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猫はもう飼わない  作者: タン吉
8/10

ストーカー

 僕ん家では以前猫を飼っていたことがあった。子供だった僕が公園で拾ってきた茶トラの子猫だった。

 動物そのものがあまり好きでない父は反対だったが、母が渋々賛成に回ってくれたので飼って良いことになったのだが、一年も経たないうちに死んでしまった。

 獣医から内臓が弱いことを指摘されていたけど、チャビと名付けて溺愛するようになった母が、与える餌にも気を使っていた甲斐もなく、ある日から下痢を頻発するようになった。

 詳しく事情を聞いた獣医の診断はストレスが原因だろうということだった。    その要因は父だと獣医は指摘したんだそうだ。

 父はチャビがテレビや家具の上に跳び上がるのを嫌って、見つけると叱って追い払った。

 遊び盛りの子猫にとって、父は天敵に等しい存在だったのだろう。父を恐れ僕や母のいる部屋に避難するようになった。

 もっとも、父が家にいないときは、父の部屋のベッドの上に仰向けになって豪快に寝ていたりして、それを見て母と二人で大笑いしたりしていたのだが、ある日突然体調を崩してぐったりとなり、母の運転する車で獣医にかけ付ける途中で、僕の腕の中でふーっとひとつ大きく息を吐いてそのまま呼吸が戻ることはなかった。

 痩せてふわりと軽くなった亡骸は裏庭のツツジの傍らに、母とふたりで埋葬した。母は「ごめんね」とポロポロと涙をこぼしていた。

 それ以来、我が家ではペットを飼うことはなかったのだが。

 僕が、あまりやる気のなかった大学受験に失敗すると、父は激しく失望し、それだけが原因ではないだろうけど、父と母の仲は険悪になった。

 おそらく母の方から離婚を切り出したらしく、家の中で言い争いが始まると、僕は公園に避難し、そこでミーと出会ったというわけだ。

 やがて父は、もともと母の実家であった家から出ていき、今は別居中なのだ。

 父が死んだと聞かされても、僕が悲しむことはなかっただろう。

 また猫を飼う環境ができたんだ。


 この配送センターでは社員さんは所長を含めて五人しかいないということだった。

 あとの四人は僕を面接した次長と配車係の人と、小物担当の人と黒崎さんだ。

 小物担当の人と黒崎さんは、フォークリフトとリーチフォークという立って操作するフォークリフトに乗って仕事をしている。

 リーチフォークは他にアルバイトの人が2人いる。

 そのアルバイトの人の一人は李さんといって、名前は中国人なのだが、本人に言わせると「僕はマレーシア人だ。中国人じゃない」と主張し、なんだか世界は複雑なんだなと思うのだった。名前といい体型も長身細めで、言葉も独特の訛りがあって、どうみても中国人なのだが。

 まあ、そんなことはどうでもよくて、ここから本題に入る。

 僕たちのケースピック部門は2,3日働いただけで、その後来なかったりするやつがいたりして、けっこう人員が入り乱れているけど、それは高時給のフォークの人たちも同様で、短期間で辞めていく人がいる。

 なにしろ、ここは早朝の6時から納品業務が始まるらしくて、社員さんは6時出勤の終りじまいらしいから、いったい何時間働くことになるのだろうか。

 マレーシア人の李さんは、日本人の奥さんがいるらしくて月30万持って帰るのを目標にしていると言っていたな。

 僕なんかせいぜい7,8万なんだが。

 それでも充分だし。

 また話が逸れてしまった。

 で、本題だが、きて3ヶ月で辞めたフォークの佐藤さんという40過ぎのおじさんなんだが、この人がストーカーになってるらしいと聞いた。

 最初、ストーカーの話を小耳に挟んだときは、僕はてっきり、あの有賀さんだと思ったけど違った。

 黒崎さんと深刻な表情で話し込んでいるのを見かけたことはあるけど、さっちゃんさんの様子は普段となんら変わらず、そんな深刻な悩みをかかえていたなんて知る由もなかった。

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