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勇者が世界を滅ぼす日  作者: みくりや
第六部 奴隷化計画
111/202

帝都への旅

あらすじ


 ヴェントル帝国の場末の工房でエルダートと再会した二人。帝国側から見た帝国や王国の印象はまったく逆だった。



 それから話を切り上げて浄化装置設置をすることにした。クリスティアーネが指示をしてボクが取り付ける助手だ。



「うぇへへ……そ、その排水溝につけて」

「うん。 これでいい?」



 クリスティアーネが浄化装置を確認している。

 魔力についてはボクが注いでおいた。それからエルダートは今までどおり川から水をくみ上げて排出する。

 しばらく動作確認をして、水質を確認する魔道具も渡して置く。様子を見たら上層部に確認して、上位魔女によるものだと報告すれば完了だ。



「おおぉお……本当に……ありがとう!」



 エルダートは暑苦しい程に握手してお礼を言っている。やはりここに来て、どこか変わったようだ。


 お礼ついでに人目に付きにくい場所を教えてもらい、ここにもゲート魔法陣を設置した。帝国にも移動場所を作っておけばいざという時に役に立つ。雪崩が起きた時のように緊急回避にも使える。



 それからボクたちはエルダートと共に、帝都へと向かうことにした。彼は報告や支援要請をするために。ボクたちは教会の帝都支部へ行く予定だ。

 工房からはやや南西に向かった場所にある。しばらく足場の悪い河原と谷が続くので、二人を抱えて移動になる。クリスティアーネは慣れていたけれど、エルダートは完全に酔ってしまった。



「すこし休憩しようか」

「……す、すまぬ。しかしこんなペース移動できるならすぐに帝都につくな」



 近場についたら馬車でもよかったけれど、死霊馬車で乗り入れたら大混乱が起きてしまう。それにヴェントル帝国はとにかく足場の悪い渓谷がおおいから、帝都までボクが抱えていく方が早そうだ。


 高い岩場で休憩することにした。周辺は谷になっていて、遠くまで一望できる壮観な景色だ。遠くまで川が伸び、そして蜃気楼のように帝都の建物がうっすらと見える。

 クリスティアーネがテーブルセットをだして、ハーブティーを淹れてくれる。なんとも優雅なティータイムだ。



「ここは人間にとって厳しいが、そのおかげで技術大国になっているんだ」

「……ん? ちょっとまって技術大国?」

「あぁ……よく他国の人間は勘違いするんだ。軍事国家だと」



 何気なく漏らしたエルダートの一言がとても気になった。いや王国側と帝国内の人間の認識が大きく違っていたのはこれだ。

 そもそも帝国軍はあるものの軍事より技術に力を入れている国だったのだ。となれば今までの認識が大きく違ってくる。


 とにかく鉱石や食料資源が豊富にある。国の規模で言えば王国に次いで二番目に栄えている国でもある。

 そんな根幹を支えているのが、人々が便利に暮らすための技術だった。

 王国から召喚勇者を引き抜いているのは軍事的に有利に立つためではなく、道の技術や感性を手に入れるためのものだと言う。


 確かにアミやナナは新しいお菓子を作って見せた。あれ一つ取ってみても世界にとって革新的だ。

 召喚勇者の年齢はボクとほぼ同じくらいだから、熟練の技術をもっているわけでもないが、作る土台がある。高い技術の中でくらし、高度な教育を受けている様子だったから、話をするだけでも技術者にとっては収穫となる。



「こんなにもボクらははき違えていたのか……」

「王国が初めに狙っていたのは、鉱物資源だ」

「しかしそんな王国を良く許して、王国騎士団長なんてやったな」



 帝国も帝都軍部はやはり、王国同様謀り合う場所であった。しかし王国と違い皇帝はメンツと欲望に忠実な男だったから、それに逆らわなければうまくいっていたのだ。

 エルダートもそれなりに自由に出来ていた。レイラが現れたことで歯車が狂ったが、それでも彼は娘ができたことに満足しているという。

 レイラの事を話す彼は楽しそうだ。



「……うぇへへ……ア、アーシュちゃんが……い、命張って助けた甲斐があったぁ……」

「知っていたの?」

「霊魂が削れて見ればわかる……そ、それに……あ、あたしにも……」



 虚血症で意識を失っていたからわからないと思っていたが、どうやら気が付かれていたようだ。心配するしそれが彼女の重荷になると思っていたから言わなかったのに。

 それを知って尚、ボクについてきてくれていたのだ。まったくもって頭が上がらない。



「……ありがと、クリスティアーネ……」

「……うぇへへぇ~……」

「ぐおっほん! お主! レイラの恋人ではないのか⁉」



 せっかくクリスティアーネといい雰囲気だったのに、エルダートに邪魔されてしまった。彼の目の前でいちゃついているボクらも大概だけれど。

 レイラはエルダートの目の前でボクに告白していたのだから、恋仲になっている者とばかり思っていたようだ。だけれどあの時邪魔したのもエルダートだ。

 それに彼女は彼女で自分の道を行くことを選んだのだ。エルと共に王国を再興すると。ボクはそれを応援する立場ではあるけれど、恋人には残念ながらなれなかった。

 ただレイラの事は大切な人であることは変わりないから、いざという時は守るつもりでいる。

 そのことを聞いたエルダートは、安堵と残念さの入り混じった微妙なため息をついていた。



「そ、そうだったのかぁ……」

「さ、さて、それじゃああと少しで帝都だから行こうか」



 少しごまかすように立ち上がって、出発した。この岩山を二つほど越えれば帝都だ。あと三十分もしたら到着するだろう。



「ぐぉおおお……ま、まだ早くなるのか!」










 そして帝都の入口の門までやって来た。しっかりと高い城壁に守られた都で、近くにいると中を見ることができない。門番もしっかりとした数名の騎士が待ち構えている。

 エルダートが先行して話しかける。



「アウスビッツ工房のエルダートだ。報告の為に出頭した。先ぶれを頼む」



 あの工房の名前はアウスビッツ工房というらしい。ボクたちのことは客人だと紹介している。すんなり通してくれると思いきや、因縁をつけられているようだ。



「場末の元将軍様がぁ、なんのよぉだよ!」

「いいのか? 後で後悔することになるぞ?」



 数名の門番騎士に囲まれていると、班長らしき騎士がやって来た。



「貴様らぁ‼ 軍規違反だ! 減給されたくなければ、お通ししろ!」

「ちっ……おぼえていろ!」



 捨て台詞を吐いて散り散りに配置に戻っていく騎士。班長の男はエルダートと知り合いの様だった。



「エルダート将軍! すみません!」

「いやもう将軍じゃないしな……それよりたすかったよ」



 ひと悶着あったが、エルダートを信奉している元部下もいるようで、なんとか大事にならずに済んだ。

 ボクことを紹介すると、上位魔女であることに驚いている。エルダートの知り合いだからよいが、無駄に吹聴はしないほうがよいだろう。



「上位魔女が来たことを広められたくない」

「……そうですね……他言無用にします」



 それから警備担当の班長騎士はボクたちを教会に案内してくれる。ここでエルダートとはお別れだ。そこで木札で王位継承の儀の招待状を彼に渡す。

 王国についてはほとんど話していないが、王位継承の儀がある事は知っていたようだ。場末に飛ばされたとはいえ、彼には彼の情報網がある。

 まさか招待されるとは思っていなかったので、驚いているようだ。アイマ領主一家のアシュインが出した招待状ということになっている。

 これなら会場となる場所まで入ることはできるだろう。



「……いいのか?」

「……うまくいけば、あの娘(・・・)に会えるぞ?」

「……お……おぉおおぉおお」



 またもや打ち震えている。さすがに四十代の親父の涙して打ち震える姿はあまり何回も見たいものではない。ボクは早々に挨拶をして教会へはいることにした。



「うぇへへ……あまぁい」

「かもなぁ……でも美味い酒飲んだだろ?」

「うひひ……」



 そうして教会の扉の門をくぐると、子供たちの声が聞こえて来た。沢山の孤児の面倒を見ている女性がここの主のようだ。



「わ~きれいな人ぉ!」

「こっちのねぇちゃんは……怖いぃいい!」


 相変わらずだ。ボクはもう燕尾服(モーニング)を脱ぎたかった。着やせするせいでほぼ100%の確率で女性に間違われている。

 訂正しても子供は中々聞いてくれない。



「ボクは男の子だよ?」

「うっそだぁ!」



 この調子である。

 ボクたちに気がついたようでシスターがこちらに歩いてくる。



「あら……子供たちが失礼しました。どなたかしら?」

「これを教会本部のミザリから預かってきました」



 手紙を渡してそれを読むと、驚いているようだ。たしかに教皇が代替わりするし、同僚がその後釜に座るのだ。驚かないと言う方がおかしい。

 さらにミザリもボクとそう変わらない年齢のはずだ。



「ミザリはなんと?」

「あなた方の支援をするようにと書かれています。とりあえず中へどうぞ!」



 彼女の名前はマリーアンヌ。司教という位だ。といっても司教がきるような服は来ておらず、他のシスターと同じ修道服を着ている。奇麗なホワイトブロンドのボクたちとそう変わらない年齢の女性だ。

 顔にそばかすがあって手も荒れている。すこしここで苦労しているように見えた。



 案内されて中に入ると、子供たちも一緒についてくる。テーブルに三人ですわってお茶を淹れてくれている。



「んふふ~あたしここ!」

「ずるい! あたしも」



 なぜか五歳位の女の子がボクの両膝にのって、陣取っている。それを羨ましがっている他の子たちがボクに群がりだした。



「わ~ボクも~!」

「ねぇちゃん。あそぼ?」



 それを隣で恨めしそうに見ているクリスティアーネ。彼女のところには子共はさすがに近寄りがたいようだ。



「ぐひぃ……な、なんだか疎外感……」

「クリスティアーネにはボクがいるから……」

「……うぇへへぇ……」


「す、すみません。そこまで群がるほど子供が懐くなんて……」


 マリーアンヌは済まなさそうに謝っているが、子供は嫌いではないからそのままボクで遊ばせておく。

 話しながらだって、手を広げればぶら下がって勝手に遊ぶのが子供だ。



「ふふ……慣れているんですね……それに奇麗……」

「ボク、男だからね?」



 くそ……脱いだらすごいんだぞ……。



 とはさすがに言えない。

 こんなところで脱いで、筋肉を披露したら変態扱いされてしまう。さすがにそんな蛮行をすればクリスティアーネでも呆れてしまうかもしれない。

 ただずっと女性に間違われ続けて、ボクはだいぶストレスが溜まっている。


 お茶を飲んで子供たちも落ち着いてきたころ、帝国についてこの人にも聞いてみることにした。

 するとやはり帝国や教皇に対して支持しているという。

 軍事に関しては抑圧的で下手なことは言えないけれど、それ以外に関しては自由だし帝都内は思った以上に裕福だ。


 教会は孤児を預かるから運営が厳しいかと思っていたが、ここは教会からと帝国からの支援を受けているから、かなり余裕があった。

 建物も奇麗で近代的だ。急に来たボクたちを泊めても、受け入れられるという。



「アーシュさん? 子供たちが気に入っているようだから、時間があるときでよいので遊んであげてください」

「……もちろん。泊めてもらうのだからそれぐらいするさ」




 まずは召喚勇者の動向を知りたい。それから王位継承の儀に関してどこまで関わって来るのか。

 それから猛毒の魔女(ヴェノム・ウィッチ)がいつ来るかわからない以上、警戒が必要になる。

 しばらくはここを拠点に、帝都の様子をうかがうことになりそうだ。






読んでいただきありがとうございます。

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