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私達の青春  作者: さかき
3/3

第三話

 私は私という仮面を被る。別に殊更に何かを演じているわけじゃない。でも、人と話す時、話している私と、 その声を冷静に聞いている私がいる。どんなに盛り上がっている時だって変わることはない。ただ平然と観察する自分がいる。

 どんな時だって...










 「う〜ん」


 ようやく今日の授業日程が終了した。

毎日毎日のことだが、この時間というのはかなりうれしかったりする。


「おつかれ、なつ。」


忘れている人が大半とは思うがなつとは私のことだ。


「おつかれ。疲れたね〜。これは今日も駅前のクレープ屋にいくしかありませんね。社長。へっへっへ〜」


くいっくいっとこの前CMでサラリーマンがやっていた仕草をまねしてみた。意外と似てる。



「だれよ?あんた。不気味だって、その笑いとしゃべり」


しかし似てると思ったのは私だけのようです。


「冗談だって。クレープ屋には行くけど...」


「いくんかい!ねぇ、そこに今週行くの何回目?」


 そのあとにまさかとは思うけど、と言葉を続けた。


「えっ?ほぼ毎日いってるけど....」


学生である私にはたくさんの金はないので匂いだけの日も多々あるけど。


「...まぁそれはいいとして...」


(あっ、引かれた!さすがに毎日はないのか。じゃあ後2店舗は毎日放課後に寄る洋菓子屋があるけど黙ってたほうがいいな。)



「5時間目におもしろいことがあったよね〜。私はそれだけで今日は満足。」



 そう言ってさっきの呆れ顔をなかったかのように女生徒はニヤリと笑うと視線をある方に合わせた。


「あはは。」


私も笑い、同時に視線を移す。


 そこにあったのは一つの机だった。他にも同じ形をした者はたくさんあるが、私達が目指していたものは一目瞭然だ。すごく乱雑なのだ。ひきだしにはノートやらプリントやらがはみ出すほど詰め込まれているし、机上には今日はなかったはずの授業の教科書が開かれてたりする。さすがに男子でもここまでは汚くできまい。

 この惨状を作り上げた張本人にどうにかしないのかと聞いたところ...


「何いってんのよ。これはね計算されつくされた構図なのよ!この美しきアシンメトリーがあなたにはわからないようね!?」


.....だ、そうです。他にも、プラトンのなんてら〜やら、アルキメデスのうんたら理論がどう〜、とか言ってたが、生憎、ローマの哲学者については興味がなかったので爽やかに受け流していた。多分10割がでたらめなことなので受け流したことを気に病む必要はない。 まぁ、そんな感じのかわいそうな机には主人の姿はなかった。(ちなみに私は無難。放課後になっても机の中に入っているのはやたら分厚い歴史の資料集と辞書くらいだ。)



「くっくっくっ。今頃職員室でこってりしぼられてんだろうね」


 今度は女生徒のほうが不気味な笑い方をした。


「だね。」と私も続け、そのあと言葉を付け足した。

「でもさ、秋菜にしてはめずらしいよね。あんなにわかりやすく寝てるなんて。」

「そうね〜、どうせ夜中にやってたなつかしのアニメでも見てたんでしょ。」


 秋菜は顔に似合わずアニメやらをよくみる。っていうか自分がおもしろいと思うものにはなんでも手をだすのだ。その他人を気にせず自分のしたいようにやる真っ直ぐな秋菜の姿はいつも私の憧れだったりする。

「あ〜なるほどね。あの娘だったら受験前日にもやってもおかしくない。」


受験場で参考書を枕変わりにしている秋菜の姿が容易に想像できた。


「うん。それでもしっかり合格するんでしょうけどねあやつは。まったく神様ってやつの才能振り分けのランダムっぷりには目に余るわ。」


 「思う、思う。絶対新人の神様なんかにやらせて自分だけ楽してんのよ」




 しばらくの間私達はしゃべり笑っていたが女生徒が何か思い出したかのように時計をみた。 


「...しまった。少ししゃべり過ぎた。部活に遅れる。」



「大丈夫?学校終わってから30分くらい経つけど。」


 大急ぎで自分の荷物を整理しながら律儀にも私の問に答えた。


「今日は町の体育館借りての練習だからチャリでぶっ飛ばせばなんとか間に合うはず..」


 それだけいうと彼女は荷物を乱雑にかばんに押し込むとダッシュで教室を後にした。



(さすが運動部。行動の速さがちがう。)


私が一人で感心してると、突然彼女が戻ってきた。


「!どうしたの?何か忘れもの?」



私は彼女の私物らしいものがないか確認した。


「言い忘れてた。」


彼女は私の声が聞こえなかったらしく、そのまま息を切らしながらもよく響く声でしゃべりだした。


「バイバイなつ。また明日ね。...それじゃ」



「えっ?


 私が同じ言葉を口にだすころには彼女の姿はなかった。


「えっと、もしかしてこれだけのために戻ってきたのかな?」


(....いい娘だなぁ、わざわざ挨拶するためだけに戻ってくるなんて)


 私は彼女に感動した。

それは私にはできそうにないことだったから。

 そして私は上機嫌のまま教室を後にした。

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