夜の雲
「ねえー」
「んー」
「夜の雲ってさー、つまんなくない?」
「急にどーした。」
「逆に、急じゃなかったら、どんな話の流れで聞けばいーの?」
「・・・どんなだろ。」
「わかんないの?」
「わかんない。」
「・・・」
「・・・・・・まぁ、それはいいから続けて。」
「なんの話だっけ?」
「夜の雲がつまらないって話。」
「あー、そうそう、夜の雲はつまらないって話!」
「・・・」
「・・・」
「・・・え?」
「え?」
「それ、話ひろがる系じゃないの?」
「ただ、つまんないねって同意を求める系。」
「同意を求めるにしても、情報少なすぎだよ。せめて、理由くらい言ってくれないと。どこにきょーかんすればいーのかわかんない。」
「それも、そうか。うん、なっとく。」
「それで、なんで、つまんないの?」
「うーん、昼間はさー、きほんどんな天気も、なんかいーなー、っておもうんだよねー。晴れはすがすがしいし、雨は音とか、においがよかったり。」
「くもりは?どんよりしてる。」
「してるけど、日が当たらなくて快適だったり、たまに情緒的だったり、ちょーしょがあるじゃん。それにいろいろ、おもしろい形があるから、昼間の雲はすき。それにくらべて夜のやつはさー。」
「知り合いかよ。」
「夜の雲はなーんもいいとこなくない?雲の形よくわかんないし、くもりのときなんか、星がかくれて、なんにもない空になっちゃうし。」
「つまり、つまんないっていうのは、長所がないっていみか。まー、たしかにそーだね。」
「どーいしてくれた?」
「したかな。・・・・・あ、でも、ひとつだけあった。夜の雲のいいとこ。」
「えっ!なに、なに?おしえて!」
「ほら、月と雲のくみあわせ。コンディションがいいと、なんか神秘的だよね。」
「あー、たしかにー。なんか、魔女でも出てきそうだよねー。」
「わたしは、かぐや姫のおむかえが来そうっておもったけど。」
「そういわれると、そうにもおもえてきた。・・・なんだ。夜の雲つまんなくなかったね。」
「だね。」