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猫はもう飼わない  作者: タン吉
9/10

ストーカー

そもそも何故このストーカー事件が、僕を含めてアルバイト仲間に発覚したかについてなのだが、それはさっちゃんさんが一ヶ月に渡って休んだことにある。

 バイト仲間の間では「あの子、辞めちゃったんだろ」と、多少の落胆はあっても良くあることさで済んでいたが、気になった僕はパートの森山さんに恐るおそる聞いてみた。

「ああ、さっちゃん?ストーカーにあってるみたいよ。辞めたんじゃないから」

 はあ?ストーカー?

 衝撃でした。

「さっちゃん、綺麗な子だから気になるわよねえ」

 しっかり見透かされていた。

 さっちゃんさんは最寄りの駅の一つ手前で降りて、そこからバスで通ってくる。

バス停からは徒歩で10分の距離だと、自転車を利用する草馬ちゃんが言っていた。

 パート主婦の皆さんの間では大きな話題になっていて、知らなかったのはケースピック部門で働く僕たち男子の一部だけだったようだ。

 草間ちゃんに確認したら「知らなかったんですか?」と呆れられた。

 パート主婦の森山さんと情報通の草馬ちゃんの話を統合したところによると、フォークリフトの佐藤さんが3ヶ月で辞めたあと、さっちゃんさんが利用する駅やバス停近くのコンビニの駐車場で頻繁に佐藤さんを見かけるようになったんだそうだ。

 彼は黒い軽自動車に乗っていて、リアゲートに『さっちゃん』と書かれた自製と思われるステッカーが貼ってあったという、正気を疑うようなバイト仲間の目撃情報もあったらしい。

 また、駅で待ち伏せされて「僕にはあなたしかいません。僕と付き合ってください」と有り得ない告白をされたとか。

 それで、このまま通勤を続けるのは危ないということで、一ヶ月の間を開ければ相手も諦めるのではないかという希望的観測だった。

  だが、それは甘かった。

 僕はまったくの、情けないほどの無力だった。

 僕がさっちゃんさんの復帰を待ち焦がれたように、佐藤というストーカーも執念深く待ち続けていたんだ。

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