにダンジョンに取り込まれてしまい、この指輪だけはと思ったら霊になっていた」
「それだけ強い未練があったのね」
霊は、ミレに指輪を渡す。一番話が通じるだろうと思ったのだろう
「メリッサ……、それが妻の名前だ」
「わかったわ。必ず渡すから」
ミレがそう言うと、霊は「頼む……」と言って消えていった
「あのー」
ビルが申し訳なさそうに声を掛ける
「何よ?」
「メリッサって私の母ですが」
「何ですって!」
「母が私を一人で育ててくれました……」
「まさか、そんな昔の話だったなんて……」
思ってもみなかった結末だが、一応目的が果たせそうなので、指輪をビルに渡した




