少女とロンくん。2
アラーム。
その規則的で高音な響きは、ひとりの少女を起こす。
「…ん」
その声と同時にその部屋にあったあらゆる機械が一斉に起動する。
『おはようございます、更様』
その中の一つ、人の形をした灰色のロボットが少女に話しかける。
「………」
更と呼ばれた少女は機械の言葉を無視して洗面所へ。
バタン。
扉の閉まる音。
『…やれやれです』
人の形のロボットは人間と同じ様にため息という名の排出行為をした。
@
『更様、朝ごはんは出来ています』
「…ん」
銀色の丸いボールに腕が生えたような空中に浮いてる機械が、皿の上に食事を置いた。
ご飯、味噌汁、鮭。
「…いただきます」
更は、箸を握って合掌をした。
『はい、どうぞ』
機械の規則的な声色が答えた。
静かな食事風景。
灰色の家族との奇妙な食事だ。といっても、機械は食事をしないが。
「ごちそうさま…」
更は静かに箸を置いた。皿の上には何も乗ってなかった。
『味はどうでしたか?』
ロボットは尋ねたが、
「…」
彼女は何も答えなかった。
食べ終わった皿を洗う専用のロボットの口へ入れ、柱にポツンとあったオレンジ色のボタンを押した。
ドンッ、ウイイィィィィィン。
窓に掛かってあった銅のカーテンが開かれる。
日差しが眩しい。
それは、彼女らが居る部屋はこの地球上で一番高かったからだ。
比喩ではない。
この世界に悲劇が起きたのは更が居る時代より少し前。
全世界に「塔」が降ってきたのだ。
だが、それだけではなかった。
その「塔」は小窓が数千個もあり、そこから赤い球体が大量に放出された。
人類は慌てふためいた。
正体が何もわからない球体をどのように処理すればいいのか、異邦からのプレゼントなのか、はたまた武器なのか。
毎日のようにニュースは騒がしかった。
だが、それも一週間で終わった。
赤い球体の正体、それは破壊力抜群の人間しか狙わない爆弾だった。
それらの球体は人間を追尾した。
地獄の果てまで追いかけた。
その結果、人類は地球上から絶滅した。
更は、生きている。
人間であるにも関わらず、だ。
その理由はわからない。赤い球体がバグを起こしたのか、征服者の気まぐれか。
更が目覚めると、そこは知らない部屋だった。
色んな形をした銀色のロボットたちがここにいる理由も知らない。
気味が悪い。
ドアは開かない。窓も開かない。
地球上最後の人間は、動物園の檻の中に閉じ込められたライオンのようだ。
さて。
上の物語は、ただの始まり、例えるなら曲の前奏。
物語は今から坂を転がり、加速していく。
それが、壁にぶつかって壊れるか、知らぬ誰かが受け止めてくれるか、結果は先を見ないとわからない。
これからも観察を継続する必要がある。
どうも、最近雉を頻繁に撃ちたくなって病気かなと思っている酔浦幼科です。
今回のお話は、荒廃した地球上でひとりぼっちの少女の物語ですね。
というか、本文にも書いてある通り全然始まってないんですけど。
でもこのロンリネス・サブストーリー(LNSSって略してください)は短めのストーリーであることを意識しているので、次のお話かはたまたその次のお話で終わらせます。いやこれホントに。
あと、LNSSにはまだ「少女とロンくん。」しか上がってませんけど、他のシリーズもあげる予定です。今タイトルをこっそり言っておきますね。
「意味不明な世界とアイツと僕物語」ですね。
ハイ長いねー。自分でも予想以上に長いねー。
一応LNSSで描く登場人物の時系列は同じであることを意識してます。このクソ長いあとがきを覚えておいてくれた読者様は「イセアボ(意味不明な世界とアイツと僕物語の略。適当に考えたから読者様からいい略を募集しますね)」読むときに思い出してくれるかもねー。
それではっ。
(仁王が面白くて死にゲーを買い漁ろうと決めている)酔浦幼科