魔方陣
「それで、こやつをどうすればよいのだ？」
老人の姿が仮で、本当の姿が虎の方らしく、虎のまま気絶しているので大きいままだ。
「私に任せて、魔方陣に封印するのよ」
エリザがそう言って地面にさっそく魔方陣を描き始める。風雨で簡単に消えないように魔力を込めながらの作業だ。
「魔方陣はここでよいのか？」
「本当なら、きちんと東西南北のほうがいいんでしょうけど、ここ自体が結構西よりだから大丈夫よ、きっと」
結構いい加減なようだ……。まあ、２度手間にはなるが、だめなら場所を移して再封印すればよいだけだろう。
エリザが地面に魔方陣を描き終わり、その中心に白虎を据える。魔方陣を起動し、白虎は気絶したままその魔方陣に吸われていった。きちんと発動しているようで、かすかに魔方陣が光っている。
「これでいいわね。それじゃあ、西の魔王を倒しに行きましょうか。方角はこのまま西ね！」
エリザが楽しそうに西を指さす。エンカが悔しそうな顔で立ち止まる。
「どうしたのだ？」
「あたい、全く力になれてないのが悔しくて……」
「それなら、魔王を倒したら隷属させちゃえばいいんじゃない？ 魔王の力の半分、いえ、最大で８０％は奪えるわよ？」
「なるほど、簡単に強くなるには良い手だ。ただ、その手は自分より格上には使えぬ手ではないか？」
「当然、魔王を倒すのは別の人よ！」
「……まあ、そうであろうな」
具体的な名前は出なかったが、ほぼ我がやることになるだろう。ただ、エンカも四天王の一人だ。魔王とそんなに強さの差が無いのであれば、一人魔王を倒せば後の魔王は余裕かもしれぬな？
「それはそうと、白虎の折った牙をくれ。その牙なら、いい呪具が作れそうだ」
「エルダートレントよりよっぽど上の素材ね。それなら、もう一本の牙も折っておけばよかったわね」
ライカがそう言ったが、それはあまりに可哀そうであろう。いや、我が回復しながら折れば大量に……？ やめておこう。それこそ拷問以外の何物でもない。
「さて、さっさと魔王の元へ向かうぞ。と言っても、ここより西は山しか見えぬが」
「えーっと、地図によるとその山の山頂付近が丁度魔王城っぽいわね」
「その地図はどこで手に入れたのだ？」
「戦闘中に、その白虎の住処らしき小屋をあさってたら見つけたの」
戦闘中、ミレの姿が見当たらないと思ったらそんなことをしていたのか。まあ、目的地がはっきりしたという事で良いだろう。山なら、飛んでいけばすぐだな。
「あ、注意書きがあるわ。魔力の乱れにより、山の付近では飛行魔法が使えません、だって」
「仕方ない、それならば行けるところまでは飛行魔法で行こうではないか」
「いえ、今日は近くの村で休みましょう。地図によると少し行ったところに村があるわ、そこで話も聞きましょう。飛んで行って、急に墜落とか嫌よ」
「我は大丈夫だが……」
「俺も呪具を作りたいし、村に行くぞ。さあ、この辺の食い物はうまいのかな？」
食い物の話を出されては、行かないわけにもいくまい。我達は近くの村へ向かった。
