シャルロッテ VS マニ
ある意味代理戦争みたいになってしまったけれど、ボクはマニ推しだ。シャルロッテはまじめではあるけれど、外見や表面的なものにとらわれすぎている。シルフィの講義で多少変わったとはいえまだまだだ。
それにベルフェゴールやオロバス、他のみんなも偏見がまだある。できればボクが帰るまでに、この子が楽しくやっていける環境にしたい。
「準備はよろしいですか?マニさん。身の程を教えて差し上げてよ?」
「……うひ!……ご、ごめ――」
「あやまるな!!マニならいける!!」
ボクは大きな声で声援をおくった。これは絶対彼女が乗り越えれば強くなれると確信したからだ。ぼくがうなずくと、彼女もうなずき返して、逞しい目つきに変わった。
「じゃあ両者準備いいよね?いくよ?」
二人ともぐっと構えを取る。初手を防げば、マニが負ける要素がないのだ。がんばってほしい。
「レディー!ファアイイイイ!!!!」
<シャルロッテ> VS <マニ>
「大気に宿る雷よ。われに従いこの剣に集え!ライトニング――
シャルロッテはさっき炎属性でならった付与を雷属性で試す。しかし慣れていない詠唱がやはりネックだ。実践では詠唱なんてさせてくれる暇はない。
「ふっ!」
キン!シュ!ザッ!ガッ!シュ!
「なっ!あっ!ちょ!やめっ!!」
マニが詠唱を中断させるかのように、いきなり距離を詰めて切りかかった。その詰めながら詠唱をする。それを気が付かせないようにすれば、詠唱していても気が付いた時には無詠唱で発動したように見える。
「……ウォーターフレイム!」
「えぇえ!!!無詠唱!?」
デュボ!!
シュバババババ!!!!
シャルロッテは防戦一方。しかしなんとか防いでいる。それでもマニのコンボは止まらない。
キン!!
「……アイスバイン!」
「ひぃいい!また無詠唱!?」
ガン!ギン!ザシュ!ガツッ!!!ザシュ!
「……アイシクルレイン」
シュキン!ズガガガガガガガガッガッガガガ!!!
「きゃ、きゃああああ!いや!いたっ!!!」
氷のコンボで、トドメには炎だ。仕掛けがわからない人には無詠唱魔法3連発の直後に、さらに上級魔法を無詠唱で撃ったように見える。
これはもう勝負ありだな。
「……インフェ――
ガン!
「……おっとそこまでだ!!」
さすがに限界か、ベルフェゴールが止めに入った。彼女ではまだ修行不足で止め時は分からないだろうから仕方がない。
「勝負ありだね!!!勝者マニ!!」
「「わ~~~~~!!!!」」
「わーすごいマニちゃん!」
「あのシャルロッテ様に勝っちゃった!!!」
「マニちゃんかわいい!」
マニのほうへ生徒達が詰め寄っている。やっぱり原因はシャルロッテが蔑むことであったようだ。彼女の威厳さえ崩してしまえば、みんな子供だから正直になる。
「お~あの子やったのだわ!!さっすがアーシュ推しなのだわ」
「あの子の必要なのは勇気だけだったから」
「なんで、あんなつえぇんだ?授業で片鱗さえ見えなかったぞ?」
「うむ!オレもずっと見守っていたが、あんなに強いとは!正直オレも戦いたくなったぞ!!」
オロバスは今にもマニに対戦を申し込みそうな勢いだ。今戦ったマニにそれは無理だろう。
「もともとあの子の強さだよ。他の子よりひたむきに真面目にやっていたから、戦闘勘があるのはすぐにわかったんだ」
「それだけじゃねぇだろ?無詠唱を連発してたし」
「いや詠唱はしていたのだわ。詠唱を隠すためのコンボなのだわ」
「おお!魔法を連打しないのではなく出来なかっただけか、うまい戦闘の組み立て方だな!」
ベルフェゴールもオロバスも無詠唱を使える。けれどこんなに連射はできない。逆に無詠唱が出来ないマニでも、ちゃんと詠唱コンボをするなら、体力の続く限り永遠と連射ができる。
能力があっても使い方次第ということをみんなに知ってもらえればうれしい。ボクが教えなくてもシルフィがやってただろうけど。
「マニは身体能力は高いけど、まだ魔法はまだまだだったからね。そこはさすがにアドバイスした。それとあの子ハーフらしくて、除け者にされていたから何とかみんなの輪に入れるようにしたかった」
「な、なんと……アシュイン殿は今しがた来たばかりなのにそこまで見ていたのか!!」
「こりゃ完敗としかいえねぇ!おめえやっぱ面白いわ!!あとで飲みにいこおうぜっ!!」
ベルフェゴールは酒が弱いだろう……。なにかにつけて飲みに行きたいくせに、すぐべろんべろんによってしまう。
「ははは……」
今日はさんざんシャルロッテの鼻をへし折りまくったので、そろそろフォローが必要だろう。
あとはマニや生徒達に任せて――
「ま、まちなさい!!アシュインと申しましたわね!!」
「あ……シャルロッテちゃん」
「ちゃん!!??ふざけ――
「キミも今日はよく頑張ったね!君は指揮官向きだ」
「……え?」
そう言って、ボクは彼女も撫でて褒めてやる。でも彼女は完全に固まってしまった。おそらく使命感というか、高みにいなくてはいけない義務感に駆られていたように思う。
期待感を向けるんじゃなくて普通に褒めてあげれば、この子も伸びるはずだ。
(あーあ。この子もやられちゃったのだわ)
(なにが?)
(つーん。)
(ごめん!機嫌なおしてよ!)
(じゃああとで……なのだわ)
今日はシルフィもみんなのために動いてくれたから、ご褒美をあげないとね。ただ半分趣味だったような気もするけど。
もともとシルフィは面倒見のいいお姉さんなのだ。
ボク達が去るときには、シャルロットもマニも笑って手を振っていてくれた。きっともう大丈夫だろう。
二人ともいいライバルになりそうだ。
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