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勇者が世界を滅ぼす日  作者: みくりや
第二部 想い
19/202

魔力スカウター

第二部はじまりです。


あらすじ


 アイリスがケインと共に失踪してしまった。追いかけたいが魔王領を長く開けられず、落ち込むばかりのアシュイン。



「なぁ~いい加減、起きるのだわ」

「……うん」

「気持ちはわかるけど、アーシュ暗い!」

「……うん」

「あの……アーシュ!」

「……うん」

「わたしとセッ○スして~ん」

「……うん」

「「「なっ!!??」」」



「って聞いてないのだわ」

「「「はぁ~」」」

「……うん」


 なぜかベリアルが混ざっている……。



 あれから数日経っても、未だアイリスの行方が分かっていない。

 ただ彼女が手籠にされるわけがない。



……頭ではわかっているが……。



 ミルの話では、ボクたちがトムブ村へ向かったあと、アイリスは姿を消した。

 通常は下位の状態異常スキルにかかることはない。おそらくケインに何かを吹き込まれたのだろう。



 きっとあの嘘のことだ……。



 彼女にとっては衝撃的だったはず。



「ボクが探してくるよ……」

「あほ!! 冷静になるのだわ!」

「……長が長く空けるのは、不味いかも」

「……ごめん。無茶を言って」



 すでに魔王軍の諜報部が動いて調査捜索隊を編成してくれている。少し冷静さを欠いていたようだ。

 アイリスを追いかけて魔王領を放置しているようでは、それこそ彼女に怒られてしまう。



 どこかで気持ちを切り替えないと……。



「ごめん……今日の一日だけ、休ませもらっていいかな?明日はきっと大丈夫になるから」



「もちろんなのだわ」

「わかった。ゆっくり休んでね、アーシュ」

「あたしも手伝えることやるから大丈夫ですよ!」

「あたしも真面目に仕事してくるね~ん」



 そう言ってみんな出て行った。ぽつんと残されるとそれはそれで寂しい。執務室にいてもやることがないので自室へとやってきた。

 すこしベッドに横になってボーッと考えていると、シルフィがそっと扉を開けて入ってくる。



「……少しはおちついたのだわ?」

「ああ……ちょっと一緒にいてほしい」

「ケケケ……甘えん坊なのだわ」



 お願いするのも気が引けたけれど、一人でいたらどんどん悪い方向へと思考が落ちていきそ



 彼女はベッドの上にチョコンと座り、すこし重たそうにボクに膝枕をしてくれる。気恥ずかしいけれど、甘えることにした。



「なぁ……アーシュ。捨てずにいてくれて……そ、その、ありがとなのだわ」

「ん? ……村の時の話?」

「うん……」



 何となく言いづらかったのかもしれない。ちょっと忘れかけていたけれど、確かにあの時のシルフィはまさに死に体(しにてい)だった。



「話せない時に、なんでボクを?なんて野暮か」

「魔力の多さじゃないのだわ。質とそ、その……なんでもないのだわ」

「なにさ?」

「内緒なのだわ!!」



 真っ赤になってぷいっと目を背けるシルフィは可愛かった。

 やはり長年生きてきたためか、完全な子供の容姿なのに妙に艶美さを感じられて、ドキッとしてしまう。

 それに彼女の綺麗になった艶々の銀髪が顔に垂れてきて、なんとも女性らしい匂いがする。それに冷静ではいられなくなって、ボクも目をそらしてしまう。



 それからあまり話せていなかった、彼女の生い立ちを教えてもらった。


 シルフィは精霊と人間のハーフで魔女だ。

 魔女は魔力が高く、得意分野や専門の研究をして、長く生きているもの。

 シルフィも魔法、魔力、種族の研究をしている。魔力操作と肉弾戦に関しては負けないという。


 不運が重なり、負傷して封印されてしまった。

 容姿から孤児にならざるを得なかったけれど、逆にそのみすぼらしい容姿を利用して逃げながらえていたそうだ。

 しかしどれだけ経っても、顔を顰めずにちゃんと向き合って相手をしてくれる人が現れなかった。その時にボクに出会った。



 彼女はそれまで『白銀の精霊魔女シルバー・オブ・スピリットウィッチ』という通り名しか持っていなかった。

 名前がない存在だったのだ。



「……本当にうれしかったのだわ。……でもお礼を言えなくて悲しかった」

「こうして辛いとき側にいてくれたら、充分だよ」



 今度はまたうれしくて潤んだ瞳でボクを見下ろす。すこしだけ涙がこぼれてボクのほほにかかるのが、心地いい。



「命名とアイリスに斬られたときに、無断で貰ってしまったのだわ」

「それで封印を解除できたのか。おかげでアミは奪われずに済んだね」



 あれから少し経つのに、身体が気怠いのはその所為だった。確かにゴッソリと持っていかれた感覚はあったが。


 そう思ってじっと彼女を見上げると、優しい顔をしてボクの頭を撫でる。これはずるいと思うのだ。



「ケケケ……まだゆっくりするのだわ」

「……うん。シルフィありがと」



 また顔を見上げて、うれしくなって自然と笑みがこぼれる。

 今度は目を逸らさずに、じっとこちらを見て同じように優しく微笑んでくれた。

 どうやらボクには彼女も必要なようだ。


 明日からはきっと頑張る。だから今だけは……









 暖かい日差しに気がついて目が覚めた。

 あのまま丸一日寝てしまったようだ。なんだか窮屈で周囲を見ると、四人で並んで寝ていた。その様子はまるで魚の様だと苦笑した。

 どうやら心配かけてしまったようだ。




 朝食を終えて執務室へ行くと、すでにルシェが執務をしていた。やはり忙しいようで、こちらに気がついていない。



「ルシェ。いろいろまかせっきりでごめん。もう大丈夫」

「あ、アーシュ!! よかった! すごく心配したよ!」



 書類から目を離してこちらに駆け寄って来た。よほど心配してくれていたようだ。それに執務もまかせっきりだ。



「ありがとう……ルシェ」

「ううん。アミがすごく頑張ってくれているよ」

「アミが?」

「だから、ちゃ~んと褒めてあげてね?あとボクも」

「はいはい」


 たっぷり撫でて褒める。それがご褒美とばかりに目を細めて嬉しそうにしているルシェ。こんな簡単な事で喜んでくれるなんて、見合っていない気がする。

 またお出かけにいつか誘ってあげよう。





 しばらく撫でたあとは、現状報告をしてくれた。

 みんなもやってきて執務の手伝いをしてくれている。



 「トムブ村とライズ村の交流会の準備は順調だよ」



月に1回ずつ、商人の来訪日とは別にどちらかの村にあつまって、バーベキューをするということになった。トムブ村の村長が、ものすごく乗り気なのだそうだ。

 お互い育てた野菜や肉。それから猟で取れたものや、料理の腕を競ったりする。随分と楽しそうだ。


 それから様々なものが開発されているそうだ。

 今まではメフィストフェレスが研究をしていた。しかし普及するほどの具現化したものはできず、知的探求心を満たすだけだった。

 領内施策で横のつながりができた。おかげで研究が開発へまわり、実用化できる物が作られるようになった。


 それだけにとどまらず、魔王領は全体的に好調だ。

 悪魔たちの魔力が底上げされていた。

 以前は一部の幹部か魔王のみ、使うことができた魔力燃費の悪いゲート。今は幹部の全員が使うことができるようになっている。



「魔力が増えているなら、相対的にわかるものが欲しいね」

「ふっふっふ~、そういうとおもったよ! さすがアーシュ!!」

「いやいや、それは先回りしすぎでしょ? まさか……」

「そのまさかだよ!」



パンパカパ~~ン!



「ま~りょ~く~す~か~う~た~」

「ギリッギリだね」

「まーまーこれまだ試作品だから精度がよくないけれど、測れるよ?」

「へーおもしろそうだね」



「ケッケッケ。おもしろそうなものをもっているのだわ」

「わたしもやってみたい!」

「あ……あたしも」



 その楽しそうなルシファーの声に、みんなも興味津々だ。テーブル席の方で執務の手伝いをしていたみんなも集まってきて注目している。



「じゃあアーシュが測ってくれる?使い方を覚えてほしいし」

「いいよ。これを耳に引っ掛ければいいのか?」

「そうそう。かっこいいよ!その出っ張ったところを軽くおして」



ポチ



 ルシェに言われるままに、滑らかな丸い出っ張りを押すと、ゴリっと魔力を吸われた。これはかなり魔力がないと使えないようだ。



「じゃあミルから?」

「うんうん!」



――――

ミル

魔力値1,200

――――



「1,200って書いてあるけれど、これはすごいの?」

「普通の人間で100、悪魔の村人で300ぐらいだよ。だからかなりすごいよ!」

「おお!すごいじゃないかミル」

「へっへ~アーシュすき~」



 ミルは褒められて嬉しそうにしている。ミルは鬼人の先祖返りだから、魔力が少ないはず。それでもこの量であるなら十分だと言える。



「次はアミだ」

「あの……あたしは普通の人間だから……」

「そんなの関係ないよ。こっちきて?」

「……えへへ」



 アミは嬉しそうに隣にちょこんと座る。彼女は引っ込み思案だから、ついつい遠慮して一歩下がってしまう。ボクの方からなるべく声をかけてあげたい。



――――

アミ

魔力値2,500

――――



「アミもすごいじゃないか!」

「すごい!! あたし悪魔なのに負けちゃったよ」

「……あはは、一応召喚勇者だから……かも」



 召喚勇者は必然的に高くなる傾向にあるのかもしれない。彼女はBランク勇者と言っていたが、Sランクだとどれくらいになるのだろうか。



「ケケケ、アミ。あちが魔法を教えてやるのだわ」

「え⁉ いいの?」

「あ~んなチンケなスキルにやられていたら、すぐ人質にとられてしまうのだわ」

「あははは……ごもっとも……お願いします! シルフィちゃん!」

「シルフィ様とよぶのだわ!あぶぶぶぶb」

「調子に乗りすぎだよ? シルフィ」

「あはは!! シルフィちゃん可愛い!!」



 増長のとまらないシルフィの両ほっぺを捕まえた。わちゃわちゃと暴れるシルフィは可愛らしくて、みんながやりたがる。

 そんなシルフィはどのくらいあるのだろうか。普段はそこまで多く感じないが、ボクから大量の魔力を奪ったのだから、かなり多い気がする。



――――

シルフィ

魔力値123,200

――――



「え⁉ 桁がちがうんだけど」

「ボクも驚いたよっ! シルフィは普段は抑えているんだね」

「ケケケ。有名になると、そのままだと色々と面倒なのだわ」


 彼女は高名な魔女だ。すぐにそれがバレてしまうと、面倒ごとに巻き込まれるのだろう。



「次はルシファーね」

「ボ、ボクはい、いいよぉ……あっ!」



――――

ルシファー

魔力値135,600

――――



「上位悪魔だけあって、多いね!」

「アーシュに見られるのは、な、なんだか恥ずかしいな」

「そういうアーシュはどうなのだわ?」



 自然な流れでボクの順番が回ってきてしまった。それにシルフィは抑えていたが、実際の量の数字が出てしまっている。

 勘が良ければ、ボクが勇者だとすぐにばれてしまうのでは……。



「い、いやボクはいいよ!」

「じゃあぁいくよー……うわ! えっぐい!」



止めようと思ったけれど、手遅れだった。






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