君がいない
朝、いつもと同じように学校に行くが、そこに君はいなかった。いつもなら、僕が来るまでにいて元気よく
「おはよう。」
と言ってくれていた君が、今そこにはいない。そう、君はこの日を境に僕の目の前から消えた。
僕は、いつものように起きて学校に行く準備をしていたが、この日は珍しく学校に行きたくなかった。なぜかはわからなかったが、何か嫌な予感がしていた。僕は、それでも休んではいけないと思い、いつもと同じ時間に学校に向かった。
学校に近づくにつれ、嫌な感じがましていくが、僕は気にせず学校の校門を入り教室に向かった。教室の前まで行き、ドアを開けようとした。
そのときだ。僕の中にあった嫌な感じが、破裂したかのように無くなった。僕は不思議に思いながらドアを開けた。
そこは、いつものように騒がしく、僕を見てみんなは
「おはよう」と声をかけてくれたが、いつもいるはずの君が今日はいなかった。僕は、不思議に思ったが、たまにはこんな事もあるのだろうと思い、あまり気にしなかった。
でも、もうすぐ学校が始まるというのに君は来ない。さすがの僕も心配になってきた。そして、君が来るよりも先に先生が来て、みんなが席に着くが、やっぱり君は来ないままだ。
今日は、休みなのかと僕は思った。だが、君は僕と同じで一度も学校を休んだ事がなかった。
そして、君が来ないまま授業は始まった。一時間・二時間・三時間と過ぎても君は来なかった。
昼休みになり、弁当箱を取り出す人、食堂に食べに行く人と分かれいた。
いつもなら、君と僕は庭の方へ出て、一緒に御飯を仲良く食べているはずが、今は僕、一人で御飯を食べている。
今日は、もう学校に来ないのだろうか?僕は先生に聞くが、先生は
「知らない」と言う。だが、僕には先生が嘘をついているように思えた。先生は、何かを隠しているに違いないと僕は考えたが、根拠がなかった。
でも、君が連絡もせずに休むような人間には思えなかった。だから、僕は何度も何度も、先生に君の来ない理由を聞いたが、先生の答えは常に一緒で
「知らない」の一言だった。
僕は、他の友達にも聞くが、君が来ない理由はわからなかった。昼休みが終わり、授業が始まっても、君は来ないままだ。
今日、朝の事を僕は思いだした。あの嫌な感じは、この事だったのだろうかと・・・。 僕は急に不安に包まれた。
君の身に何かが起きたのではないか、何かの事件に巻き込まれたのではないかと考えた。
それなら、先生が知らない理由も納得出来るのだが・・・。
でも、よく考えたら。その場合は、家族の人が学校に連絡してくるはずだ。
僕は、君が来ない理由を学校が終わるまで、ずっと考えていたが、結局わからなかった。
君の家に、直接行けたらよかったのだけど、部活が忙しいので今日は諦めて、明日は学校に来ていればいいなと思い僕は眠った。
次の日、いつものように準備をして学校に向かった。
今日は、君が来ているかを考えながら、学校に向かい、校門を入り教室のドアを開けた。
僕は、ドアを開けてから教室を見渡したが、君は今日もいなかった。
そして、君よりも先に先生が来た。僕は、先生の顔を見て驚いた。
いつもとは違う顔つきで、少し先生の表情は暗かった。
先生は、教卓の前に着くとクラスを見渡し、話し始めた。
僕は先生の話しを聞いてびっくりした!まさか君が・・・。
僕は、先生が話を終わり教室から出て行った後を追い、もう一度君の事を聞いたが、答えは同じだった。「あの子は昨日、急に引っ越したんだよ。」 先生は、そう言い僕の前を歩いて行った。僕は、頭の中が真っ白になり、今日の授業には集中できず、学校が終わるなり走って君の家に向かった。
こんな時に、部活などしていられないからだ。例え部活に出ても、集中してできないから、怪我をするかも知れないと思い休んだ。 やっとの思いで、君の家に着いたが、すでに人の気配はしなかった。
確かに君は、引っ越しをしたんだと思ったが、僕は君とよく行った二人の秘密の場所に向かった。
君とよく、夜に出かけたあの場所へ、ゆっくりとした空間で二人、星を眺めながら話をした二人だけの場所へ。
その場所に、行ってもやっぱり君はいなかった。
だが、そこにあるベンチの上に、手紙のようなものが置いてあった。僕は、その紙を広げて読んでみた。
(あなたが、この手紙を読む頃には、私はこの町にはいないと思います。
本当は、あなたに言ってから行こうと思ったのだけど、言うと辛くなるので、言わずに行くことにします。
きっと学校では、引っ越しをしたとしか言っていないと思うのだけど、本当は違うの。
私の体が弱いのは知っているよね。
私、自分の病気を治すために、アメリカに行くことにしたの。
だけど、必ず成功するとは限らないから、あなたには内緒で行こうと思ったの。
確率は五分五分だから、あなたは必ず反対すると思うの。
もし、あなたに止められたら私・・・。
絶対に行けなくなってしまうから、私は病気を治したい。だから、ごめんなさい。勝手かもしれないけど、アメリカに行って来ます。もし、よければなんだけど、私が帰って来るまで待っててくれるかな?もし、成功したら二ヶ月ぐらいで帰れると思うんだ。帰って来られたら、必ずここに来るから。それじゃあね。また、会えたらいいな。)
手紙はここで終わっていた。僕は、君の事を考えていなかった。君がいない間、寂しくなるけど僕は君が帰って来るまでずっとここで待つよ。
毎日ここに来て、君の無事を祈るよ。
彼と彼女がその後、会えたかどうかはわからないが、こんなに思いあっている二人を離すことなど出来るのだろうか?私は、決して出来ないと思う。
もし、二人が会うことが出来なければ、私はこの世に神様などがいるはずがないと、思ってしまうだろう。もし、神様がいるとすれば、この二人が必ず会えるはずだ。
私が神様なら、必ずそうするだろう。