魔王城
「この馬鹿者が!」
私は魔王城に戻ってきたエンカを怒鳴りつけた
「いきなりなんだよ、親父。なんで怒るんだよ!」
「何故街で無関係な人間にベラベラとしゃべるのだ!」
「情報収集に酒場を利用した事か?情報収集するなら酒場だろ?常識じゃん」
「お前が情報を搾取されてどうする!」
当然、私は私で情報収集をしている。アサシンに探らせたら、ちまたに流れている情報源の大半がエンカだと分かった
「もういい、下がれ」
「それはそうと、面白いやつがいたぞ!」
この娘は、全く聞いておらんな。今に始まったことではないから慣れているが
「はぁ、どういう奴だ?」
無視したら数日間は不機嫌になるからな。めんどくさくても相手をしたほうがマシだ
「あたいを拘束できるほどの魔法使いが居た!」
「ほぉ、お前を拘束できるほどの魔法使いとは、すごい老人だな」
「え?老人じゃないぞ?」
「何?ベテラン冒険者じゃないのか。どんな見た目だ?」
私がよく聞くと、セッカの報告と同じ人物のようだ
「馬鹿者!それが件の奴ではないか!!」
「えぇ!セッカから聞いたのは、ちっこいガキだって聞いたぞ!」
「それは、お前の相手が面倒で、適当な嘘をついただけだろう」
私は頭が痛くなった。四天王同士で足を引っ張りあってどうする
「じゃあ、あたしはもう一回行ってくるよ!」
「よい。アサシンに居場所を探らせるから、お前は大人しく城で待機だ!」
「ちっ、居場所が分かったら真っ先に知らせろよな!」
娘はそう言うと、謁見の間から出でいった
「あらあら、エンカは相変わらずですわね」
どこにいたのか、娘が出てからしばらくして謁見の間にセッカが入ってきた
「セッカよ、エンカにも正確な情報を伝えておけ。そうすれば、今頃件の奴に接触できたものを」
「でも、どうせ負けたんでしょ?伝えるだけ無駄かと思いますが」
「そもそも、戦闘と呼べるようなことは行っていないようだが、エンカが拘束されたと言うからには、おそらく戦っても負けていた可能性が高いな」
「魔王様、我々のレベル上げをしなければ成らないのでは?」
「やりたくはないが、魔界から強者を召喚するしかないか」
私は謁見の間のカーペットを部下にはぐらせると、下から魔方陣が現れた
「これは昔、魔界と地界を行き来していた魔方陣だ。最近は使われることが無かったが、久しぶりに使うとしよう」
「初めて見ましたわ」
「では、行くぞ」
私は魔力を込めて呪文を唱える。すると、翼が12枚もある悪魔が召喚された
「吾輩を召喚したのはお前か?」
「ばかな、魔神クラスの悪魔だと!!」
立ち上るオーラは、正直私よりも遥かに上だ
「吾輩の名はサタン。魔界も平和になって退屈していたところだ、暇つぶしに願いを言え」
……これは、絶好の機会か?
「それでは、小島に封印されていた古代の魔王が復活したらしい、そいつを倒してくれ!」
サタンは、「ふっ」と笑顔になる
「吾輩、ちょっと用事を思い出してしまった。さらばだ」
そう言うと、サタンは魔方陣を起動させて魔界へ帰った
「え?魔神すら逃げるようなやつなの?」
謁見の間に長い長い沈黙が続いた




