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勇者が世界を滅ぼす日  作者: みくりや
第一部 魔王代理
18/202

閑話 女王と魔導師の友情

エルランティーヌ視点です。


あらすじ


 本当の勇者を追放して『勇者の福音』の揺り返しに苦しむ王国。女王は打開策として異世界召喚術で勇者召喚を試みる……



 わたくしはエルランティーヌ女王。今現在はわたくしが王国を治めております。お父様とお母様は、不慮の事故(・・・・・)で崩御なされました。


 そしてわたくしはこの国難に立ち向かうべき、異世界召喚術をしようしました。犠牲は伴いましたが、術は成功しました。

 これには皆も期待して、希望を見いだしております。


 しかしわざわざ犠牲を払ってまで召喚したというのに、ゴミが1つ交じっていたようです。これはいただけません。

 わたくしはこの召喚者にいら立ちを隠せませんでした。即刻お城から追放し、のこった人間のみで、育成計画を始めました。


 魔王はすでに真の勇者が倒してしまったので不在ですが、彼らの戦う口実として『魔王討伐すると元の世界に帰ることができる』という、建前を作りました。

 彼らはきれいごとのような正義感がとてもお好きなようです。われらが魔王に困っているという演技をすると、すぐに立ち上がってくれました。

 あの先導している倉橋くらはし ひびき西園寺さいおんじ あやという二人の人物は、なんともまぁ使いやすいのです。

 彼女たちを制御すれば、召喚した31名を全員操ることができます。すでに1名は追放いたしましたので、正確には30名です。


 しかしステータスプレートを確認しても、勇者の福音の持ち主が見当たりませんでした。この目玉スキル以外は、はっきり言っていりません。実際には魔王はいないのですから。

 

 強さはこの二人が一番強いようです。訓練ではすでに王国軍騎士団長をしのいでいます。ほかの方々も、一定の訓練は終了しています。明日から召喚者はパーティーを組ませて、各地に配置いたしましょう。

 実戦から経験を積まないと、これ以上は強くならないでしょうから。それから勇者の宣伝は済んでおります。彼らが行けば周辺が活気づきます。各都市や村の活性化の役割も担ってもらいましょう。


 これに勇者の福音が発動すれば、近いうちにわが王国は復興するでしょう。




「大変でございます女王様!」

「さわがしいですのよ。何事?」


「勇者パーティーが討たれました!」

「なっ!?どのパーティーでしょうか?」

「アヤ様のパーティーでございます……」

「……うそ」


 アヤ様は召喚した勇者の中では最強クラス……。彼女を倒せる存在は人間ではありえません。帝国軍の一個師団でも一人で倒しきれる強さは持っています。

 悪魔族は前魔王討伐時に数が大きく減少したはずです。考えられる可能性としたら……。



魔王復活。



それから本物の勇者様。



 このどちらかが一番可能性が高いでしょう。もっとも最悪な事態を考えるなら、本物の勇者様が魔王をしている場合です。

 魔王領全体に勇者の福音が発動した場合は、おそらく王国は飲み込まれて統一させられてしまうでしょう。

 抵抗する場合でも、わが王国の兵力では村人にも勝てない可能性がございます。




世界のパワーバランスが崩れる……!!





 だだでさえわが王国は、窮地に追いやられております。この最悪な事態をどうやって切り抜ければ……。


「それから女王様。元勇者パーティーのレイラ様がお会いしたいと」

「あら何かしら?」

「重要な情報があるとのことです」

「ふむ……いいでしょう。今は動けないでしょうから」


 わたくしは、久しぶりにレイラと会うことにしました。今は何でも情報が欲しいときですし、あんなことがなければ、わたくしはレイラと今も友達であったはずです。


 わたくしはレイラの軟禁している部屋へやってきました。ここは牢屋のように完全に拘束する場所ではありません。ガランとケインは牢屋ですが。


「お待たせいたしました。レイラ?」

「ありがとう!きてくれたんですね」


 レイラはすっかり丸くなって、母になるとあのツンツンしてた娘もしおらしくなるのでしょう。

 彼女はすでにかなりお腹が大きいです。


「女王様……わたし、子供を堕ろします……許可をいただけませんか?」

「え?……なぜそんな……」


 あんなに幸せそうな顔で子供のいるお腹を愛でていたのに?何があったのでしょう。それに中絶は本来は、死罪です。その覚悟でおっしゃっているのでしょう。


「ケインに催眠をかけられて強姦された時の子なの……」

「なっ!!!???まさか今までずっと催眠に?」

「彼のスキル『誘惑』で同じ街にいるだけで、効力がずっと続くわ」

「……それは……女性の敵、いや凶悪なスキルですわね。だからあんなことを仕出かして……」



「わたし……本当はアシュインが好きだったの……でも……うぅううう、うわああああああ」




 彼女は泣き崩れてしまった。

 それはそうだ。

 スキルのせいとはいえ、強姦された相手と結婚して、好きだった相手のすべてを奪って国から追放したのだから……。


「効力が切れたということは、彼は王都にいないのでしょうか?しかし牢屋で拘束しているはずですが……セバ!確認なさい!」

「は!」


 どうやら、侍女に誘惑を掛けて強姦して鍵を持ってこさせたそうです。何人の女性を襲えば気が済むのでしょうあの偽物勇者。

 いえ逆ですね。能力から言って強姦しかできないのでしょう。しかしこれは本当に女性の敵です。早急に指名手配が必要でしょう。


「レイラ……今から堕胎すると、母体もとても危険よ……それに本来であれば、死罪に相当します」

「わかってる……普通の人は、子供に罪はないというでしょう?もしくは子供を殺すのか?とか」

「でも催眠の解けた今は……わたしはこの子を愛せないどころか、憎んでしまいます。もしスキルなんて受け継いでいたら……確実に殺してしまうでしょう。ですから……ですから……!」

「……レイラ」


 わたくしは、もう肯定しかできません。やはりあの男の遺伝子は残すべきではないでしょう。治癒術は聖女ほどではありませんが、多少覚えがあります。それに城にも高等治癒師は当然います。


「わかりました。王国の威信にかけて、堕胎しあなたを助けます!そして、前国王が誤ってしまった罪の被害者であるあなたに強権を発動します!!!!」


「そ、それは!!!」


「女王の権限において、レイラの中絶は合法でございます。一切の異論は認めません。セバ!手配なさい」


「か、かしこまりました……」


「……エ、エル!!!!」

「……ふふ。やっと昔のように呼んでくれましたね。レイラ」


 わたくし達は抱き合って、泣きあった。やっと本来の関係に戻れた。お互い酷い立場に立たされたものだと思った。時代を恨んだ。それでも今こうして、また泣きあえる友達ができたのは、最高の救いだ。






 レイラは一度状態を見るためにお城の医務室へと連れて行き、上級治癒師に診てもらってからの中絶です。手術は明日になるでしょう。


 ケインの誘惑は女性にのみもたらす、本当に女性の敵になるべく生まれた人間の様です。そのせいで、わが王国も危機に立たされているのですから、八つ裂きでは済まされません。



 次の日。レイラの手術はうまくいき、堕胎することに成功した。取りりだした赤ん坊は少し大きくなっていたが、王国はこの一連の騒動の被害者の一人として丁重に弔うことにした。


 そして落ち着いたころ、レイラはある情報をもたらした。


「エル。召喚勇者の一人を追放したでしょ……」

「え?なぜそれを?まぁ無能だと判断して追放いたしました」

「おそらくソイツが『勇者の福音』を持っている」

「な!!??」


 レイラはここに居ながら、外部の情報を集められるようだ。明らかにここだけではわからない情報を出してきた。それにわたくしすら知らなかった情報だ。


「確証は?」

「ぱぺっとだんす?を心眼持ちが診たのよ。むしろ全員を調査させた」

「レイラ……ここにずっといたのに……すごいわ」

「ふ、ふん。あなたのためにやったんじゃないからね!!」

「……ふふふふ」


 心眼スキルを持っている人間はほとんどいない。それこそつてがないと依頼ができない。おそらくレイラの魔導のお師匠様のつてだろう。

 そこまで手をまわしてくれるなんて、思いませんでした。

自分もおつらい状況でしたのに。


「それから……今のままじゃ福音を手に入れても魔王領には勝てないし、最近勢力を伸ばしすぎている。アシュインがいたから保てていたパワーバランスはもう崩壊間近よ」

「ええぇ。わたくしが今もっとも危惧してるのはそれね」

「勝つ必要はないと思うの。ある程度のパワーバランスを保って、むしろ交易をするべきだわ」

「で、できるのかしら……」


 レイラはすでに悪魔領と交易をしている村がある事も調査していた。彼女の調査能力はびっくりするほど高い。むしろ動けないからこそ、それに特化したのかもしれません。


「交易は良いとして、純粋な力のバランスはどうしたら……」

「それについても、手はある。あるけれど……」

「……そう。非人道的な手段なのね?」

「わかっちゃうか。エルだもんね」

「ふふふ。でもやりますわ。わたくしの手は既に血で塗られています。覚悟はございましてよ?」

「わかったわ」


 わたくしはレイラと握手をして、その暗黒道を踏み出しました。





第一部最後です。


これからもよろしくお願いします!

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