はじめてのこうかい
我が子が一番、愛らしい。
それは、通説の極み。
愛を伴う鞭であろうと一切出来ず、頭にさえも浮かばない。
子を甘やかしすぎて、無恥だと思われていても構わない。
そもそも鞭の使用機会が皆無であることも忘れていたくらいだ。
鞭は気分を留まらせる余地を与えないが、甘い飴は万人受け確実だ。
「飴あげるから手を出して」
白い歯を見せ、無言で両手を前に伸ばした我が子の掌は地面に向いていた。
「ハジメ、手の甲かい?ちゃんと受け止められるかな?」
おふざけは馬鹿馬鹿しいほど愛らしい。
「いくよ!」
大きな袋をやさしく振り、同居していた裸の飴玉が反ることを知らない小さな受け皿へと降りた。
だが、飴玉は動くことをやめない。
甘い宝石は溢れ落ちて、我が子の悲しみの宝石も後を追って溢れ落ちる。
おふざけを正さなかったことへの後悔と砂の衣装を纏った飴玉がここにいる。
手の甲の飴玉は数分前に笑顔で滑り台を滑った我が子のようだった。
由々しき事態で我が子と一緒にテンションの滑り台を滑り降りてきた。
「ふつうに手をだせばよかったよ」
我が子には初めての後悔を糧に成長してもらいたい。