S級冒険者
「それで、盗まれた魔石も探しに行くのか?」
「確かに貴重なものだけど、マオが居るなら特に要らないわ!」
その時、入り口の方からすさまじい殺気が迸る
「何者だ!」
見ると、酒場で会った冒険者だった
「まさか、こんなに近くに魔王が居たなんてな」
冒険者が足を踏み出すたびに、ミシリと地面にヒビが入る
「俺は、S級冒険者のカイトだ。冥土の土産に覚えておけ」
カイトは背中の大剣を抜くと、縦に振りぬく。すると、剣気が実体を持って切り裂いていく
「ライトニング・シールド」
ライカはとっさに雷の盾で剣気を防いだが、剣気は盾を切り裂いて尚威力は衰えていなかった
「危ない!ウィンド・シールド」
我はとっさに風の盾を斜めに出すと、剣気を防ぐのではなく、逸らすことに成功した
「ちっ、運がいいな。普通のモンスターならこれで真っ二つなのによ」
「何で私を狙うのよ!」
「エンカって奴が言ってたろ?赤い髪のガキが魔王だって」
「その情報違うから!」
「はっ、そんな嘘に俺は騙されないぜ?ただのガキがマジックアイテムを持っている訳が無いからな」
「ご主人様はガキではありません」
マネは左手の中に仕込まれていた剣を手のひらから出すと、カイトに突き刺す
「なんだこの女、お前も魔王の仲間か?」
「ご主人様のメイドです。覚悟」
マネは右手に仕込んであった弓矢を高速で飛ばすが、カイトは大剣を盾に防いだ
「お前、人間じゃないな?だったら遠慮はしない」
カイトは大剣を構え、常人には見えないほどの速度で距離を詰めると、マネの首を跳ね飛ばした
「マネ!!」
ミレは「なんてことを」と叫ぶが、あれの本体はへその上のアーティファクトだから、大丈夫だろう。実際、倒れることなく動いている
「なんだこれ、気持ち悪い」
カイトは、とりあえず機動力を奪おうと、マネの両足を切断する。マネは、両腕だけで這うように動く
「尚更気持ち悪くなったな・・・、もう動くな」
カイトは洞窟にぶらさがっている石のつららを大剣で切り裂くと、そのつららをマネの胸に刺して地面に縫い付けた
「マネになにするの! ライトニング・ウィップ」
ライカが雷の鞭でカイトを攻撃するが、あっさりとジャンプして回避し、空中で剣気を飛ばしてくる
「ライトニング・アーマー、きゃあ!」
雷の鎧ごとライカは吹き飛ばされた。鎧が消えたので、ライカは気絶したようだ
「思ったより弱かったな。そこのお前たちは仲間か?」
「いや、違うが?」
ノロイが答える。実際、同行していたけど、ライカが勝手についてきていただけで、ここに来たのもダンジョンが面白そうだったからに過ぎない
「じゃあ、さっさと立ち去りな」
カイトは、気絶したライカを縛り上げようと、ロープを取り出す。マネはつららを抜こうと、腕だけでうねうね動いていて気持ち悪い
「仲間ではないが、連れて行かせるわけには行かぬ。なぜなら、ライカは魔王ではないからな」
「あ?どういうことだ?こいつが魔王じゃないなら、誰が魔王なんだよ」
「我だ」
「情報と全然違うが?」
「だから、情報は嘘だと言っただろ。それに、その情報源自体が魔王の四天王だぞ?」
「わけのわからんことを! 邪魔するならお前も倒す」
カイトは剣気を飛ばしてくるが、我は少し右にずれて回避する
「ほぉ、格闘の心得でもあるのか?」
「そんなものはない。ただ、お前の攻撃が遅いから普通に避けれるだけだ」
「ほざけ、これならどうだ」
カイトはめちゃくちゃに剣気を飛ばす。ふむ、めちゃくちゃのようで、きちんと逃げ道が無いように誘導されていたか
「ウィンド・シールド・クアドラプル」
我は4重の風の盾で防ぐ
「確かに、口だけじゃないようだな。ならば、俺も本気を出そう。オーラ・パワー」
カイトから黄色の湯気のようなものが立ち上る
「はぁ!」
今までの剣気が1とすれば、これは10ほどの大きさになっていた
「ウィンド・シールド・オクタプル」
8重の風の盾をも切り裂いて、カイトの剣気が我に届いた
「ぐふぅ」
我の右肩から袈裟斬りで深い傷が出来た
「久しぶりのダメージだな?解放するか?」
ノロイがそういうのも当然で、今の我ではカイトに勝てぬ
「ああ、10%解放してくれ」
「だめだ、5%な」
「何故四天王より低い。こやつは明らかにエンカより強いぞ」
「そうか?どっちにしろ余裕だろ」
「まあ、仕方あるまい。ヒール」
我の傷が一瞬で治る
「なんだと!!」
「あーあ、服が破けたじゃねーか。一応自己再生の魔術はかけてあるけど、大破したらさすがに治らんぞ。全裸になっても知らんからな」
「これ以上ダメージを受けることは無いから安心しろ」
「舐めるな!」
カイトは再びオーラ・パワーを使うと、さっきより少しだけ大きな剣気を飛ばしてくる
「ふむ。盾を張るまでもない」
我は右手の平に魔力を集めると、相殺する
「今度は我の番だな。ストーン・ニードル」
石の針の大きさは洞窟の幅いっぱいだ。回避できまい
「この程度!」
カイトは剣気で切り裂くが、切り裂かれても威力は落ちていないままカイトに当たる
「ぐべはっ」
カイトは、馬車に轢かれたかのように吹き飛んでいった
何で数字がギリシャかって?なんとなくだ!
 




