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第三話 説明

 細かい装飾が施された壁と素人でもわかる一流の絵画が飾られた長い回廊を見知った道と言わんばかりに歩いていく白ローブの男とそれに続く生徒達、皆一様に不安な顔をして歩いていく。


「あのさー。委員長」

「須藤君?何よ」

「気持ちはわかるけど、頭を冷やして落ち着けよ。可愛い顔が台無しだぜ」

「もう大丈夫よ。今の私は超クール。ええクールよ。クールすぎてクールなくらいクールよ」

「いや大丈夫じゃないじゃん。クール何回言ってんだよ・・・・・・」


 集団の後ろの方でそんな会話を橙也と葵がしているのをよそにバドは話を切り出した。


「私達が今いる世界『ホロウム』は現在、魔王率いる魔人達と彼らの下僕たる魔物達の軍勢により危機に瀕しています。」


 話によると、彼らはいくつかの異世界を観測しており、俺達の世界はアース、この世界はホロウムと呼称されているらしい。そしてこのホロウムは人間の他にも人間に似た複数の種族が存在しており、現在人間は魔人と呼ばれる種族と戦争中で劣勢に立たされているそうだ。


「今我々がいるのは人類連合の中央国の一つ、アウルディア王国の王宮です」


 魔人達の長が魔王の号令の元、人類に宣戦布告してきた魔人達、彼らは高い魔力と優れた魔法技術を持つ種族だ。しかし彼らは大陸の奥地に生息する少数民族。数と規模でいえば人類のほうが圧倒的に有利であるため、物量に物をいわせればすぐに勝負は決まると思われていた。


 ところが、どんな方法を使ったのか知らないが、魔人達は野生動物の一種とされていた魔物達を大量に従え自分達の軍勢として率いてきたのだ。


 魔物を調教し従え操る。そういった魔法は存在するし、専門の調教師という役職もある。しかしこれは規模が違った。一度に数千数万の野生に生息する魔物が一斉に凶暴化し襲い来るのだ。

 数による形勢は逆転。


 至る所に出現して暴れまわる魔物の群れ。それに対処している間に統率された魔人達の軍隊が奇襲を仕掛けてくるため、戦況は混乱を極めた。


 間もなくして人類圏の三分の二は魔物の密集する危険地帯となった。つまり魔人達によってかすめ取られてしまったのだ。


「この状況を打開するために我々は最後の切り札を切ることにしました。それが貴方たちの召喚です」


 魔人達にもひけをとらぬ魔法使いや秘術が記された書物を多く所有する魔法国家であるアウルディア王国には、王宮の地下深くには次元をも乗り越える召喚用の魔方陣が眠っていた。彼らはそれを使い自分達を呼び寄せたのだという。


「じゃあ、その魔方陣を使えば俺達は帰れるんですよね?」


 思わず優斗が質問したら、バドは首を横に振った。


「少なくとも今は無理でしょうな。あの魔法陣は莫大な魔力を使用します。今回の召喚も地脈を介してこの大地から直接魔力を吸い上げたものです。再び使用するには何年かかるか・・・・・・」


 その返答に対し、絶望する声や反発する声が多数出た。

しかしバドは一つの希望を口にする。


「ですが、その問題も魔王を倒すことで解決します」

「どういうことですか?」


 思わず問い返す優斗。


 これは人間の魔法使いにも言えることだが、高い魔力を有する魔物や魔人達は死すると有する魔力を大地に還元される、特に彼らの総代たる魔王の魔力は莫大らしい。つまり奴らを倒せば倒すほど、再びあの召喚陣を起動させるための魔力が大地に貯蔵させられるというのだ。


「つまり俺達にも戦うメリットがあるというわけですね」


 優斗のその言葉にバドは頷いた。


「勝手に召喚しておいて・・・・・・虫のいい話ね」


 黙って聞いていた橙也の隣の葵が小さな声で吐き捨てるように言った。


「今度は僕から質問していいですか?」


 突然喋り出した担任の岡田先生に対し、バドは一瞬驚くもすぐに気を取り直して質問を促す。


「なんでこの子達なんですか?」

「と、言いますと?」

「こういってはなんだが、この子達はただの学生だ。僕達の世界の基準で言うなら、まだ成人にも達していない。授業で運動もこなしてはいるが、僕の知る限り特殊な武道を習っている生徒はいないはずだ。少なくとも魔王なんてと途方もない存在と戦えるとは思えません」


 岡田先生の問いに対しバドは質問を返した


「『この子達』とはまるで自分は選ばれていないような言い方ですな?」

「僕はそんな大層な人間じゃありませんよ。ただのくたびれた独身教師です。それに召喚とやらをされてから貴方は僕の事は眼中にないように見えましたから」


 苦笑しながら語る岡田先生に対しバドは興味深そうに彼を見つめた。


「謙遜しなくともよろしいです。貴方達アースの方々は我々にはない素質を有しています。まあそれでも失礼ながら、この子達はその中でも飛びぬけていますが」

「素質?」

「適正と言ってもいいでしょうね」


 先程とは違うどこか熱を帯びた面持ちで、バドは生徒達に向き直った。


「そうです。子供達には本人にも知らない無限の可能性が眠っています。それを引き出せば必ずやあの魔王にも対抗できることでしょう!」


 そんなバドの言葉に生徒達がざわつく。


「僕達にそんな力が……!」

「何で右手押さえて慄いてんだよ」

「つーか嘘くさくね?」

「実感わかないよ……」

「おい、誰か俺の頬つねってくれ。やっぱ夢だコレ」

「ひゃっはあ!チートの時間ですぞ!」

「……やっぱコイツの頬つねれ。いや殴れ」


 そうこうしているうちにバドは巨大な門の前で立ち止まった。


「どうやら話はここで終わりのようだ。話の続きは後日にでも皆様これから陛下との謁見です。準備はよろしいですか?」

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