起きたら色々違う
目が覚めたらそこは知らない風景だった。
いつものように学校に行って、帰って寝たはず……
辺りを見回し、建物の様子を見る限り時代的には中世くらいの時代かなと辺りを思った。
ーーこれが噂の異世界転生とかってやつ?
異世界に転生とかいったら、チートスキルとかでガンガン無双をしているのをよく見かける。
ーーもしかして、私の時代が来ちゃったかな?
そんなことを思ったりすると、少しにやけ顔になってしまう。
取り敢えずここはどこなのか、もし本当に異世界に転生したとして、自分はこの世界の事は何も分からない。
何故ここに寝ていたのか、少しでも情報がほしかった。
ベッドから降りると体に違和感を感じた。
ーーあれ?地面が何時もよりも近いぞ?
疑問に思った私は自分の手を見る。
--小さい......
どうも私の体は縮んでいるようだ、この大きさだと恐らく小学生位のようだ。
せめてちゃんと姿を確認したくて鏡を探すけれども、少なくともこの部屋にはないらしい。
少し悩んでいると、不意に部屋の隅にある扉が開いた。
入って来たのは綺麗なブロンドの女の人。
さすが異世界、レベルが高いぜ。
私が起きているのを見て、女の人はにっこりと笑って話しかけてくる。
「☆¥%÷=」
うん、全く分からない。
少し予想はしていたけれど、そう都合よく日本語に近い言葉だったりはしないよね。
何か色々話しているようだけど、話の通じていない私を見て少し考えているようだ。
少し考えた女の人は先程とは違う言葉を発声すると、指先がキラキラと光り始めた。
--これは魔法とかいうやつ?
現代っ子の私がゲームの中でしか知らないもの。
実際に目の当たりにすると、その神秘さに心を奪われる。
女の人が言葉を喋り終えると、先程まで指先にあった光りが私に吸収されるように内側に入ってきた。
なんとも言えない感覚が私を包んだ後、女の人は再び口を開いた。
「これで言葉が通じるかしら?」
おお、言葉が分かる!
つまり、先程のは翻訳をしてくれるものみたいだ。
私がその言葉に頷くと、女の人はにっこりと微笑んだ。
その笑顔が私には少し眩しい。
「よかった、この魔法を使うのは初めてだから、少し不安だったのよね。」
やはり先程のは翻訳をする魔法で間違いないみたいだ。
こんな事も出来るなんて便利すぎるでしょ。
そうこうしているうちに、再び女の人が口を開く。
「私の名前はケイナ・レディス、あなたの名前は?」
「カエデ......です。」
お互いの名前を紹介しあう、しかしまだ私はこの世界では分からない事だらけだ。
というか、元々陰キャな自分に目の前にいる美人、しかもリア充みたいな人と喋るのはきつい。
「カエデちゃんね、まさかこんな村の近くで転移者に会えるとは思わなかったわ。」
ん、転移者?
何やら私の事がどういう存在か分かっている様子。
「転移者というのはね、この世界以外からごく稀に飛ばされてきてしまう人のことを言うの。」
私が聞く前にケイナさんが話をしてくれる。
私の表情を見て、察してくれたみたいだ。
「とは言っても、転移者なんて言葉はあるけど実際には見た人は殆ど皆無だから、信じていない人も多いけど」
ふむ、これは俗に言う稀によくある現象ということか。
でもケイナさんはどうして私がその転移者だとすぐ分かったのだろうか?
「私があなたが転移者と分かったのは言葉が通じなかったからよ。この近辺には私の住む村しかないし、お城の方の人間なら言葉が通じない事はないからね。まあ、そもそも小さい子供が一人で倒れてたら何か特別な事を疑うよね。」
ごもっともな意見、特に今の私は小学生くらいだし。
--あれ、でも私はこの後どうすればいいんだろう?
この世界に転移したという事は分かった。
でも、この先何をすればいいのか何も分からない。
まるで説明書のないゲームをやるようなものだ。
「心配しなくても、まずは私の村に住めばいいよ。」
この人はなんて空気が読める人なんだろう。
行く宛のない私にとってみれば、ケイナさんの提案は渡りに船だ。
口で喋る前にこちらの言いたいことを読み取ってくれる。
話すのが苦手な私にはとてもありがたい。
「それじゃあ、これからよろしくね。」
差し出された手を私はゆっくりと握りしめた。