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異世界転移した私のお話  作者: うさーりあん
9/9

転移者

転移者には特別な力が備わっている。

この世界に最初に現れた転移者は2000年前に遡る。

もしかしたら2000年以上前にもいたかもしれない。

でも、2000年前のある出来事が転移者を有名にしたのは間違いのないことだろう。


2000年前にあった魔族の大攻勢。

それを止めた勇者、それが記録の残っている最古の転移者だ。

勇者は武器を持たなかったが、戦いになると光り輝く剣を持ちいかなる敵も倒したと言う。


なぜこのような力を持っているか分からないけど、記録に残っているものを見る限り、何かしらの光り輝くモノを具現化するということは間違いないようだ。

あまりの超常的な力すぎて神様にでも貰ったようにしか思えない。


「転移者が力を持っている理由か......」


私は先日の出来事から単独での特訓は無くなった、代わりにケイナさんやルティさん、タキルさん達が私の特訓をしてくれる。

それは今までよりもキツく、同時にさらに上を目指すための特訓だった。

何時もの基礎トレーニングに加えて、武器を使った戦い方、魔法の基礎、応用、そして先日の盾を具現化すること。


基礎トレーニングに関しては前より多くなったくらい、武器を使ったものに関しては、ケイナさんやルティさんが付き合ってくれる。

一番の問題は盾を自由に出し入れすることだった。

これが自由に使えるのなら、下手をしたら自分よりも格上を倒せる可能性がでてくる。

レベルの低い私が死なない為にはこれを使いこなせられるようにならないと話にならない。


しかもこればかりは完全に自分の力でなんとかするしかない。

ケイナさん達にとってみても未知の力だからだ。

私は何度も試行錯誤をして盾を出そうとしてみる。


ーー死にたくない、生きたい!


私はその一心で特訓を続けた。

恐怖を振り払うように特訓に打ち込む、そしてそれから二ヶ月が過ぎる頃には私のレベルは20を越えようとしていた。


子供で20台というのは、他にはティリカちゃんくらい。

ただ、ティリカちゃんは魔王の血を引いている。

それとは違い私は正真正銘の一般人。

転移者と言う特別な存在ではあるものの、基本的にはただの人間と変わらないはずだ。


しかし、明らかに私は他の人間より成長が早い。

これも転移者の特典というものだろうか。

体力もまだこの子供の姿でも、以前とは比べものにならないくらいには、向上した。


不安なことはまだ一杯ある。

子供にしては強いのは間違いない、でもケイナさん達にはまだ足元にも及ばない。

この前出会った奴にも届かないだろう。


それにあの光り輝く盾を好きに出せるようには、まだできていなかった。

と言うよりも、どんなに頑張っても出せなかった。

何が条件なのか分からず、盾に関しては一向に先へと進める気配が無い。


「過去の転移者からヒントはないかなぁ?」


私は状況を打開するような事がないか、村の書物全般を漁ってみる。

転移者で有名なのは断然二千年前の勇者、これは絵本にもなっているくらいに有名だ。

私はまずこの絵本に目を通して見た。


異世界から魔族を倒す為に現れ、光り輝く剣を持ち、最後には仲間達と共に魔王を倒す。

ゲームとかにもありがちなお話。

ただ絵本には勇者は最初から英雄として書かれており、盾を発現するヒントになりそうな事は載ってはいなかった。

私は読み終えた絵本を元の棚に戻そうとすると、同じ作者が描いた別の絵本を見つけた。

特に興味があったわけでもないけど、なんとなく手にとってその本を読んでみた。


最初は興味を持ってみたわけではないけど、私は思わず内容を凝視してしまった。

この絵本は魔王を倒した後の話。

魔王は生きており、勇者が魔王を追撃する。

しかし、魔王は抵抗するわけでもなく勇者に殺されようとするが、ある女の人が魔王を庇う。

勇者はそれを見て魔王を滅ぼすのはやめ、新たに旅に出るという事だ。

そして、魔王はこの女の人と結ばれ幸せに暮らす。


改心する魔王、普段なら鼻で笑うところだけど明らかにこのお話はこの村の歴史そのものだった。

つまり二千年前に人間の世界に攻撃を仕掛けたのは、この村の先祖の魔王、それを止めたのは転移者の勇者。

私がこの村の側に転移したのにはもしかしたら理由があるのかもしれない。


もし本当にこの村の祖先が二千年前に勇者に倒された魔王の祖先であるなら、当時の記録みたいなものがあるのかもしれない。

私は村の書物を必死になって探した。


暫く探していると、古いけれど厳重に保管されている箱を見つけた。

私は恐る恐るその箱を開けると、中には本が保管されていた。

その本のページを一枚めくると、日記のようだった。

日記を書いた人の名前はアイナ、先ほどの絵本の作者と同じ名前だった。


私は盾のことよりもこの村についての核心に迫るモノに激しく興味を惹かれた。

勿論、この中に何かヒントになるものがあればいいのだけれども。


日記の始まりは普通の生活についてからだった。

中身は他愛のない今日は何々があったとか、今夜はご馳走とか、本当に普通の内容。

その中身が急変したのは書き始めた日付の一週間後だ。

内容自体は絵本に書いてあった事をより詳しくしたもの。


徐々に魔王が打ち解けている様が事細かく書き込まれている。

恐らくアイナと言う人は、この時点でこの魔王に心惹かれていたのだろう。

この辺りにくると、魔王の事しか書かれてない。


私は読み進めていると遂に勇者についての記載を見つけた。

これを読んでいる限りだと、勇者が魔王を倒しに来たのは間違い無さそうだけど、ここに来た時点でかなり毒気を抜かれたようだった。

まあ、普通に村の人間として暮らしている魔王を見たら誰だって呆気にとられると思う。

ましてや、人間の世界に侵攻した悪の魔王。

理解が追いつかないのも当然だ。


そして、勇者も暫くここで過ごしていたことも分かった。

勇者はアイナと魔王が結ばれ、子供が生まれ、成長するまで村にいたのはこの日記からは分かる。


疑問に思った事は、記載を信じるならアイナの子供が成長しても勇者は歳をとった感じがしなかったこと。

これだけ見るなら転移者は歳をとらないように見えてもおかしくない。

もしかしたら、その勇者が童顔で、歳をとったように思えないとかそういうのかもしれないけれど。


勇者が転移者なのは間違いない。

しかも、日記をみる限りだと私が元々いた世界と世代的にも大差がないようだ。

つまり、私達の世界とこの世界とは時間の流れが違う可能性が高いということ。

その時間の流れの差が勇者が歳を取っていない理由かもしれない。


私が日記を読み終えると、読み始めた時は太陽はまだ真上にあったのに今はもう落ちようとしている。

私は日記を元の場所に戻し、ケイナさんの家へと足を向けた。


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