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勇者が世界を滅ぼす日  作者: みくりや
第三部 成長
42/202

繋がり

今日はこちらが先です。

7/21 セリフ修正。方針を加筆しました。



 シャルロッテとマニの訓練は週に1回ほど、学校がお休みの前にくるようにした。次の日にまったく動けなくなるから。

 それに感化されたかのようにミルやアミ、ナナまでが合間に訓練をするようになった。

 ボクに気を使って何も言わないけれど、アイリスが帰ってきてない事に対して何か焦りを感じているような気がする。



 ……いや一番、焦っているのはボクか。



 ルシェが戻ってきても捜索隊に進展がないようなら、もうボクが動こう。








 そんな焦りを感じ始めて、それぞれがやれることをやっているある日。

 アミとナナは、その努力の成果をボクに教えてくれる。


「あの……アーシュ。あたしもついに魔力値が1万をこえたんだよ!」

「すごい!頑張ったじゃないかアミ!」

「ケケケッ!あちが教えればこんなものだわ!それに……反魔核も教えておいたのだわ。きっとアーシュの役に立つ」

「わぁ……役立たずだとおもってたから、うれしい!」



 アミは召喚勇者でも、弱い部類だと言われ続けていた。でもここでシルフィの指導をうけて急成長したようだ。それに反魔核はボクのスキルとも何かと関係してくると思う。

 アミはお城に来てからルシェの手伝いをしたり、自分を磨いたり、演劇の脚本を考えている。すごく精力的に活動している。何かお願いの一つぐらいかなえてあげたい。




「あたしは隠匿の強化をしたの。また役に立ちたいし、マニちゃんやミミくんみたいな立場の子を守りたいって思った」



 ナナは会った頃とちがい自信に満ちあふれていた。そのうえ力を守ることに使いという。心も格段に成長したようだ。ただナナは気丈にふるまってはいるけれど、どこか空元気だ。ナナには癒しが必要かもしれない。


 異世界勇者の初めて会った人物は、無弱で残酷な子共といった印象だった。それを異世界勇者全員に押し付けるのは、それこそマニたちに降りかかる偏見と同じだ。

 アミやナナを見ていると、やはりボクも偏見で壁を作っていた気がする。そうおもって二人には心から謝った。



「アーシュ。二人とも繋がりをつくっておくとよいのだわ」

「いや……それは……」

「あちはかまわないのだわ?一夫多妻は世の常。それにアーシュには必要な事なのだわ」

「わかってはいるけれど、ボクはアイリスの事が気になっていて……それに二人の気持ちもあるだろ?」


 躊躇していると、アミとナナはずいっと顔をよせて主張する。彼女たちの女性から感じる甘い匂いが、その艶やかさを感じる。聞いたわけではないけれど、年齢はボクと同じぐらいのはずだ。それでもすごく大人の女性を感じさせた。



「あの……あ、あたしたちからもお願いしたいかな~なんて……あはは」

「……あたしも本当は……繋がりたいとおもったから」



 天涯孤独のボクにとって繋がりを求めてくれるのは、何事にも代えがたい幸せだ。彼女たちは決して状況に流されたわけではなく、ただの好意でもなく、短い時間だけれど共にして積み上げた愛情を感じて、繋がりたいと言ってくれた。


ボクは――










 数日後。ルシェが戻ってくると、女王との会合の日取りが決まったと言うそれから、ある程度交易や演劇に関しても話をまとめてきてくれたようだ。本当にルシェは優秀な子だな。なでてあげると本当に嬉しそうにする。



「ふぁ……ボク頑張ったよ!えへへ~」



 それからアイリスが砦から移動するときに使ったゲートが見つかった。ゲートの魔法は魔王領だけで使われていたものだ。必要魔力量が多くて、人間で扱えるのはボクぐらいなものだから。

 念のためそこのゲートには悪魔領からと王国からも兵士を配置した。何か変化があったら知らせてくれるだろう。


 その他にはまだ手掛かりが無いから、女王の会合の日に、ボクたちで探索をすることにした。もちろん魔王領に残して指揮して運営する人間が必要だ。

 本来であればボクは動くべきじゃない。けれどボクの焦りが魔王領に伝わってしまってはよくない。現に魔王城の中ではそれぞれが焦りを感じている。

 となると、現状でも自由に動いているボクとシルフィだけで行くことになるだろう。暇人だからという可能性もなくもない。





 女王の会合は3日後だ。

 ルシェから王国領のゲートの詳細を聞いているから、ボクたちもゲートで移動可能だ。移動日程を考えずにギリギリに行っても間に合う。それまではいつも通り訓練や演劇の様子、それから幹部の話を聞いて回る。






 そんな中、マニが怪我をしていることに気が付いた。

 頬をすこし赤くして腫らしている。それに少し切れている。



「マニどうしたの?その怪我」

「……うひぅ!……な、なんれも……ない」



 そういうと、シャルロッテが悲しそうな困っている顔をしていた。どうしていいかわからないといったようだ。



「あの……アーシュ……そのことでご相談がございますの」

「……ご、ごめ……ん――ぁ」



 ボクは彼女をやさしく抱きしめてあげた。彼女の謝り癖は抜けない。でもこの癖は、彼女が虐げられた証だ。

 最近では少なくなったけれど、やはり聞くと胸が締め付けられる思いだ。ボクは同じ経験をしたからだろう。





「……へい……き」



 そういって、ボクを押しのける。どうやら以前の彼女とは違っていたようだ。 シャルロッテは事情を知っているようだけれど、マニは自分で解決しようとしている。



「マニが変わろうとしている事。ちゃんと見てるから」

「……あり……あと。アーシュ」

「わ、わたくしもみてますよ!パートナーですからね!!」

「……シャルも」



 シャルロッテはすっかり仲良しになっていたようだ。マニを心配していながらも、腕を組んで自信満々にしている様子は頼もしい。



 マニの怪我は癒しをかけて治しておいた。

 しかしマニの抱えている問題とはいったい何だろう?学園では大分打ち解けていたように思う。あるとすればその容姿への偏見だろうか。


 そのまま訓練していると、ミルがやって来た。アミたちと演劇に取り組んでいるはずだったけれど、息抜きにきたのか。


「きちゃった……アーシュ!」



 すこしかがんで、覗き込むようなポーズを取っている。日差しが当たってキラキラと輝いているようで、にかっ微笑む笑顔がすごく可愛らしい。



「や、やぁミル、どう?演劇のほうは」

「うん、いいかんじになりそうだよ!それより……ちょっとマニちゃんを借りられる?」

「いいけど、何かあるの?」

「ちょっと勝負がてらお話でもしようかなって」



 訓練の延長ぐらいなら構わないとおもって、二人が仲良くなってくれるならと了承した。マニを呼ぶと、おずおずとやって来る。



「……こ、こんにちは」

「よろしくねマニちゃん?」


「ケケケ!勝負?……なのだわ?」


「「わっ!」」


「いつのまに!お昼寝していただろ?」

「勝負と聞いて」



 シルフィは完全に楽しんでいる。彼女は本当に勝負好きだ。それ以外にも、何かお互いの気持ちも感じ取っている。あとでシルフィに聞いてみることにしよう。



「さぁ。お互い準備して!」

「……うぅ……」

「大丈夫ですわ!マニなら勝てますわよ!」

「……あり……あと。しゃろて」

「シャルロッテですわ!!!」



 すっかり仲良しだ。マニはボクが渡した剣を構えた。対するミルは素手だ。いや、彼女の武器は爪だという。自在に操れるならかなりの手練れと言えるだろう。



「ミルもがんばってね。でもやりすぎ注意だよ?」

「アーシュすこ~」



「さぁ、両者、よろしいなのだわ?」


「いいよ~!」

「……は……ひ」



「レディーファイィイイイ!!!……なのだわ!!」



<ミル> VS <マニ>




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