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勇者が世界を滅ぼす日  作者: みくりや
第一部 魔王代理
9/202

ルシファーの秘密

前回までのあらすじ


ベルゼブブの村を視察して、悩みを解決。復興は順風満帆のようだ。



 しばらく経って、施策の結果も少しずつ出始めてきている。

 ルシファーは毎日きちんと報告してくれているから、その成果は如実に見て取れた。



 ベルゼブブは村の人たちと交流できるようになって、課題を自分達で解決できるようになっている。

 彼が対処できない問題はしっかりと相談にも来ていたから、もう心配はないだろう。




「アーシュくん! すごいね、キミ! 働き手が減っていたのに、収穫量が170%まで増えているよ!」

「やったね! ルシファーが頑張ってくれたからだよ」

「……えへへへ」



 ルシファーはすこし顔を赤くして照れている。以前は褒められることもなかったのだろうか。

 その様子はまるで可憐な少女の様だった。中性的な顔立ちは多くの男たちを誤解させたはずだ。



「すごい! アーシュすき~」

「ずるい!」



 その報告を横で聞いていたミルが飛びつく。そしてアイリスが怒る。最近のいつもの光景。


 魔王領の復興も順風満帆だ。







「あ、あの……」

「ん? どうしたの?」

「っ! うん……ははは」



 さっきからルシファーの様子がおかしい。顔を逸らしているが耳が真っ赤だ。

 いつも軽口で、するりと確信を避ける彼にしてはとてもめずらしい。



「む~嫌な予感的中!」

「……ええ」



 二人には理由がわかっているようだ。

 これが交流能力の差なのだろうか。ボクに信じられる友人がいないのも頷ける。

 でもいじけていても仕方がない。苦手なりにここは打って出る。



「ねぇルシファー。時間があるならどこか一緒に遊びに行く?」

「え!? い、いいの?」

「いつもみんなの為に頑張ってくれているしさ。息抜きしようよ」

「アーシュ!」



 ルシファーが目をして輝かせている。よほどうれしいようだ。



「確かにルシファーは頑張ってるし」

「そ、そうね。ご褒美は必要よね」



 ボクが出した方策を彼はとても気に入ってくれた。そしてとても頑張ってくれて、周囲もそれを評価している。

 ちゃんと労ってやりたいし、たまには男同士での交流も良いだろう。



「行きたいところはある?」

「うん! あるよ!」

「じゃあ明日はボクたち二人で遊びに行くか!」

「わ~やった~!!」



 ルシファーは手を上げて喜んでくれている。誘った甲斐があった。いつもは見せない無邪気な顔は、彼らしくてとても好ましい。



「ま、まぁ一日ぐらいなら……」

「……つけるわよ」

「え?」



 アイリスとミルは何かごにょごにょと、内緒話をしているのが気になった。


 ……嫌な予感がする。








 次の日の待ち合わせ時間。

 今はA地区のアルマークの町の、中央にある噴水前に来ている。


 アルマークの町は露店やお店がたくさん並んでいて、沢山の人が買い物をしていた。そう、ここでは王国通貨が出回っているのだ。

 魔王討伐後、統制を始めてから急に栄えはじめたという。これは裁量権を与えた首長の成果ともいえる。

 




 娯楽施設はさすがにないかと思いきや、なんと見世物小屋があった。

 そこでは題目はすくないが、吟遊詩人から伝えられたお芝居が見られるという。




「おまたせ……まった?」

「ううん。いまきたとこ……ろ?」



 え?



 ルシファーと待ち合わせしたはずだけれど、目の前の凄く奇麗なホワイトブロンドで二つ結びをしている美少女はいったい……。



「な、何? ……へ、変かな?」

「……かわいい」

「っえ! …………え? うそ……うれしい」



 ええー? なにこれ夢?



 ボクは夢を見ているようだ。



「夢じゃないよっ!」



 ほら、考えていることに突っ込みが入るし。



「アーシュ! はやく普通にもどりなよ」

「はっ! あまりに可愛くて、頭飛んでた」

「も、もうそれはいいから! ボク、恥ずかしいって」

「あぁ。でもルシファーって女の子だったの?」

「えぇ……そこから?」



 ボクの認識は甘かったようだ。思い返してみれば、ミルとアイリスは気が付いていた節がある。

 それどころか気づかないボクのことをおちょくっていた。



「ご、ごめんルシファー」

「ううん。じゃあルシェってよんで? 親しい人はそう呼ぶんだ」

「もちろん。じゃあいくかルシェ!」

「うん! アーシュ!」



 ニカッと笑ってボクの後に付いてくるルシェ。

 あの優秀で精力的に凛々しく仕事をこなしていたルシファーは、今や完全に女の子、いや美少女だ。


 十五歳になってもこんな経験は初めてで、完全に浮かれていた。浮かれていたから周囲の警戒を完全に怠っていた。










 アイリスたちは――




 ギリギリギリギリギリギリギリギリ~!!



 隠れている店先の柵の柱杭を握り潰すアイリス。



「ルシェ!! アーシュ!! ですってぇ!!」

「ア、アイリスこわ~い」

「だってだってだってだって! 女の子の格好でくるとは~!」



キュルキュルキュルキュル



「……くるしっ……しんじゃうから‼」



 思わずミルの首まで絞めてしまう。一夫多妻もよくある悪魔族にはめずらしい嫉妬深さである。



「こうなったら邪魔していやる!!」

「……けほけほ。どやって?」



 人差し指を立てて、先端に魔力を込める。



「……この魔弾で……」

「それやったらルシファーの頭がスイカみたいに粉々になるでしょ!」

「て、手加減するわ」

「それの手加減ってあるの? ……あ、追わないと見失っちゃうよ」



 後を追いながら、いつの間にかミルの口の中いっぱいにポテトガレットが詰め込まれていた。


 ……もぐもぐもぐもぐ。












「このアイスっていうの。とってもおいし!」

「あぁボクは初めて食べたよ」



 王都で流行っている『アイスクリーム』という冷たいお菓子を食べ歩きしている。


 ミルも言っていた仲良くなる方法を今、実感している。こんなに楽しかったのなんていつ以来だろうか。


 ルシェの息抜きが目的だったけれど、なんだかボクのほうが楽しくなってきている。


 今度はアイリスとも一緒に来よう。




 アイスクリームを食べ終わるころにはお芝居小屋に到着する。


 中へ入ると、幕で仕切られて外音が入ってこないように工夫されていた。

 大勢の観客が、今か今かと始まるのを待っている。



「ルシェ。ここにすわろう」

「うん! すっごい楽しみ。どんなお話かな?」




『 1万年の恋 』



 舞台袖にはそうお題が張り出されていた。

 恋を題材にするなんて随分と情緒的だ。


 ボクがアイリスに一目ぼれをした時には、幻想的な月明かりと相まってとても感動した。

 あれほどの衝撃があるとは思えないけれど、とてもたのしみだ。



「ルシェも恋物語は好き?」

「……うん! ボクも吟遊詩人に語られるような恋がしたいなぁ……ちらり」


 ちらりって口で言っている。

 いつも女の子の格好をしていれば、すぐに実現するんじゃないだろうか。



「好きな奴とかはいないの?」

「少なくともボクより強い人がいいなぁ……ちらり」



 ちらりってまた言っている。

 ルシェは悪魔族の中で魔王やアイリスに次いで強いはず。つまり現時点でボクしかいない。


 彼女なりのアピールだと思うのは自意識過剰だろうか。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 非処女はベリアルだけかな?
[一言] 男同士で楽しくお出かけと思いきや、ルシファー女の子と言う(*´艸`) いや、いいじゃないかハーレム。 贅沢言っちゃいかんぞ('ω') 案の定、アイリスはこっそりついて来てるし。 無事ルシファ…
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