理解したことは
窓から光が差し込み、その光で目が覚める。
私がこの世界に転移してから、数日が経った。
体が縮んだこと以外は私自身には変わった事はない。
--なんで、体が子供になっちゃったんだろ?
確かに小さい頃はもっと活発だったような気がする。
転移して体が小さくなったという事は、また子供からやり直せという事なのだろうか。
「あら、おはよう。起きてたのね。」
ケイナさんが部屋に入ってきた。
私が今ここに居られるのは、ケイナさんのお陰である。
ケイナさんはこの村の村長の娘で、彼女の鶴の一声で私を引き取るのを決めてしまった。
「言葉が分からなくて、苦労するかもしれないけど頑張ってね。」
当面の目標はこの世界の言葉を理解する事。
ケイナさんと話しているは通訳の魔法を使ってくれているけれど、実はこの魔法は結構高度な魔法とのことで割と大変らしい。
それに体が子供の状態とは言っても、いつまでもおんぶに抱っこじゃダメだと思う。
「それじゃあ、朝ご飯にするから準備ができたら来てね。」
ケイナさんはそれだけ喋ると部屋から出ていった。
ここ数日間でこの世界についてわかった事は、良くあるゲームみたいな世界であるということ。
魔法と言うものが存在するし、レベルらしきものも存在するという。
ただ、レベルについてはかなり曖昧で、必ずしも強さに直結しているわけではないらしい。
とはいえ、高レベルが大体強いのも事実らしく目安位にはなるということ。
そしてレベルを確認するには、その鑑定をしてくれる専門の人に頼まないといけないようだ。
ちなみに私のレベルは2レベルだった。
レベルは肉体的な強さだけではなく、知識や魔法を扱う力、つまり魔力量によっても変わるとの事だ。
つまり、私が2レベルなのは転移する前からの知識や今現在の魔力からの値という事である。
後は転移者についてわかった事。
伝承の範囲でしかないけれど、転移者は特別な能力を持っている事が多いらしい。
過去に存在した勇者と呼ばれた転移者は、光り輝く剣を創造できたとのこと。
よくある異世界転移の特典みたいなものなのだろう。
私にもそういう能力があるのかなと思うと、少しだけワクワクする。
この世界に転移する前の私は目的も何もなく、ただ変わらない毎日を過ごしていた。
ネットで異世界転生などのお話を見たりして自分もこうだったらいいなあ、と無駄な妄想もしていた。
そして今まさに自分が異世界にいる。
最初は夢ではないかと思ったけれど、いつまでも覚める気配はない。
1日が過ぎていくごとに自分は違う世界に来たんだと実感させられる。
私はベッドから這い出ると、朝ご飯を食べるために扉を開けた。
「お、やっと来たわね、ご飯の準備終わってるわよ」
扉を開けるとケイナさんが椅子に座るところだった。
この部屋には私とケイナさんのみ、他の大人の人は既に畑仕事や狩りに出掛けている。
今、私が居候させてもらっているこの村は、大きな街から離れている事もあって、基本的に村全体で自給自足の生活を送っている。
この近辺で取れないものなどは村の道具屋さんが定期的に街へと買い出しに行くらしい。
ケイナさんの仕事は子供達の教育係、だから仕事のする時間が少し遅い。
私も一緒に色々教えてもらっている。
まだ少ししか一緒にいないが、この人は本当に凄い人だと思う。
まさにパーフェクトウーマン、容姿端麗、性格も文句なしで非の打ち所がない。
雲の上の人すぎて逆に嫉妬も起きない。
「よし、それじゃあ一緒に行こうか。」
「あ、はい......」
ご飯を食べ終えた私はケイナさんに連れられ、家の外に出た。